そのくしゃみ、鼻水は?

そのくしゃみ、鼻水は風邪?それとも花粉症?

いよいよ花粉症シーズンが到来。
2011年の花粉の飛散量は例年の10倍。
過去最大だった2005年に匹敵するとも言われています。
花粉症の正しい知識をつけ、どのように対策をとればいいのか、今からでも間に合う「治療」はあるのかどうか。

「2011年は例年の10倍の花粉が飛散する」。
こうした報道を見聞きした人も少なくないだろう。
実際には地域差があるというが、それでも未曽有の花粉症患者増が見込まれているのも事実だ。

とはいえ、まだ花粉症を発症していない人であればその対策を考えはしないだろうし、すでに発症している人であれば「死にいたる病気ではないから」と治療はせずに市販薬を飲んでやりすごそうという人も多いのではないだろうか。

しかし「花粉症は治せる。もしくはうんと軽くできる」のだという。
そのためには花粉症の正しい知識を身に付ける必要がある。少なくとも「専門家に診てもらう」あるいは「対処法を知る」ことはその最低限の条件となる。逆に病院に行かなければ治すことはできないし、ラクに過ごすことさえ難しい。

患者数の多いスギ花粉を中心にした花粉症の見極め方、治療の最新情報にはどのようなものがあるのだろうか。


Q 本当に2011年のスギ花粉飛散量が10倍なの?
正確には、全国区で10倍というわけではありません。

ただし、四国から九州では2~3倍前後、関東で5倍前後、東海や近畿では10倍前後といわれるなど、例年より多いことは確かです。

花粉症全体の7割をも占めると推測されるスギ花粉は毎年7月はじめごろから作られます。
この時期に日照時間が長く、雨が少ないと、花芽がたくさんできて、翌年の花粉飛散数が増加します。
ご存じの通り、2010年の夏は記録的な猛暑でした。
ただ日照時間には地域差があったため、花粉飛散数にも差があります。


日本気象協会の発表によれば、2011年のスギ及びヒノキ科花粉(北海道はシラカバ)の総飛散数は、九州から東北地方にかけてのほとんどの地域で例年より多いか例年並みとされています。
つまり九州から北海道にかけて多くの地域で気温は平年よりかなり高く、日照時間は平年並みか平年より多め、降水量は平年並みか平年より少なかったということです。

ただ、九州南部は日照時間が平年よりかなり少なく降水量はかなり多くなり、宮崎や鹿児島では豪雨による土砂災害が起きたなどの報告もありました。
また、北海道は降水量が平年より多くなりました。
よって九州南部と東北地方の一部や北海道は例年よりやや少なくなる見込みとされています。

なお、「例年」とは前年までの10年間の平均値としています。
ですから「前年比」ではないところにも注意したほうがいいでしょう。
民間気象情報会社、ウェザーニュースによれば2010年の飛散量は非常に少なかった傾向があります。
となると、「例年」と比べた数値よりも、2010年と比較した体感飛散量の方が多く感じる(つらく感じる)可能性もあるわけです。

地域ごとの飛散量予測は、「ウェザーニュース、2011年の花粉飛散傾向発表」にて確認できます。


Q どこまでが風邪? どこからが「花粉症」?
花粉症とはスギなどの花粉が抗原(アレルギーの原因物質)となって起こるアレルギー疾患の一種で、厚生労働省の調査によると、わが国のスギ花粉症の患者数は人口の約16%にも上ると推定されており、この20年間で急増しています。

花粉症を引き起こす植物は、非常に多岐にわたり、時期も多くの人がかかる春だけではありません。
ただ、花粉症を引き起こすもっとも代表的な花粉がスギで、全体の約70%を占めると推察されています。

花粉症の三大症状は「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」。
これは花粉症同様に春先に流行しやすい風邪(風邪症候群)でもよくみられる症状です。

風邪は発熱したり、だるくなったりしますが、これは花粉症にも見られる症状もあります。
このためこれまで花粉症と診断されてこなかった人の場合、自分が風邪なのか「花粉症になった」のか判断しにくいでしょう。


では風邪と花粉症の違いをどこで見分ければいいのでしょうか。
簡単にまとめると、次のようになります。


風邪と花粉症はここが違う
1 くしゃみは1度出ると立て続けに出る
2 鼻水はサラサラとした水のよう(風邪の場合、初めはサラサラでも次第に粘りがでる)
3 頑固な鼻づまり
4 目やのどのかゆみ
5 熱っぽさ、頭痛、頭重
6 頭がボーっとして集中力が欠如
7 毎年、同じ時期に同じ症状が出る
8 家族の中にアレルギー体質の人がいる


上記のような症状がある場合は、少なくとも風邪ではないと考えられます。
「7」に関しては、1年中症状が出る場合もあります。
「7」以外を満たし、通年で症状が見られる場合は、「通年性アレルギー性鼻炎」で、一定期間であれば「季節性アレルギー性鼻炎」と呼ばれます。


花粉症の可能性がある諸症状
主な症状           症候
くしゃみ くしゃみは外から入った異物を外に出そうとする防御反射。
花粉症では、連続して何度も起こる。
水様性鼻汁(水性鼻漏)
鼻汁は吸気をろ過、加湿する上で重要な役割を果たすが、花粉症ではその分泌が亢進
し、鼻からたれたり、のどに流れたりする(後鼻漏)。鼻水は水様性で、いくらかんで
も出てくる。
風邪の場合、初期は透明な鼻汁が出ることがあるが、数日で粘膿性に変わり1~2週間で
軽快する。
鼻閉(鼻づまり)
鼻閉は肥満細胞から分泌された化学伝達物質により生じる鼻粘膜腫脹や血流悪化によっ
て起こる。
重症化すると、両方の鼻が完全につまり、口呼吸になる。
眼の症状 激しいかゆみ、結膜充血、涙目など。

 
上の表は花粉症の可能性がある症状をまとめたものです。
いずれにせよ、疑わしい症状が出た場合、専門医を受診したほうがいいでしょう。
なぜなら、花粉症は正確に診断すれば治療が可能だからです。
                       (日経トレンディネット 山田真弓)

出典 日経新聞 Web刊 2011.2.19(一部改変)
版権 日経新聞


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