ロングフライト血栓症(LFT)

年末年始に海外旅行を計画しておみえの方もおおいのではないでしょうか。
長時間の飛行機での搭乗で気をつけなければいけない病気にロングフライト血栓症(LFT)があります。
今ではすっかり有名になってしまいましたが、楽しい旅行の中でつい忘れてしまいがちです。
最初の頃は「エコノミークラス症候群」と呼ばれていました。
エコノミークラス席は特に狭くて下肢を動かしにくく、より血栓ができやすいという考えから命名されたのです。
しかし、実際はファーストクラスやビジネスクラスに乗っていても深部静脈血栓症が発症することがあることや差別的な名称のため名前が変わってきました。

理屈としては長時間にわたる映画観賞でも同様なことが起こりそうですが、飛行機の中のほうがはるかに起こりやすい事実があります。
したがって飛行中の低圧性低酸素血症も原因に一つと考えられるようになりました。




##ロングフライト血栓症(LFT)ってどんな病気?
ロングフライト血栓症(LFT)とは、6時間以上のフライト時に、重力と腹圧に逆らって、心臓に血液を送り返さなければならないふくらはぎの静脈内に、血栓を生ずる病気です。
重症例は10時間以上のフライトで発症し、ふくらはぎの静脈に発生したゼリー状の血栓が心臓を経て肺動脈に詰まり、呼吸困難、失神、さらには死亡に至ることもあります。


症状
イメージ 2


軽症
血栓が左右両側に同時に起こることは極めて稀で、左右どちらかのふくらはぎの内部に不快感、鈍い痛み、腫れなどを起こします。一般的には4:1の割合で、左側のふくらはぎに発生します。

中等症
軽症の血栓が、さらに血液の流れに沿って心臓側に徐々に延び、成長していって、大腿部あるいは骨盤内部深部静脈まで塞いでしまい、片方の下肢に強い痛みや浮腫(むくみ)が出ます。

重症
中症の血栓が血管壁からはがれ、ズルズルと大静脈を上行して、いったん心臓に入り、次いで、酸素を取り入れる器官でもあり、血液のフィルターでもある肺の血管(肺動脈)を詰まらせてしまい、酸素を取り入れるという生命維持機能が害されます。
呼吸困難、脈の増加、失神などが起こります。


イメージ 1



<参考および引用サイト>
ロングフライト血栓症(LFT)ってどんな病気?
http://www.jstm.gr.jp/lft_01.html
(「日本旅行医学会」のサイトです)

<ポイント>
[ロングフライト血栓症とは?]
○飛行中の機内では乾燥した環境のため、長時間のフライトでは体の水分が失われ血液が濃縮、かたまりやすい状態にあります。
○さらに、狭い座席に同じ姿勢でずっと座りつづけていることで、下肢が圧迫され静脈血の心臓への巡りが悪くなり、血のかたまり(血栓)ができやすくなります。
○およそ6時間をこえる長時間のフライトを経験したときに、このような状態になる傾向があります。
○そして着陸後、立ち上がった際に血栓が血管壁からはがれてしまいます。
重症例では、このはがれた血栓が心臓を経て肺動脈につまり(肺塞栓症)ショック状態となり、死に至ることもあります。
○この疾患は機内のみにとどまらず、長時間すわったままでの列車や車での移動、また病院でのベッド臥床などでも発症します。
血栓は両下肢同時におこることはまれで、左下肢に発生することが多いです。
○下肢に静脈瘤のある方、下肢の手術をされた方、血液の凝固能に異常のある方、経口避妊薬を服用されている方、妊娠中や出産後の方などは特に注意してください。
[予防するには?]
○機内では2~3時間ごとに歩く、あるいは下肢の屈伸運動などをしましょう。
○着席中でも足の趾を動かす、つまさき立ちのような運動をする、ふくらはぎを軽くもむなど下肢に血液がとどこおらないようにしましょう。
○ミネラルウオーターやお茶など充分に水分を摂ってください。コーヒーやアルコール類は利尿作用があり逆効果となるので注意してください。
睡眠薬を服用しての熟睡は危険です。
○窓側席に座るより、通路側に座るほうが席を離れるなど移動しやすくなります。
<引用>
フライト血栓症
http://www.forth.go.jp/keneki/kanku/disease/long%20fight%20thrombosis.htm







イメージ 4

平山郁夫「ナーランダの月 インド」2007年
http://blog.livedoor.jp/elma0451/archives/51034696.html


<きょうの一曲>
Tony Bennett - Winter Wonderland HDTV
http://www.youtube.com/watch?v=rhcg25ShZgs


読んでいただいて有難うございます。
コメントをお待ちしています。
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)