脳動脈瘤の新治療法

動脈瘤、新しい治療法 血管内に筒、瘤への血流防ぐ

破裂すると、くも膜下出血などを引き起こす「脳動脈瘤」。
血管内に金属製の筒を入れて瘤を小さくする新たな治療法が登場した。
従来は治療が難しかった大きなものが対象だ。
脳ドックの普及で、早めの治療が増える一方、不安を和らげる取り組みも出てきた。

■10ミリ以上の瘤が対象
新しい治療法では、細かい網目の筒が血管の壁となり、瘤への血流を減らす。
足の付け根からカテーテル(管)を入れて筒を患部まで運ぶので頭を開く必要はない。
 
動脈瘤は破裂すると、くも膜下出血を起こす。
年3万~4万人が発症し、3分の2が、死亡か重い後遺症が残るとされる。
 
従来の治療法はそれぞれ一長一短がある。
開頭して瘤の根元をクリップでとめる方法は確実に破裂を防げるが、神経に傷がつくと後遺症の心配がある。カテーテルを使って瘤にコイルを玉状に詰めるものは脳の奥でも対応できる半面、再発の恐れがある。
血管を手術で塞ぐ方法は大がかりな手術が必要だ。
瘤が大きいとこうしたリスクも高まる。
 
新しい治療法は、これまで治療が難しかった首の内頸動脈にある10ミリ以上の大きな瘤が対象。
昨年10月から保険適用になり、自己負担は10万~30万円程度。
ステントを置くだけで破裂が防げ、瘤の再発や後遺症などの課題も克服できる。
ただ、今のところ適用は瘤全体の数%にとどまっており、範囲を広げるための治験が進められている。
 
一方、瘤の中の血液が固まって小さくなるまで数カ月以上かかり、その間は破裂の危険性が残る。
ステントの影響で血の塊が生じることを防ぐため、血液を固まりにくくする薬を長期間飲む必要もある。
 
技術的にも難しく、治療は現在、全国12施設に限定。
日本脳神経血管内治療学会などは実習などの研修を受けた医師だけが治療を進めるよう求めている。

脳ドックで発見増加
脳動脈の瘤は、成人100人当たり3~5人にあるとされる。
一般に高血圧や喫煙、大量に飲酒する人に多い。
頭痛やめまいなどの自覚症状は少ない。
 
日本脳神経外科学会が約6千人を対象に実施した調査によると、破裂の危険性は、3~4ミリの瘤と比べ、7~9ミリは約3倍、25ミリ以上は約76倍高かった。
全体の破裂率は年約1%だった。
日本脳卒中学会が15年に出した指針では、直径が5~7ミリ以上で治療を検討すべきだとしている。
 
大きさや場所、形で破裂率は変わる。
合併症や年齢などを考慮して治療の有無や方法を決める必要がある。
 
未破裂の瘤の治療件数は約1万6千件(14年)で10年前の1.5倍に増加。
脳ドックの利用増が背景にあると見られる。
ドックは健康保険の対象外で、費用は5万円前後が多い。
 
検査で見つかる瘤の半数は5ミリ未満とされる。
この大きさの破裂率は年0・36%にとどまるが、破裂の不安でうつ症状になることもある。
 
日本脳ドック学会は、別の医師に意見を聞くセカンドオピニオンを勧めている。
瘤が見つかり、不安になるデメリットも知ったうえで脳ドックを受けたい。

 
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出典
朝日新聞・朝刊 2016.4.20


<私的コメント>
循環器の領域では狭心症心筋梗塞の患者さんにステントを冠動脈に置くことは普通に行われています。
この方法は初期から血栓による閉塞が問題となっていました。
そのため、一定期間抗血小板剤を服用していただきます。
動脈瘤による出血を防ぐためのこの手法で、逆にステント内で血栓がつまって脳梗塞を起こすことはないのでしょうか。
動脈瘤は脳血管の「根本(ねもと)」にできることが多く、もし血栓がつまれば大きな梗塞になります。
動脈瘤破裂による脳出血(詳しくは「くも膜下出血」)のリスクのある人が対象ですから、(出血の可能性のある)抗血小板剤も使用しにくいということになります。
コイルはわざと詰まらせる、ステントはきちんと中を血液が流れるようにさせる。
似て非なるものがあります。