家族性乳がん

3割に遺伝子変異 「家族に乳がん

日本乳癌学会の研究班が、母親ら家族が乳がんになった日本人女性260人の遺伝子を調べたところ、3割の人は乳がん卵巣がんのリスクを高める変異があることがわかった。
日本人の遺伝性乳がん卵巣がんのリスク予測に役立つ成果で、3日、米臨床腫瘍学会で発表する。

■変異は遺伝子のDNA配列の間違いのこと。
BRCA1、BRCA2と呼ばれる特定の遺伝子に変異があると、乳がん卵巣がんが発症しやすくなることがわかっている。
女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが乳房の予防切除を決断するきっかけになったのも、この変異だ。

■昭和大病院(東京)など全国8病院で遺伝子検査を受けた260人のうち、46人はBRCA1に、35人はBRCA2に変異があった。
両方に変異のある人も1人いて、計80人(31%)に変異が見つかった。欧米とほぼ同じ比率だった。

■80人のうち77人が乳がん卵巣がんを発症。
通常より10歳以上若い45歳未満で発症する人が半数程度もいた。
特にBRCA1に変異がある人は、ホルモン剤抗がん剤が効きにくいタイプの乳がんになる確率が4倍に達することもわかった。


出典 朝日新聞・DIGITAL 2013.6.3
版権 朝日新聞社


<私的コメント>
合併頻度の高い卵巣がんこそ問題のような気もします。
卵巣がんは診断が困難で、発見時にはすでに進行がんのことが多いからです。
予防的な卵巣摘出は行われないのでしょうか。
実はそういった考えもあるようです。
但し、比較的若い女性が対象のため、問題も多いようです。


家族性乳がん(遺伝性乳がん卵巣がん
■生涯乳がん発症率が約87%程度、卵巣がん発症率が50%程度
■予防的乳房切除術をすると、生涯の乳がん発症が5%以下のリスクに減る
乳がんは乳腺組織から発生する。乳腺を完全にとれば、理論的には発生しないが、乳腺組織が手術で完全にとりきれない場合もあるので、乳がんが100%予防できるものではなく、リスクは0%にはならない)
■ある時期がきたら、リスク低減卵管卵巣切除術を行うことが推奨されている。
(予防的乳房切除術はそれより弱い推奨レベル)
卵管がんや卵巣がんは早期発見できる手段がなく、乳がんは、早期発見できる手段があることなどがその理由。
卵巣をとることで、ホルモン環境の変化により、乳がんの予防にも効果が期待できる。
■このリスク低減卵管卵巣摘出術は、まだ、一部の医療機関ではじまったばかりで(当然のことながら)保険診療ではなく、高額(100万円程度)。



日本乳癌学会「患者さんのための乳がん診療ガイドライン(2012年版)」
まだ乳がんを発症していないが遺伝的にそのリスクが高いと考えられる方では、「20歳頃から月に1回の自己検診を心がけるとともに、25歳から年に1回、乳腺専門医によるマンモグラフィおよびMRIを用いた乳がん検 診を推奨する」
また、すでに乳がんを発症していても、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)では反対側あるいは温存した乳房に新たながんが発症するリスクが一般の方より高いので、そのリスクを前提とした検診を受けることが大切。
「35歳頃から婦人科医による卵巣がんの検診を行うこと」
(BRCA1/2遺伝子の病的変異を持つ方は卵巣がんリスクについても注意が必要)

NCCN(National Comprehensive Cancer Network)の臨床ガイドライン
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の医学的管理
「18歳から月1回の自己検診、25歳より半年か ら年1回の医師による診察と年1回のマンモグラフィおよびMRIを用いた検診」を推奨
卵巣がんについては、リスク軽減卵巣卵管切除を選択しなかった場合に、「30歳から半年に1回のCA-125測定と経腟超音波検査を検討する」

 
HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)
http://hboc.jp/hboc/index.html



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                        (雨の横浜・「日本大通り」)


<2013.9.11追加>
京大、乳がん転移しやすさ予測 ノーベル賞・田中氏の技術活用
出典 日経新聞 Web刊 2013.8.21
版権 日経新聞
京都大学の戸井雅和教授らは21日、乳がんが転移しやすいかどうかを予測できる手法を開発したと発表した。
ノーベル化学賞を受賞した島津製作所田中耕一シニアフェローの技術を使い、乳がんの細胞が含む脂質から判定する。

■研究グループは約10人の乳がん患者から乳がん細胞を採取し、田中シニアフェローらが開発した「質量顕微鏡」という分析器で解析した。
その結果、2種類の脂質のバランスが転移のしやすさを決めている傾向が分かった。
2種類の脂質の量は5~6倍も差があり、一方の脂質が多い患者のほとんどは、がんがリンパ節に転移していた。
このため、これらの脂質の割合から転移のリスクを予測できると結論づけた。