認知症介護 会話のコツ

認知症介護 会話のコツ

毎日「お金下ろす」→「きょうは日曜」 食べたのにご飯催促→「今から作るね」

両親など身近な人が認知症になったとき、戸惑う人は多いだろう。
よかれと思いついとってしまう言動が認知症の人を傷つけ、症状を悪化させてしまうことがある。
認知症の進行を抑えるには、周囲が正しい接し方をすることが欠かせない。
どこに気をつければいいのか。

「郵便局で年金を下ろさなきゃ」。
東京都内に住む認知症の80代の女性はほぼ毎日、通帳を持って家の中をうろつく。
平日でも娘が「今日は日曜日だから下ろせないわよ」と言うと、「あら、そう」と郵便局に行こうとするのをやめる。
娘は母親にウソをついたことになるが、それで構わない。

「昨日も同じこと言ってたよね」などと返すと、認知症の人は自らを否定されたと思い不安が募る。
認知症は病状が進むとコミュニケーションが取りにくくなる。
介護する側が知っておきたいのは「記憶力が低下している認知症の人は現実とは違う世界に生きている」ことだ。

よくあるのは食事したのを忘れ催促する例だ。
食べた記憶が失われ脳は食べていないと判断する。
こうした場合、介護する人は否定したり間違いを正したりしないことが重要だ。

認知症の介護と子育てとは違う。
子育ては子供が失敗をしたときに注意すれば経験として上塗りされるが、認知症の人は上塗りができないから意味がない。
しかも、認知症の人は記憶力は低下しているが、抱いた感情は強く残ってしまうといわれる。
「また無視された」「拒否された」という感情は、あきらめや意欲低下を招きかねない。
認知症の人が言うことに寄り添う、歩み寄ることが大切なのだ。

認知症の人が言うことに過敏に反応するのをやめ、「さりげなく調子を合わせる」のがよい。
食事の催促のケースでは「これから作るから」などと答えてあげればいい。
実際に作る必要はない。
「それなら待っていよう」と心を落ち着かせるのが肝心なのだ。
つまり、「説得ではなく納得してもらう」ことがカギだ。

認知症の人とのコミュニケーションでは、「スピーチロック」といわれる言葉で身体的・精神的な行動を抑制することにも注意が必要だ。
介護をしていると何気なく使ってしまう「ちょっと、待ってね」や「座ってて」などの言葉が、認知症の人には否定的に受け止められる場合がある。

軽度の認知症であれば、本人がやろうとしていることを先回りするのもやめた方がいい。
家族は心配のあまり必要以上に世話をやいてしまいがちだが、病気で自信を失っている本人は世話を素直に受け取れないことがある。
危険な事態にならない限りは「本人の頑張りを尊重する」ことが大切だ。

認知症の介護では理不尽な怒りを感じてしまう場合もあるだろう。
介護する人に余裕がなくイライラしているときは、焦りを抑えられずに相手にぶつけてしまう可能性がある。
否定されたという記憶は残りやすいので配慮が必要だ。

対応策として、自分が腹を立てていると思ったら、いったんその場を離れるとよい。
お手洗いに行くとか、水を飲んでくるなどと告げ、時間を置いてもどってくればお互いに落ち着いて話せるようになる。

元気なうち 好み聞いておく
日本の65歳以上の認知症の人の数は、2012年の462万人から25年には700万人に増加すると予想されている。
家族などが認知症になったときコミュニケーションが取れるように、早いうちから準備しておくことが肝心だ。
 
それには、親が元気なうちに、好きな食べ物やテレビ番組、楽しかったことなどを一通り聞いておくことだ。
怒りが収まらない認知症の人に、大好きなコーヒーをいれてあげるとニコッとするなど、親の好みを知っていると、不安にかられる心を静めるための対応がしやすくなる。
 
介護士などプロのコミュニケーションスキルも役に立つ。
デイサービス施設を見学するなどして、認知症の人との接し方ややり取りを学ぶのも一つの方法だ。

参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2019.6.19


<関連サイト>
認知症の人への接し方
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/524

認知症の人に対する話し方のコツ
https://www.ninchisho-forum.com/knowledge/kaigo/004.html
認知症になって脳の機能が低下すると、会話をしなくなることがある。
しかし、会話の量が増えれば脳が活性化され、認知機能にもいい影響を及ぼす。
さらに人と交流することで、生活にハリが出て、気持ちも明るくなる。

認知症の人には積極的に声をかけ、話を引き出すようにしよう。
その際、ゆっくり、わかりやすく話すのがコツだ。

・また、認知症の人は、いくつものことを同時に理解することが苦手だ。
「さっき外出から帰ったから、手が汚れているかもしれませんね。手を洗いましょう」と言うと、「外出」「汚れ」「手を洗う」と三つの話がでてくるので混乱しがちだ。
こういう場合は「手を洗いましょう」と声をかけるだけにする。

認知症の人は、最近の言葉が苦手なことがある。
年齢にもよるが、「スマホ」と言わず、「電話」と言ったほうが、理解されやすい場合がある。
出身地の方言が有効なこともある。
故郷のなまりには、いくつになっても親しみを感じるようだ。

・子どもの頃に遊んでいたベーゴマなどのおもちゃや、若い頃の写真、好きだった歌などを話題にするのもいい。
認知症でも昔の記憶は良く保たれているため、会話の糸口になるだけでなく、脳が活性化される効果がある。
これは「回想法」でも利用される手法だ。