鼻からの胃カメラ

内視鏡 鼻から入れて、検査が楽に

胃がんや胃炎などの検査に欠かせない内視鏡
厚生労働省はがん検診の指針を改め、4月から市町村が実施する胃がん検診で従来のX線検査に、内視鏡も選択肢に加えた。
これで胃の内視鏡検査は増えそうだが、口から入れる内視鏡には吐き気感があって嫌がる人もいる。
鼻から入れる内視鏡経鼻内視鏡)ならば受診が楽というが実際はどうなのだろう。
 
医師と会話しながら
経鼻内視鏡なら医師と会話をしながら検査を受けられる。
鮮明な画面が見えるので、医師の説明にも納得できる。
口からの内視鏡は話せないし、苦しくて医師の説明を聞く余裕もなかい。
 
経口内視鏡で吐き気感がするのは、内視鏡の管を通す際に舌の付け根に触れるため。
経鼻ならば吐き気感は少なくなる。
ある医療機関では人間ドックでは経口よりも経鼻を選ぶ人が圧倒的に多いという。
 
経鼻内視鏡は鼻の奥が狭くて硬いため管を通すのが困難な人がいるのが弱点とされているが、検査前の麻酔薬などの処置を丁寧に行うことでほとんどの人が経鼻で可能だ。
 
経鼻内視鏡内視鏡を受けるハードルを下げました。
これでピロリ菌がいるかどうかを判定でき、胃がん予防にも役立ちます。
 
胃の粘膜にいる細菌、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどの原因とされる。
内視鏡でピロリ菌による胃炎を見つけることがピロリ菌の除菌、長期的な胃がん予防につながる。
 
経鼻と経口の内視鏡検査を比較した論文によると、早期胃がんの発見率はどちらの種類の内視鏡でも有意な差がないという結果もある。
 
胃の内視鏡検査はほとんどの場合、経鼻でできる。
おなかが痛いと訴える患者さんにも、苦しい負担をかけずに検査ができる。
 
画像技術が向上
経口内視鏡の管が直径9~10ミリ程度なのに比べて、細い鼻の穴を通すために経鼻内視鏡は直径5~6ミリと細い。
先端にあるレンズや画像センサー、照明装置、病気の疑いのある組織を採取する処置具を通すための穴などは経口よりも小型にせざるを得ない。
受診者にとって吐き気感が少ないというメリットがあるものの、10年前ごろの経鼻内視鏡は見える画質や操作性が経口に比べて劣るという課題があった。
 
しかし、経鼻内視鏡メーカーの一つ、富士フイルムによると、「2011年の新製品からは経口とほぼ変わらない画質になった」という。
画像センサーの性能が向上したためだ。
 
さらに、14年にレーザー光源を使った経鼻内視鏡が発売された。
照明の明るさも経口とほぼ同じ程度に向上した。
 
レーザー光源の導入によって病変を発見しやすくする工夫もされた。
先端から白色光と短波長のレーザー光の2種類の光を出すことができる。
短波長の光は粘膜の表層にある血管を強調して見るのに適している。
白色光は深い部分の血管が見やすい。
これらの光を使い画像処理することで、がんやピロリ菌による炎症を診断しやすくする。
 
レーザー画像によって病変を見落としにくくり、その結果として、わずかな胃粘膜の変化を画像処理して少し拡大観察を加えることで、組織検査をした方がよい病変かどうか判断できるようになった。

出典
朝日新聞・朝刊 2016.4.9