乳房予防切除、国内でも

乳房予防切除、国内でも 遺伝性乳がん、都内2病院準備

健康な人が乳がんを防ぐために乳房を事前に切除する手術が国内でも始まる。
特定の遺伝子に変異があり、遺伝性の乳がんのリスクが高い人が対象。
がん研有明病院のチームは6月にも、病院の倫理委員会に臨床研究として申請する。
聖路加国際病院も実施態勢を整えた。

■国内では毎年約6万人が乳がんになり、5~10%が「BRCA1、2」などの遺伝子に変異がある遺伝性の乳がん
変異がある人がすべて、がんになるわけではないが、がんの不安や恐怖に悩む女性の選択肢が増えることになる。

■がん研有明病院の臨床研究では、遺伝子に変異がある希望者に、がん発生前に乳房切除の手術をする。片方に乳がんが見つかった人が反対側を予防切除するのも対象。
本人が遺伝カウンセリングを受け、希望すれば遺伝子検査を受ける。
変異が見つかれば、切除の利益と不利益を十分に理解した上で切除するか判断することを条件とする。
手術では、がんが発生する乳房内の乳腺部分を取り除く。

■切除のメリットは、乳がんの発生リスクを大きく減らせる点だ。
いつがんができるかわからないという不安も和らぐと期待される。

■一方、遺伝子に変異があっても100%がんになるわけではないため、がんにならない人が切除をする可能性もある。
欧米の調査では、変異のある人が70歳までに乳がんになるリスクは約45~65%とされている。
また、乳房の皮膚の感覚が鈍ることもある。

■費用は希望者の自己負担で、切除費は約100万円。
患者が希望すれば、術後に乳房再建もできる。
一般的には乳房内に風船状の器具を入れて少しずつ広げ、数カ月後、広がった部位にシリコーンなどを注入する。
術式により切除費に加えて100万~150万円程度かかる。
遺伝子検査の費用も自己負担で約20万~25万円。

聖路加国際病院でもすでに倫理委員会が予防目的の乳房切除を承認しており、片方に乳がんができた患者に、健康な反対側の乳房を切除した例はある。

■乳房の予防的切除は、がんの発生率を下げるが、死亡率まで下げるかどうかはまだ十分なデータがない。
がんができても早期発見、治療で助かる人もいるからだ。
遺伝子の変異が見つかっても、乳がんは早期発見がしやすいため、切除せずに、こまめに検診を受けるという選択肢もある。
片方の乳房にがんができた人の場合でも、ホルモン剤を服用して予防する方法もある。

■遺伝子に変異がある人がみな予防的切除が必要なわけでは決してない。
ただ、検診のたびに『がんが見つかるのでは』と不安にさいなまれる人も少なからずおり、そんな人が切除という選択もできるようになる。

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遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)〉 
特定の遺伝子の変異が原因で、乳がん卵巣がんのリスクが上がる病気。
8割は遺伝子BRCA1、2の変異が原因。
この遺伝子変異があると、乳がんだけでなく、卵巣がんになる可能性もある。
70歳までに卵巣がんになるリスクは約10~40%。
卵巣の予防切除はすでに数カ所の病院で行われていた。
家族に次のような人がいる場合、HBOCの可能性が高い。
(1)乳がん経験者が3人以上いる
(2)40歳未満で乳がんになった人がいる
(3)卵巣がんの人がいる
(4)男性の乳がん経験者がいる。

出典 朝日新聞・デジタル 2013.5.20(一部改変)
版権 朝日新聞社


<私的コメント>
乳房予防切除を行っても卵巣がんの発生が減るわけではありません。
どちらが怖いかというと、卵巣がんです。