行き過ぎたビタミン神話

新潟大学の岡田正彦教授が日経新聞の健康欄「ほどほど健康術」のコーナーに、ビタミンについての解説記事を書かれています。
主旨は、「ビタミンなどわざわざとらなくてもいい。普通の食事を心がければいい」というものです。

以下は、その内容です。(一部改変)

 ***

ビタミンには元気の源というイメージがある。
さまざまな効能が語られているが、本当はどうなのだろうか。

ビタミンは体内で潤滑油のような働きをしていて、これなしでは生きてはいけないのは確かだ。
ただ、エネルギー源ではないため元気が出ることはない。
このビタミンには13種類ある。

ビタミンAには、目をよくする作用があるといわれてきた。
しかし、健康な人が日常的に補給しても、目の病気を予防できるわけではない。


ビタミンBはがん、神経痛、口内炎円形脱毛症などに効くとされているが、大規模調査のデ-タを見る限り、これらの病気を予防する効果は証明されていない。

ビタミンCを服用すると、肌がきれいになり、風邪も予防できると信じている人が多い。
しかし、これらの効能についてもエビデンスは存在しない。

欧米ではビタミンCとEに心臓病の予防効果があるとも言われてきた。
この点を確かめようと、大規模な調査が米国で行われた。
8万人の医師を対象に調査を行ない、3割の医師がビタミンを習慣的に補給していた。
つまり、専門家といえども考えることは同じであることが分かった。
しかし、心臓病を予防する効果は一切認められなかった。

女性を対象にビタミンCとEのがん予防効果をみる研究も行われたが結果は否定的だった。

8千人のボランティアを無作為に2群に分け一方はビタミンの錠剤を、他方は偽薬を服用してもらい、
9年間かけて追跡するという本格的なものだった。

ビタミンはどれも体内ではほとんど合成できず、食事から取るしかない。
この点が数々のビタミン神話を生むもとになったようだ。
しかしごく少数あれば足りる。
たえば、ビタミンCは普通に食事をしている限り、数カ月分の必要量が体内に備蓄されている。

取り過ぎたビタミンは、そのまま排泄されるか、体内に蓄積されて副作用を起こすかのどちらかしかない。

人間は余計なことをしなくとも生きていけるよう、上手く出来ている。

「普通の食事」を心がければ良い。

出典 日経新聞・朝刊 2010.7.25
版権 日経新聞

 ***

<私的コメント>
サプリメントのみに頼るのではなく「普通の食事」というわけですね。
ところで普通の食事が取れていないときはビタミン補給は大切です。

先日、僧侶さんがみえました。
いつもはお父さんがみえるのですが、お盆の季節で忙しいのか息子さんがみえました。
親子ともども永平寺で修行してみえますが、この息子さんから興味深い話を聞きました。

修行していると全員必ず脚気になるとのこと。
若い修行僧は家からビタミン剤を持参してこっそり服用しているとのこと。
きっと先に修行を終えた父親からの指示なのでしょう。

要するに、「普通でない食事」ではビタミン剤は必要というわけです。



ビタミンについてはこんな記事もあります。
こんなのを読むと「やっぱりビタミン剤を!」ということになるかも知れません。

ビタミンBが、うつを予防!!
http://www.rda.co.jp/topics/topics4925.html
一部の人々で遺伝的にビタミンCの吸収が低いことが明らかに!
http://www.rda.co.jp/topics/topics4932.html
ビタミンA / βカロテン
http://www.rda.co.jp/sup/betacarotene.html
ビタミンB群
http://www.rda.co.jp/sup/VB.html
ビタミンC が痛~い痛風を予防
http://www.rda.co.jp/topics/topics4117.html
ビタミンD
http://www.rda.co.jp/sup/vd.html
ビタミンE/トコフェノール/トコトリエノール
http://www.rda.co.jp/sup/ve.html



逆にこんなのもあります
抗酸化栄養素、ビタミンが寿命を縮める !?
http://www.rda.co.jp/topics/topics2499.html
かぜ予防にビタミンC 豊富な果物はウソ !?
http://www.rda.co.jp/topics/topics2909.html
ビタミンC が運動の効果を妨害する !?
http://www.rda.co.jp/topics/topics3398.html


<自遊時間 その1>
#エッセー集に酷似部分 鎌田実氏が「おわび」
医師で作家の鎌田実さんのエッセー集で、ベストセラーになった「がんばらない」(集英社刊)の一部に、医療ジャーナリスト西寺桂子さんの著作と酷似する表現があることが分かり、鎌田さんと集英社が3日までに、同社のホームページに「おわび」を掲載した。
該当部分を書き直して、8月中旬に再刊行する。同社によると、文庫版154~157ページ部分が西寺さんの「病院が、変わり始めた」(照林社刊)の記述に似ていた。
http://www.excite.co.jp/News/entertainment_g/20100804/Kyodo_OT_CO2010080301001215.html
出典 excite.ニュース 2010.8.4

<私的コメント>
ソースはエ「クサイ」ト・ニュースです。
私は彼のデビュー当時から、同じ医師として少し「クサイ」と思っていました。
立松和平氏も一度ならず盗作事件を起こしています。


脳科学者」の茂木健一郎氏も「クサイ」と睨んでいましたが、案の定約4億円の所得の申告漏れ(脱税?)で世の中を騒がせました。




<自遊時間 その2>
日経新聞・夕刊 2010..7.1「7不朽の一点 オルセー美術館展」に細川護熙元首相の鑑賞文が載っていました。


テムズ川は金色で何とも美しく、太陽と水のきらめきを追いながら実に夢中で作品に描いた」――アリスに捧(ささ)げる、ロンドン、1901年2月3日。

モネは1899年から3度にわたってロンドンを訪れ、100点あまりの作品を描いたが、これはその時にロンドンから夫人に送った手紙の一節である。
彼が描いたのは、いずれも国会議事堂やウォータールー橋など3つのモチーフで、ひとつのデッサンから制作したものだが、建物を取り巻く霧の動きと透明感を描写すること、輪郭をぼやかして、陽光を浸透させることにすっかり魅了されている。

その前からルーアン大聖堂などの連作を手がけて、刻々と変化する光の状態を描きわける新しい境地へと踏み出したモネにとって、霧のロンドンは心弾むかっこうの題材だったに違いない。

この「ロンドン国会議事堂」よりもっと早く1873年に描かれた「印象、日の出」も私の好きな作品で、この絵にも霧と陽光のきざしが見え始めているが、ともあれ、アリスへの手紙のように、この絵を眺めていると、まさにゾーンに入って夢中で筆をふるっているモネの姿がほうふつと浮かんでくるような気がする。


クロード・モネ「ロンドン国会議事堂、霧の中に差す陽光」
新境地に格好の題材  

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