食中毒 ~黄色ブドウ球菌~

食中毒を防ぐには ~黄色ブドウ球菌の場合~

熊本地震のときは福岡でもけっこう揺れました。
熊本県の避難所で、おにぎりによる集団食中毒が起きました。
原因は黄色ブドウ球菌でした。

参考
避難所の食中毒、おにぎりが原因 熊本、34人症状訴え
http://www.asahi.com/articles/ASJ593WBNJ59TIPE00V.html
熊本市中央区の避難所で避難者らが嘔吐や下痢の症状を相次いで訴えていた問題で、市保健所は、避難所で配られたおかかおにぎりによる集団食中毒と断定したと発表した。
有症者の便や残ったおにぎりから、食中毒を引き起こす黄色ブドウ球菌が検出されたという。
保健所によると、おにぎりは、区内の居酒屋の男性従業員が6日朝、店内で握り、ボランティアで避難所に持ってきた。
発泡スチロールの容器内で温かいまま保存していたため、何らかの原因で混入した黄色ブドウ球菌が増殖したと保健所はみている。
避難者ら43人が食べ、うち6~84歳の男女計34人が症状を訴え、21人が一時入院した。全員快方に向かっているという。

一般的に、黄色ブドウ球菌による食中毒の症状は嘔吐や下痢で、発熱はまれです。
予後は良好で、死ぬことはほとんどありません。
原因食品は、おにぎりやお弁当、乳製品、和洋生菓子などが多いです。
黄色ブドウ球菌は皮膚の常在菌なので、おにぎりのような手で触れる食品が原因になりやすいのです。
 
原因となる食べ物を食べてから症状が出るまでの時間(潜伏期間)が1~6時間と短いのも特徴です。
たとえば、他の代表的な食中毒の原因となる腸管出血性大腸菌O157など)の潜伏期間は3~8日間です。

潜伏期間が短いのは、「毒素型」の食中毒だからです。細菌が原因の食中毒は大きく「感染型」と「毒素型」に分類できます。
感染型は、生きた細菌が体の中で増殖して病気を引き起こします。
菌の量や種類にもよりますが、感染型の食中毒では、細菌が増殖する時間が必要になるため、食べてから症状が出るまでの時間が長めになります。
一方、毒素型は、食品中で増殖した細菌が分泌した'毒素'を食べることで病気になります。
食べたときにはすでに食品中に毒素が含まれているため、潜伏期間は短いです。
 
食中毒のタイプを知っていれば、予防にも役立ちます。

通常の細菌性の食中毒は、食べる前に十分に加熱すれば予防できます。
感染型であれば加熱によって細菌は死にますし、毒素型でも熱に弱い毒素であれば加熱によって分解されます。
しかし、黄色ブドウ球菌の作る毒素は熱に強く、食べる前の加熱では防げません。

大切なのは、調理の前には手を洗うこと。
そして、食品を直接触らないようにしましょう。
おにぎりであれば、ビニール手袋をはめるかラップを使って、ごはんに手を触れないように握ります。

それでも完全に無菌にはできません。
時間が経つと食品中で細菌が増えますので、調理後はなるべく早く食べましょう。
早めに食べることができないときは、細菌が増殖しにくいように冷やしましょう。
熊本の事例では、「発泡スチロールの容器内で温かいまま保存していたため」、黄色ブドウ球菌が増えたとみられています。
 
避難所ではいろいろな制約がありますが、それでもできる限りの安全対策をとって、食中毒を予防しましょう。
避難所に限らず普段の生活でも、食中毒の予防のための知識を学んでおくことをお勧めします。