飲むコラーゲンは効果ある?

昨日、診察室でこんな光景がありました。

昨年度の特定健診の結果を聞きに来た初老の女性の方が来院されました。
悪玉コレステロールがきわめて高かったので、心血管予防のために是非とも薬物療法を含めた治療をしたほうがいいですよとお薦めしました。

返って来たのは「今『飲むコラーゲン』やヒアルロン酸やグルコサミンを毎日使っています。症状が何もないので結構です」という言葉でした。

「こういった市販の民間療法は口から飲んで効くわけありませんよ」と言って以前の私のブログを印刷して渡しました。
どこまで納得していただけたか分かりませんが、これ以上言っても無駄と思いそのまま帰っていただきました。


グルコサミン  その1(1/2)
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2008/03/24
グルコサミン  その2(2/2)
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2008/05/11



「コラーゲンを飲んで肌をきれいに・・・」という広告が最近目立ちます。
ネットで検索しても業者の広告で溢れています。
そういった情報からは正しい知識は入りません。

しかし女性にとってはきわめて気になる内容です。
クリームとして皮膚に塗るだけでなく、飲んで内側からコラーゲンを補うというわけです。
一見、合理的な方法と思われます。

このコラーゲンと言うのは、ゼラチンのことなのです。
おやつのゼリーやグミと同じものです。

広告では、これを飲むと、それが胃腸から吸収され血液の流れに乗って顔の皮膚まで到着し、そこで真皮層のコラーゲン線維として留まっていてくれるという説明です。
しかも気になるしわの部分にだけ選択的に取り込まれるということです。
そうでなければしわがなくならない理屈です。

ゼリーを食べると、胃腸で分解され、アミノ酸として体に吸収されて体全体の栄養分として使われます。
顔にだけ運ばれたり、またそのままコラーゲン線維として皮膚の中にもぐりこんだりはできません。
血管を破って、皮膚の真皮層に飛び込む、イキのいいゼラチン君でもいれば話は別ですが。。

つまり、コラーゲンを飲むということは、良質のたんぱく質を摂取していると言うことに過ぎずそれ以上のものではないのです。
良質のたんぱく質は簡単に言えば、ゆで卵を食べても得られますし、肉や魚、豆などの普段の食事で十分摂取できます。
肌のコラーゲンは、真皮層の線維芽細胞が作りだしています。
逆にいえば、線維芽細胞が作ったコラーゲン線維しか皮膚のコラーゲンとして存在できないのです。
つまり、飲むコラーゲンを直接、肌のコラーゲンにはできません。

したがって、コラーゲンをサプリメントで摂取するより、普段バランスの良い食事をするほうがお肌にとって合理的です。

薬には、「こういう効果がある」と言われた薬を飲んでいると、本当は何の効果もない偽の薬でもなんとなくそんな気になって実際効果がでてしまう、という現象が見られることがあります(「プラシボ効果」と言いまう)。
飲むコラーゲンもそういう意味では、効果があるかも知れないというのが最大限の評価といえます。

<参考および引用サイト>
飲むコラーゲンは効果ある?
http://www.bihada-clinic.info/kojiwatarumi/4-2.html

<引用記事>
出典 日経新聞・朝刊 2010.5.29 (ヘルスこの一手「飲むコラーゲンは効く?」)
版権 日経新聞


<自遊時間>
昨日、iPadのスタンドがあったら購入を考えたいと書きました。


その後で調べてみたら素敵なスタンドがありました。
やはりアップルはしたたかです。





読んでいただいて有難うございます。
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