花粉の季節はかゆくなる前に点眼薬 ①
スギ花粉の飛散が始まる季節になると、目のかゆみや充血、ゴロゴロするといった症状を感じている人もいるだろう。
花粉症は「飛散開始前から抗アレルギー点眼薬を使う」という早期治療が推奨されている。
だが、タイミングを逃した人もいるはずだ。
さらに、春に多く飛来する黄砂やPM2.5が刺激に拍車をかけることもある。目のつらい症状を軽減する対策とは・・・。
白っぽい目やにが出始めたらすぐ受診
花粉を体の異物と認識し、免疫反応が過剰に働いて発症するのが、アレルギー性結膜炎だ。
目は常に外部からの抗原(アレルギーの原因物質)に直接さらされている。目やに、かゆみ、涙が出る、充血、ゴロゴロする(異物感)などのうち、2つ以上の症状が現れたら、アレルギー性結膜炎である可能性が高い。
近年増えているドライアイやコンタクトレンズ装用も、アレルギー症状を悪化させる要因となる。
ムチンという結膜の粘液成分や角膜の一部が炎症によってはがれることにより、白っぽい目やにが出るのがアレルギー性結膜炎では特徴的だ。
アレルギー性結膜炎が起こる仕組みは、まぶたの内側から白目部分を覆う「結膜」に侵入した抗原に、マスト細胞が反応してヒスタミンなどのかゆみ成分を放出することによる。
通常、花粉飛散開始前の2週間前から、ヒスタミンの放出を抑える抗アレルギー点眼薬を使うことによって症状を軽くできるため、毎年症状のある人は、1月末ごろからの治療が薦められている。
しかし、今年初めて発症した、あるいは眼科を受診する暇がないうちに本格的な飛散時期に突入してしまったという人も多いはずだ。
実は、花粉症が飛び始める時期に合わせて注意しなければならない、花粉症増悪原因があることがわかってきた。
それは黄砂とPM2.5だ。
黄砂とPM2.5も症状の悪化要因
目のアレルギーを引き起こすのは花粉に限らず、ハウスダストや動物の毛などの「屋内の抗原」、そして「第3の抗原」として問題視されている黄砂やPM2.5などの「大気中の環境因子」がある。
毎年、スギ花粉とも重なる3~5月の間に大気中で最も飛散が多くなる黄砂やPM2.5がアレルギー症状を悪化させることがわかってきた。
PM2.5の濃度が高まるとアレルギー性結膜炎患者が多くなる。
PM2.5に含まれる硫酸塩や硝酸塩などの物質が目の結膜や角膜の上皮にはりつき、直接炎症を起こす。
PM2.5は風が強く湿度が低い日に増える傾向がある。
偏西風が強くなると黄砂もPM2.5も増える。
さらに黄砂には、PM2.5だけでなく、真菌(カビ)やグラム陽性菌といった菌類、植物性のたんぱく質などもくっついている。
これら黄砂に含まれる物質が、総合的にアレルギー反応を強くすることもヒト対象の研究で確認されている。
動物実験では、スギ単独よりも、スギと黄砂を目に与えた群で目をこする様子が多くなり、一部のマウスでは眼球破裂をきたすほどアレルギー症状が強くなることが確認されている。
雨上がり後や、交通量が多い地域に暮らす人もしっかり対策を講じたい。
花粉が大気汚染物質を含む雨と合わさることでも、化学反応が起きて花粉が破裂し、抗原が飛び散るからだ。
また、地上に舞い降りた花粉が自動車に踏まれたり、ガソリン車に含まれる揮発性ガスと合わさったりすることでも花粉は破裂する。
郊外よりも都市部の花粉症患者が多いのは、大気の汚れが花粉の破裂を促すからだ。
ドライアイやアトピー性皮膚炎の人は要注意
日ごろからドライアイ症状がある人や、コンタクトを装用している人もアレルギーリスクが高い。
ドライアイになると、涙の分泌量が少なくなったり、蒸発しやすい質の涙になったりして、バリア機能が弱くなり、抗原が侵入しやすい状態になる。
傷ついた角膜上皮から炎症物質が出て、充血も強くなる傾向があるからだ。角膜に傷がつくと、まぶたの裏側に「巨大乳頭」というこぶができ、このこぶによって瞬きのたびに角膜がこすれ、傷が入ることもある。
ドライアイの人やソフトコンタクトをしている人は、角膜がこすれる刺激を受けやすく、アレルギー発症時に巨大乳頭ができるリスクが高い。
ソフトコンタクトはハードコンタクトよりもサイズが大きめのため、瞬きのたびにエッジがまぶたの裏でこすれ、こぶができやすい。
特に、2週間、1年といった装用期間が長いタイプのものは、洗い流しきれなかったたんぱく質によっても炎症が悪化する可能性があるという。
アレルギー症状が起こる時期はメガネにするか、ワンデイの使い捨てタイプに切り替えた方がよい。
巨大乳頭結膜炎を起こした場合、直ちにコンタクト装用をやめて点眼治療をすると2~3カ月で回復する。
アトピー性皮膚炎の人も目の症状が悪化しやすい。
皮膚も結膜も角膜も、バリア機能が弱いために抗原が入りやすい。
花粉の時期は、早めの対策が重要だ。
参考・引用一部改変
日経ウェルエイジング・目の健康を守る 2020.2.19
<関連サイト>
目に悪影響をもたらす環境因子