新型インフルエンザワクチン・鼻に吹きつけ

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鼻に噴射、新ワクチン開発 新型インフル厚労省研究班

サルで効果 10年から治験
世界的な流行と大被害が予想される新型インフルエンザに、すばやく対応できる
新ワクチンを厚生労働省研究班が開発した。
新ワクチンは鼻に吹きつけるだけなので、注射器などがいらず、途上国でも使い
やすい。
マウスとサルで効果を立証した。
人での治験を2010年から始める予定だ。

研究班長の長谷川秀樹・国立感染症研究所感染病理部第二室長らは、ベトナム
04年に高病原性鳥インフルエンザH5N1に感染した患者から得たウイルスを使い、
病原性をなくす処理をした。
これに、粘膜の免疫を刺激する補助剤をまぜて新ワクチンをつくった。

従来のワクチンは、血中の免疫細胞だけを刺激してウイルスに対抗する抗体
をつくる。
このため、ウイルスが体内に感染しないと効果は出ない。

新ワクチンは粘膜を刺激し、粘膜の外に抗体を分泌する免疫反応を起こさせる。
鼻腔(びくう)に入ったウイルスが粘膜にくっつく前に、この抗体が撃破する。
従来の抗体と働き方が違うため、遺伝子の細かな違いにかかわらず防御効果を発揮
するのが特長だ。
新型ウイルス登場前に製造でき、発生直後からすばやく対応できる。

研究班は、このワクチンをマウスの鼻に1カ月間に2回吹きつけ、2週間後に
ウイルスにさらし、ワクチンの効果を調べた。
その結果、新ワクチンを吹きつけたマウス5匹はすべて生き残ったが、吹きつけ
なかったマウスは12日以内にすべて死んだ。

また、同じH5N1型でも遺伝子の一部が異なる株への効果をみるため、97年の
香港株と05年のインドネシア株でも調べ、同様に死亡を防ぐことを確かめた。
H5N1型なら、流行年や地域による遺伝子の違いを超えて高い効果があった。

サルの実験でも、ワクチンを使わなかったサルは肺炎を起こしたが、使ったサルは
元気で、鼻やのどからもウイルスは見つからなかった。

インフルエンザウイルスの型は理論上144通りある。新型インフルエンザは
H5N1型から出る可能性が高いとみる専門家は多いが、予測は難しい。
H5N1型以外の新型インフルエンザ発生も視野に入れ、研究班メンバーの喜田宏・
北大教授(獣医学)は、人に感染する可能性が高い136通りのウイルスを収集した。
長谷川室長は「集めたさまざまな型のウイルスをもとに、新ワクチンの事前準備が
可能で、発生直後にすばやく対応できる」と話す。

副反応は未知

《解説》 皮下注射をするインフルエンザワクチンではなく、鼻粘膜に吹き
つけるワクチンをつくるという発想は、20年以上前からあった。
2000年には、効果を高める補助剤として大腸菌毒素をまぜた経鼻ワクチンの治験
がスイスで実施されたが、顔面神経麻痒(まひ)を起こす人が何人も出て、実用化
できなかった。

今回、厚労省研究班が使った補助剤は、米国で他の病気の治療薬として治験が終わり
安全性が確認されている。
これが、新ワクチンを実用化する点で大きな利点だ。

ただ、人の免疫システムは未知の部分がまだ多い。
人に近いサルで実験に成功したとはいえ、実際に人間で使ってみるまでは、どんな
副反応が起きるか分からない。
研究班は2年かけて動物実験でデータを積み上げ、人への治験に進むという慎重な
計画を立てている。

朝日新聞・朝刊 2008.3.12
版権 朝日新聞社


<コメント>
現在のインフルエンザワクチンでさえ効果は十分とはいえません。
とても新しいワクチンが新型インフルエンザに有効とは思えないのです。
問題は罹患患者が多数発生したことを想定したその後の対処だと思われます。
米国では人工呼吸器の備蓄が着実に行われています。
ワクチンの効果に大きな期待をする幻想は好ましくありません。

<関連記事>

【主張】事前対応ワクチン 早期接種の検討を始めよ

新型インフルエンザ」の本格的ワクチンを量産するには半年以上かかる。
このため政府の対策の行動計画と指針では、どこかの国で「新型」が出現した場合、
当面の措置として備蓄中の「プレパンデミック(世界的大流行前)ワクチン」を打ち
始めるよう定めている。

すでに政府は、45億円をかけて人に感染した鳥インフルエンザウイルス
(H5N1タイプ)から1000万人分のプレパンデミックワクチンを作り、昨年3月
以降、原液の状態で備蓄している。

しかし、厚生労働省によれば、そのワクチンもあと2年ほどで効き目がなくなるという。
しかも、原液をアンプル(小容器)に小分けするだけで最低2カ月を要し、投与して
人体に免疫ができるまでには、さらに1カ月が必要だ。「新型」発生後の投与では遅
すぎるとの専門家の指摘もあるほどだ。

そこで提案したい。「新型」はいつ発生してもおかしくないのだから、プレパンデミック
ワクチンを現時点で打ち始めることを検討すべきではないか。
専門家の間ではすでに議論されているし、スイスやフィンランドではその準備を進め
ている。
「新型」の発生を待つまでもないだろう。

いまから計画的に打てば、いざという時のパニックも避けられよう。指針に示された
投与の順番(医療従事者や社会機能維持者らから優先的に接種)の問題点も具体的に
把握できる。

“丸腰”状態で空港や港で検疫に従事している職員にとっても最善の予防策になる。
ワクチンは人に投与する臨床試験(治験)も行い、基本的な安全性は確認されている。
追加の1000万人分のワクチンも製造中である。

インフルエンザウイルスの治療薬(タミフルリレンザ)には、それが効かない耐性
ウイルスの問題がどうしても残る。
その点、人体に免疫を作って感染を予防するワクチンにはそうした問題はない。

ただ、インフルエンザワクチンの場合、できた免疫は半年しか持たない。
「新型」がH5N1以外のタイプだと効果はない。すべての国民に投与できる体制も
まだ整っていない。これらの問題点も踏まえながら、投与を始めるよう検討を進めて
ほしい。
産経ニュース2008.2.25 02:35
http://sankei.jp.msn.com/life/body/080225/bdy0802250236000-n1.htm


<関連サイト>
NHKドラマに触発されて新型インフルエンザ関連情報を収集する
http://zen.seesaa.net/article/78200910.html
(H20年1月12日、13日にNHKで放送された特別番組内容が紹介されています。)


発生前のワクチン接種検討 新型インフル厚労省
http://blogs.yahoo.co.jp/barry_guiler/40394089.html
(ブログですが、きちんと考案をされていて感心します)


医療専門のブログは別にあります。
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科専門医向けのブログです)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)