胃がんになりやすい血液型

血液型と性格の関係に科学的根拠はないようだが、血液型と胃がん胃潰瘍、十二指腸潰瘍との関係を調べた論文が米国疫学雑誌に昨年12月報告された。

スウェーデンデンマーク献血者108万9022人を平均10年間追跡したところ、胃がんの発症688例、胃潰瘍による入院2938例、十二指腸潰瘍による入院2729例を確認した。

その結果、A型の人が胃がんを発症するリスクは、O型に比べて1.20倍と高かった。
AB型とB型ははっきりしたリスクの上昇も低下もなく、誤差範囲の結果にとどまった。
一方、胃・十二指腸潰瘍のリスクはO型が最も高い。
O型の人が胃潰瘍で入院するリスクは、他の血液型の1.10~1.30倍、十二指腸潰瘍では1.18~1.33倍と高かった。

著者らによると、胃がんのリスクがA型で高いことは1950年代から報告されている。
胃・十二指腸潰瘍のリスクがO型で高いことも多数の研究で示されている。
今回の研究の意義は、大規模で高精度のデータによってこれらの知見を確認した点にあるという。

研究の限界として、献血者は一般の集団より健康なので、今回の結果がどこまで一般の集団に当てはまるか分からないことを挙げている。
また、胃・十二指腸潰瘍は入院例だけを考慮し、入院に至らなかったより多数の症例を考慮していない点も指摘している。
さらに胃がんや胃・十二指腸潰瘍の原因であるピロリ菌の感染についての情報がない点も挙げている。
なぜA型と胃がん、O型と胃・十二指腸潰瘍が結びつくのかについての考察もほとんどされていない。

今回の研究で示されたリスク上昇は、胃がんでも胃・十二指腸潰瘍でも1.2倍程度と小さいので、例えばA型の人が、自分は将来胃がんになるのではないかと過剰に心配する必要はない。
スウェーデンデンマークより胃がんがはるかに多い日本での高精度の研究が待たれる。
その間、定期的に検診を受けることが大切だろう。
                            東北大・坪野吉孝教授

出典 朝日新聞・夕刊 2010.1.24
版権 朝日新聞社

原文(論文)
Risk of Gastric Cancer and Peptic Ulcers in Relation to ABO Blood Type: A Cohort Study
http://aje.oxfordjournals.org/content/early/2010/10/10/aje.kwq299



<コメント>
さて、この論文の結果の真偽はどうなのでしょうか。
自分の血液型がA型だけに気になってしまいます。
医学の教科書に「胃がんの原因の一つに血液型がある」よいうことが記載されるようになるとはとても思えません。
「血液型と性格の関係に科学的根拠はない」ということですが、むしろこちらの方が関連があるような気がしてしまいます。
皆さんはいかがでしょうか。

血液型についての新たな都市伝説になるでしょうか。


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