新型コロナ治療の最前線

医療最前線、伝えたいことは 

国立国際医療研究センター・ 忽那(くつな)賢志医師)

感染の拡大が止まらない新型コロナウイルス

普通のかぜと見分けがなかなかつかないが、どんな時に感染を疑えばよいのか。

緊急事態宣言がでて外出自粛が呼びかけられているが、患者の増加は抑えられるのか。

 

■ 高まる陽性率、医療崩壊始まってる 流行地域もっと検査を、外出自粛徹底して

――感染者が日ごとに増えています。

うちの帰国者・接触者外来でPCR検査を受けて陽性だった人の割合は3月末は5%前後だったが、いまは約20%。

陽性率は高まっている。

診断はなされていないものの、新型コロナウイルスに感染している人は東京都内には相当いるといえる。

 

――患者の受け入れはできていますか。

つい先日、50施設から受け入れを断られたという患者が来院した。

この方は軽症だったが、その少し前には25施設から断られたという重症患者も受け入れていた。

どこもベッドがいっぱいと言われたそうだ。

うちも結核患者むけの病棟をまるごと新型コロナウイルスの患者に充てているが、お断りせざるをえない時もある。

医療崩壊は始まっている。

 

――どんな時に感染を疑えばよいでしょうか。

例えば、現在感染者がごくわずかな地域に住み、のどが痛いといった場合は、きっとかぜだろう。

東京都内の人ならば、新型コロナウイルスの可能性がある。

症状が持続するかどうかが一つのポイントだ。

ただし数日たたないとわからない。

 

――かぜやインフルエンザとどう違いますか?

発熱やせき、のどの痛み、鼻水といったかぜのような症状で始まるのは同じだ。

インフルエンザは数日でよくなることが多いが、だらだら症状が続くのが新型コロナウイルスの特徴だ。

1週間くらいかぜの症状が続き、自然によくなる人もいる。

中には2週間くらいだらだらと症状が続く人もいる。

 

1月のころは気にしていなかったが、3月中旬ごろから味覚・嗅覚の異常がある患者さんもいると気づくようになった。

3割ほどにみられる。

 

――悪化する人はどんな経過をたどりますか。

発症から7~10日目に悪くなる人が多い。

肺炎になり呼吸状態が悪くなる。

そのあたりまで慎重にみたほうがいい。

実際にうちの病院でも、人工呼吸器を着けた後に、残念なことに亡くなった方も数人います。

高齢で基礎疾患のある方でした。

 

――軽症者は宿泊施設や自宅で療養ができるようになりました。

発症して陰性になるまで20日程度、症状がない人でも9日ほどかかる。

PCR検査で2度陰性でないと退院できないこともあり、入院が長引き、ベッドがなかなか空かなかった。

特定の病院がパンクしないよう、国に要望してきた。

軽症者が宿泊施設や自宅で療養するようになったことは評価するが、感染が拡大するスピードに追いついていない。

 

――PCR検査数が少ないという批判があります。

3月時点では、少なすぎるとは思っておらず、適切に検査されていると感じていた。

だが今、東京のように流行している地域では、もっと検査を増やさねばならないだろう。

検査していないが感染している人から周りに広がるかもしれない。

感染者を確定し、さらなる広がりを防がねばならない。

検査する病院が限られていることが問題なので、検査をする施設を増やす必要がある。

流行していない地域でも一律に増やしたほうがいいという意味ではない。

流行しているかどうかによって、地域ごとに考える必要がある。

 

――国や都に求めたいことはありますか。

医療現場に防護服が足らないことも大きな問題だ。

丸腰で我々は患者さんを診ることができない。

最優先して供給してほしい。

コメント;

開業医の私もまったく同意見です。

現場(第一線)の声が政策決定者に届かない、かつ現場の声を聞こうとしない、現場無視で政策を決定していくのが現状です。

官僚も現場を把握しないまま、机上の数字と睨めっこしています。

唐突に降って湧いたような「9月に新学期」という案で、現場の意見がまったく無視されています。

日本医師会感染症危機管理対策担当の「お話し」の内容も医療現場と乖離した謂わば頓珍漢な内容です。

少なくとも、医師会員が毎日新型コロナに怯えて診療している現場での苦悩を代弁しているとは、とても思えない能天気さです。

新型コロナ対策も他国に学ぶという姿勢が見られません。

医療と経済では、明らかに経済に軸足を置いています。

感染の収束が少しでも早まれば経済復興は早いはずです。

感染拡大防止策は国や地方自治体の仕事です。

しかし何よりも、死亡者数を一人でも減らすことを最重点政策とすべきです

(スピード感のあるECOMOや人工呼吸器の充実、PCR検査や抗体検査の普及拡大、重症者や軽症者の受け入れ先やの確保、患者受け入拒否対策などは医療関係者というよりは、多くは政策に関する事項なのです)

 

――緊急事態宣言の後、収束に向かうでしょうか。

外出自粛の効果がわかるのには、2週間かかるとされるので、少なくともそれまでは患者数の増加は続くだろう。

このウイルスの感染拡大は、人と人の接触を断てば抑えられるとわかっている。

しかし宣言が出てもみんな、意外と外に出ている。

どこかひとごととみている人がいて、緊迫感がない。

2週間後に効果が本当に見えるのか不安だ。

感染が収まらなければ、オーバーシュート(爆発的な感染拡大)する。

イタリアのように人工呼吸器を使えば助かる人を助けることができず、多くの方が亡くなる事態につながりかねない。

不要不急の外出を控えて、家にいて欲しい。

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2020.4.19

 

<関連サイト>

新型コロナの症状・年代別、基礎疾患別致死率

https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/1000