ウェルシュ菌食中毒

ウェルシュ菌食中毒、ご注意 熱に強く、カレーや煮物で発生

食中毒を引き起こす「ウェルシュ菌」をご存じですか? 
この菌には熱に強いものがあり、作りおきしたカレーや煮物などを食べて発症するケースが多くみられます。
春にも食中毒が起きており、注意が必要です。

3月8日夕方から翌朝にかけて、東京の私立幼稚園の園児67人と教職員9人の計76人が次々と、下痢や腹痛、嘔吐の症状を訴えた。
 
複数の患者の便からウェルシュ菌が検出され、保健所は、8日昼の「年長組を送る会」で食べたカレーが原因と断定。
カレーは、7日午前11時ごろから、教職員と園児が職員室で、二つの大きな鍋を使って作り、そのままの状態で、一晩常温で保存。
食べる直前に再加熱したという。
 
ウェルシュ菌は人や動物の腸管内や土壌、下水などに存在。肉や魚、野菜などの食材にも付着し、体内に大量に取り込まれると、食中毒を引き起こす場合がある。
 
日本食品衛生協会の栗田滋通・技術参与によると、ウェルシュ菌による食中毒が起きやすいのは「カレーやシチューなどとろみのある料理を大鍋で作った時」だという。
筑前煮や煮込みハンバーグなどでも起こる。
 
ウェルシュ菌の中には「芽胞」という殻のような状態になるものがある。
熱に強い芽胞は、100度で60分間熱しても死滅しないとされる。
そのため、調理の際に煮沸してもウェルシュ菌が残り、その後増殖して食中毒を引き起こす可能性がある。
 
常温で保存し、温度が55度程度まで下がってくると芽胞から新しい芽が出て菌が増殖し始める。
特に43~45度で急速に増える。
料理にとろみがついていたり、量が多かったりすると、温度はゆっくり下がるため、菌が増殖する時間も長くなる。
 
飲食店やイベントで大量に調理した時に食中毒が発生しやすく、2014年には京都市の業者が製造したキーマカレーの弁当を食べ、900人が食中毒症状を訴えた。
 
ウェルシュ菌による食中毒の症状は腹痛や下痢など。ほとんどの場合、発症後1~2日で回復するという。ただ、病気などで免疫力が低下していると、まれに重症化することもある。

常温放置せず、冷蔵を/温め直し、よく混ぜて
厚生労働省へ報告があった2016年のウェルシュ菌による食中毒は31件。
患者数は計1411人にのぼる。31件の事故を発生月別でみると、4月と5月に計7件、10月と11月に計9件が起きている。
細菌性の食中毒は一般的に夏に多いが、ウェルシュ菌は春や秋の発生が目立つ。
 
では、どうすれば防げるのか。
 
一番の予防法は、調理後すぐに食べること。
家庭でも注意が必要だ。
カレーなどは一晩おくとおいしいとも言われるが、保存の仕方によってはウェルシュ菌が繁殖してしまう。
 
ポイントは、一度に作りすぎないこと。
作りおきする場合は、常温で長時間放置せず、容器に小分けにし、冷蔵庫や冷凍庫で10度以下に冷やして保存する。
料理が早く冷めるよう、小分けする容器は底の浅いものがいい。
ウェルシュ菌は酸素が苦手な嫌気性菌のため、容器に移し替える際に、料理を混ぜて空気に触れさせるとより効果的だという。
 
作りおきしたものを食べる際には、ムラなく加熱できるよう、鍋に移し替えた上でよくかき混ぜながら全体にしっかり火を通す。
ウェルシュ菌には熱に強い芽胞をつくるものもあるが、75度で1分ほど加熱すれば死滅するものもある。
 
菌の数を少なくすることで食中毒の防止につながる。

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参考・引用
朝日新聞・朝刊 2017.4.17