再生医療・足の動脈硬化

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自分の骨髄細胞を下肢筋肉に移植 患者の7割で血管再生

動脈硬化によって足の血管が詰まる閉塞(へいそく)性動脈硬化症の患者が糖尿病
などの増加に伴って増えている。
ひどくなると既存の治療法では対応できず、足を切断しなければならないことも
ある。
山口大学医学部の浜野公一教授は「治療の選択肢がない人に病巣部の周辺に新たに
血管を作らせる再生医療を行えば、一定の効果があることがわかってきた」と言う。

どのような症状が出るのですか。
「骨盤内を通る腸骨動脈から足の付け根周辺にある大腿(だいたい)動脈が詰まる
と血液が流れなくなるので歩くときに痛みが出ます。初めは100メートルくらい
歩くとふくらはぎが痛くなりますが、少し止まって休んでいるとまた歩けるように
なります。
症状が軽いうちは放っておいても問題ありませんが、ひどくなると治療しなければ
なりません」

治療法は。
「まず血液を流れやすくしたり、小さな血管を広げたりするような薬で治します。
それでもうまくいかないときは血管が詰まっている部分を迂回(うかい)するように
上と下の血管をつなぐバイパス手術や、太ももの付け根から小さな風船を入れて
病巣部を広げ、かご状のものを入れるステント治療をします」

どんな場合に再生医療を実施するのですか。
「ひざ下の細い血管が詰まると、潰瘍ができたり、じっとしても痛みが出たりして
日常生活が送れなくなります。
バイパス手術ができればよいのですが、病巣部を迂回する血管があまりに細いなど
の理由で見つからないときは、最終的な手段として再生医療を行います」

具体的には。
「患者の腰あたりにある骨髄から血液を600mccほど採取し、遠心分離にかけ
て幹細胞などを含む単核球という細胞を集め、下肢の筋肉60カ所くらいに
約0.2ccずつ注射します。治療は4時間程度で、翌日には歩いて帰ることが
できます。
潰瘍や痛みがよくなるには、1週間から10日かかります。当院は単独で9例、
バイパスと併用で16例実施しました」

「骨髄から血液を採っているので麻酔をしなければなりませんが、腕の静脈から
血液を採取すれば麻酔の必要はなくなります。当院も将来は静脈から採取する計画です」

効果は。
「閉塞性動脈硬化症は7割くらいの人には効くのですが、残る約3割の人にはあまり
効果がないことがわかってきました。高齢者や糖尿病、腎機能が悪くて透析している人
にはあまり期待できません。血管の再生能力が低いので、効果があまり出ないのでは
ないかと考えられます」

ほかに足の血管が詰まる病気はありますか。
「炎症が起きて手足の血管が詰まるバージャー病という難病があります。20歳から
40歳の男性でへビースモーカーに多く見られ、足の指先や手に潰瘍ができて痛みを
伴います。バージャー病の患者に単核球を移植する再生医療を行うと、約9割の人が
良くなることがわかってきました」


日本発の治療法 国内で500例以上

浜野教授は、患者の骨髄を移植する「自己骨髄細胞移植」という再生医療を開発し、
1990年11月に世界で初めて実施した。
現在は高度先進医療として全国の17医療機関で500例以上の患者に実施されている。
当初は移植した細胞が骨になるのではないかなど
疑問視する声もあったが、今では安全性と効果はほぼ認められている。

自己骨髄細胞移植は心臓病の患者に対しても山口大学で世界で初めて実施された。
だが、日本では規制が厳しすぎるなどの理由で普
及せず、現在では欧米や韓国などで広く実施されるよ
うになっている。


<参考サイト>
閉塞性動脈硬化
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/Sick/sick9.html
閉塞性動脈硬化症は、足の血管の動脈硬化がすすみ、血管が細くなったり、つま
ったり
して、充分な血流が保てなくなる病気です。
そのため、血液の流れが悪くなり、歩行時に足のしびれ、痛み、冷たさを感じ
ます。
さらに進行すると、安静時にも症状が現れることがあります。
(国立循環器病センターのサイトです)

閉塞性動脈硬化症-Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%89%E5%A1%9E%E6%80%A7%E5%8B%95%E8%84%88%E7%A1%AC%E5%8C%96%E7%97%87
実験的治療:血管新生を促進する為に、造血幹細胞移植が試みられている。
骨髄細胞、末梢幹細胞(PBSCT : peripheral blood stem cell transplantaion)を
患部に数十カ所にわけ注入する。
CD34陽性細胞を特に純化させている施設もある。また血管新生を促すホルモンを産生
させる遺伝子(HGF, VEGF)を筋肉注射して血管の誘導をはかる治験も行われている。

閉塞性動脈硬化
http://www.kaken.co.jp/mamechishiki/aso/
(イラストでわかりやすく説明しています)


<番外編>
[知の最前線]京大附置研究所・センターの人々(14) 免疫学・血液学 
長澤丘司教授(46)・・・再生医科学研究所(左京区

白血病の骨髄移植簡単に

難病の治療につながる可能性を信じ、基礎研究に取り組む長澤教授 血液を構成
する血液細胞は、主に赤血球と白血球、血小板からなります。このうち、赤血球
は体の隅々まで酸素を運び、白血球は細菌やウイルスから体を防御する、血小板
は傷ついた血管を素早く修復する――と、それぞれが大切な役割を担っています。

血液細胞が毎日、生み出される場所が、骨髄中の造血幹細胞です。
私たちの研究チームは、血液細胞の生産を調節する「CXCL12」というたんぱく
質を、13年前に見つけました。
このたんぱく質が働かなくなると、骨髄から造血幹細胞が未成熟なまま血液中に
しみ出し、血液細胞がうまく生産できなくなります。

こうした研究成果が今、白血病の骨髄移植治療に応用されようとしています。
移植では直接、骨髄から造血幹細胞を抜き取ることが必要ですが、肉体的に負担が
大きく、約1週間の入院も必要で、移植の普及を妨げる原因になっています。
そこで、「CXCL12」の働きを阻害する薬物を注射すれば、献血のように、
簡単に造血幹細胞を回収できるのでは、というわけです。

研究成果はさらに貧血やエイズ動脈硬化などの治療にも役立つ可能性があります。
小さな発見が思いもつかない様々な分野で応用されていく。これこそが基礎研究の
大切さと面白さだと思います。

[知の最前線]京大附置研究所・センターの人々(14)
http://osaka.yomiuri.co.jp/kyodai/ky80301a.htm?from=ichioshi
(2008年03月01日 読売新聞)

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