抜歯跡の治り方

抜歯跡の治り方 血のゼリーが傷口保護

生涯のうちに、何らかの理由で抜歯となる状況があるかもしれない。
本来、抜歯とはご縁が無い方がよいが、避けられないこともある。
歯が抜けたあとはどうやって治っていくのだろうか。
 
歯は、歯槽骨に植わっている。
このため歯が抜けた後には、ほとんどの場合に骨が露出する。ただ、歯の抜けた穴である抜歯窩は自然と治るものだ。
 
なぜだろうか。
それには、抜歯後の治癒のメカニズムについて知っておくと理解しやすくなる。
 
抜歯窩の治癒に重要なものは血餅と歯根膜である。血餅とは、抜歯窩の中で形成される血液の塊、本来は液状の血液がゼリーのような状態になったものとされている。
歯根膜は、歯と歯椎骨を結合しているもので、歯が取れてしまった後も歯槽骨に残り治癒に役立つ。
 
簡単に言うと、抜歯後には血液が抜歯窩内にたまり、血餅が抜歯窩のふたとなって口腔内の刺激から骨の露出した抜歯窩を保護する。
血餅の誘導により抜歯窩に残った歯根膜から血管が新生し、約1週間で肉のような肉芽組織となる。
それとともに骨の露出が覆われ、歯肉が周囲より伸びてくる。肉芽形成の後に新たにできる仮骨が、月日をかけてしっかりとした骨になっていく。
 
月単位の期間を経て凹凸のある陥没した抜歯後の状態は、徐々に馬の背のような歯槽堤に変わる。
いつまでも抜歯窩の縁に骨の出っ張りが残り、後の義歯の装着に支障が出る場合には、骨の形を整える処置が必要となることもある。
ただ、最初の抜歯の際に骨が治癒したときの形を予測するのは難しく、最初からすべてを見越して骨の形を整えておけないこともある。
 
抜歯が必要となる歯は、骨との結合が失われ、歯根膜が残っていないこともある。
それでも治るものなので、心配しないこと。
それより抜歯窩が血餅で覆われることが重要である。
血餅が脱落するとドライソケットと呼ばれる骨が露出した状態となり、強い痛みが出る。
これを避けるには血餅が脱落しないように抜歯後は強いうがいや、抜いた部分を舌で触ったり、吸ったり、食片が押し込まれないよう注意したい。

参考・引用
日経新聞・朝刊 2014.4.19