糖尿病 薬剤師が生活改善に伴走

糖尿病、生活改善に伴走 薬剤師ら、食事や運動で助言 自治体、医療費減に一役

糖尿病の悪化を防ごうと、薬剤師や保健師の助言で生活習慣の改善を促す自治体の取り組みが本格化している。
疑わしい人を含めると日本人の5人に1人が罹患しているとされる国民病。
重くなると人工透析が必要になるなど生活の質は大きく下がる。医療費抑制の狙いもある。
 
「梅干しを1個に」
厚生労働省の調査では、糖尿病患者の4割は自覚症状がない。
しかし血糖値が高い状態が続くと、腎症や網膜症などを引き起こす。
服薬だけでなく、食事と運動も重要だ。
 
東京都荒川区は13年度から、糖尿病で腎機能が低下するリスクの高い患者を選び、保健師らが食事や運動を指導している。

面談や電話相談
医療データを分析する会社に委託し区内の国民健康保険加入者の診療報酬明細(レセプト)43万5千件を分析、病名や投薬データから約230人を抽出した。
このうち43人が13年8月から半年間、保健師や管理栄養士らによる個別面談や電話相談を受けた。
 
例えば「食事をどうすれば良いか分からない」と訴える60歳代の男性には、食生活を聞いた上で牛乳を減らして油を1日30グラム取るよう提案した。
荒川区によると、指導を受けた患者の66%で血糖の値が下がった。
半年間で1人あたりの医療費が約4万円減ったという。
14年度も約50人が同様の指導を受けている。
 
埼玉県もレセプトなどを活用し、リスクの高い患者への指導を検討する。
県の試算では、対策をとらないと25年には糖尿病が原因の透析患者が10年比で1.5倍に増え、関連医療費が290億円から435億円に膨れる。
保健師や看護師が生活改善の相談に応じ、受診が途切れている人に文書や電話で通院を促す方法を想定している。
 
食事や運動療法は患者が自信をもって取り組まないとなかなか継続できない。
専門家が改善点を一緒に考えていくことが重要だ。

患者10年で27%増
糖尿病はインスリンを作る膵臓の細胞が破壊され、インスリン不足になる「1型糖尿病」と、体質に肥満や運動不足などが重なりインスリンの働きが悪くなる「2型糖尿病」がある。
中高年に多いのは2型糖尿病だ。
  
厚生労働省の推計では、可能性を否定できない人を含め、2012年の糖尿病患者は2050万人。
02年(1620万人)から27%増えた。
 
食生活の変化や高齢化社会の進展が背景にある。
 
2型糖尿病の治療は、まず食事療法と運動療法を2~3カ月続ける。
それでも血糖値が下がらなければインスリンの働きを改善する薬を服用するのが一般的だ。
血糖値が高い状態が続くと、糖尿病性腎症や網膜症などの合併症を起こす恐れがある。
 
日本糖尿病学会は、合併症を防ぐ血糖値の値を定めているが、国立循環器病研究センターによる患者約1千人を対象にした調査では、約半数が値を超えていた。
同センターは「自己管理に限界があり周囲のサポートが必要」などと分析している。

<私的コメント>
医師不在の論調でやや違和感を覚えます。
最近「かかりつけ薬局」という言葉を耳にする機会が多いのですが、肝腎の「かかりつけ医」という言葉はあまりいわれなくなりました。
国民の健康を守っていくのに、厚労省は今後どのような方針を打ち立てていくのか、われわれにはビジョンが伝わって来ません。

参考
日経新聞 2016.5.2.5


<私的コメント>
PDF 調剤医療費の動向と大手調剤薬局 の経営概況
http://www.jmari.med.or.jp/download/WP349.pdf
「平均的な患者負担(3 割負担)は、2004 年には院内処方(医科院内)201 円、 院外処方(医科院外+薬局調剤)792 円であったが、2014 年には院内 231 円、 院外 897 円になり、院外処方と院内処方の差は 2004 年の 591 円から 2014 年 には 666 円に拡大した」(P32)

医療費を押し上げている一因が院外処方の普及です。
医薬分業は厚労省の政策の一貫ですが自縄自縛の感があります。
もともと薬価差益を解消するための医薬分業でしたが薬剤師の「取り分」が薬価差益を大幅に上回っている現状のです。

薬剤師の政治力はなぜ強いのか
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51877418.html
・ロビー活動は生産性の低い業界ほど強い。


自民・藤井参院議員側に9700万円 薬剤師連盟 分散献金 規正法上限超え 3団体に分け
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-02-12/2016021201_04_1.html