予防と検診のススメ

予防と検診のススメ 乳がん、早期治療の勇気を 発見しにくい子宮頸がんも

12人に1人が発症
乳がんは女性に最も多いがんで、日本では年間約6万8000人が発症している。
患者は増加傾向にあり、生涯のうちで乳がんになる女性は半世紀前は50人に1人だったが、現在は12人に1人といわれている。
30代後半から急激に発症数が増え、40代後半~50代前半にピークとなる。
女性が職場や家庭で最も活躍する年代に多いがんだ。

・ただ、乳がんは発症しても早期に見つけて適切な治療を受ければ命に直接の影響が出にくい。
日本人女性で死亡数が最も多いのは大腸がんで、発症数が最多の乳がんは5位だ。
定期的な検診で乳がんはかなり見つかる。

・治療は2つに大別できる。
乳房にできたがんを取り除く局所治療と、転移を予防する全身治療だ。
局所治療は手術と放射線照射で、全身治療は抗がん剤などを投与する。
手術には乳房をすべて切除する方法と部分的に温存する方法があり、がんの広がりなどを見極めて決める。全切除の場合は、乳房を再建する手術を受ける患者も増えている。

・薬を選ぶ際に重要なのが、乳がんのタイプ。
組織を調べる検査で判定できる。
がんを増殖させるホルモン受容体やがん細胞表面にあるHER2(ハーツー)たんぱく質の有無、がん細胞の形や増殖能力の組み合わせによって、効果が期待できる薬が決まる。

薬物療法は通院でできる場合も多い。
がんの状態を知り、それぞれの治療の利点と課題を納得できるまで医師に聞き、理解して選ぶことが大事だ。

自覚症状ない初期
・女性特有の子宮がんも、働く世代に多い。
このうち子宮の入り口付近にできる子宮頸がんは、年間1万人弱が新たに診断されている。
20~30代での発症が増えており「就職・就労、結婚、妊娠・出産、育児などに影響を与えやすい。

・子宮頸がんは、性交渉によって感染するヒトパピローマウイルスが発症に関与する。
性交渉の開始年齢が早まっているのが増加の背景にある。
感染者のうちでがんになるのは1%以下。
大多数は自然にウイルスが消える。
初期段階で見つけて手術できれば完治する確率も高まる。
しかし、初期は自覚症状がない。
重要なのが検診だ。
子宮の入り口をブラシなどでこすって採取した細胞を顕微鏡で見る。
痛みはほとんどない。
定期的に検診を受けていれば、進行前に見つかる可能性が高い。
専門家は20代前半から受けるよう勧めている。

・治療は手術と放射線照射が基本だ。
手術はがんの広がり具合により、子宮の一部を円すい状に切り取る場合や子宮を全摘する場合などがある。
切除する範囲は再発リスクなどを考慮して決めるが、大きく切れ排尿障害など後遺症も出やすくなる。
進行すると放射線抗がん剤を併用する例が多い。

・最近は、子宮頸がんの中でも検診で見つかりにくい腺がんというタイプが増えている。
腺がんを含めて予防に有効だといわれるのが、子宮頸がんワクチンだ。
13年4月から小学校6年生~高校1年生の女子を対象に無料の定期接種になった。
計3回受ける。

・性交渉の経験があるすべての女性に発症の可能性があるので、ワクチンによる予防は重要だ。
しかし、接種時の痛みがきっかけとなってまれに全身に強い痛みなどが生じる問題が指摘され、厚生労働省はワクチン接種の積極推奨を中止した。
現在も接種できるが月2000人程度にとどまる。

・このほか、閉経前後の世代では、子宮内膜などにできる子宮体がんにも注意したい。
初期から不正出血があるのが特徴で、更年期によるものだと早合点せず、一度、婦人科を受診するのがよいだろう。


出典 日経新聞・朝刊 2014.7.18( 一部改変 )
版権 日経新聞


図 乳がんの主な治療の流れ
図 子宮頚がんと体がんの主な発症部位



関連サイト
【特別講座・第2回】 「子宮頸がんの診断・治療」と「患者さんへの支援」
http://apital.asahi.com/school/cervical/2012121800009.html

【第2回】 子宮頸がん:ホントのこと
http://apital.asahi.com/school/cancer/2012112600012.html