突然の過呼吸

突然の過呼吸、焦らずに 不安や緊張で年齢問わず発症

過呼吸」と聞くと、テレビドラマや映画でみるように、ショックを受けた若い女性がなるものというイメージを持つ人が多いかもし「れない。

だが年齢や心身の状態を問わず、症状が表れる場合がある。

一時的なもので治まる場合も多く、対処法を知っておくと過度に慌てずにすむ。

 

「朝起きてテレビを見ていたら突然息が吸えなくなった。このまま呼吸ができずに死ぬのかと怖くなった」。

ある女性(69)は振り返る。

しびれやめまいも併発したため、夫が救急車を呼ぶ事態になった。

診断は過換気症候群

女性は「今まで一度もなったことがなかった。まさか・・・」と驚く。

 

過換気症候群とは不安や緊張などから息を何回も激しく吸ったり吐いたりする過呼吸の状態になり、血液中の二酸化炭素(CO2)濃度が低くなって様々な症状が出るもの。

息をしにくい、呼吸が速くなる、胸が痛い、めまい、動悸などの自覚症状が挙げられる。

血液がアルカリ性に傾いて血管が収縮し、手足のしびれや筋肉のけいれんが起きる場合もある。

 

子供や若い女性だけでなく、中高年でも年齢に関係なく発症することがある。この女性も「症状が出たのはリラックスしていた時だったが、少し前に夫が手術を受けたので、心身が疲れていたのかも」。

過呼吸は神経質な人、不安症の傾向がある人、緊張しやすい人などで起きやすい。

 

時間がたつと自然に落ち着く例が目立つ。

多くは一時的と知っておくと慌てずにすむ。

気持ちを落ち着かせ、呼吸を整え、特にゆっくり吐くのを意識するよう助言。息苦しさを感じ始めた段階ではアメをなめるなどして注意をそらすのもひとつの方法。

周囲の人は話しかけて安心させてあげてほしい。

腹式呼吸に近づけるため、座って前かがみの姿勢を取ったり、うつぶせに寝たりするのもよい。

 

過呼吸の対処法のひとつとして、以前は紙袋を口にあてて呼吸をし、自分が吐き出した二酸化炭素を取り込む「ペーパーバック法」が知られていた。

ただ呼吸器学会によると、血液中の酸素濃度が低くなりすぎたり、二酸化炭素の濃度が過度に上昇したりする可能性があるため、要注意だという。

コメント;

医師の監視のもと、血中酸素濃度を測定しながらなら何ら問題ありません。

血中濃度は指先にセンサーを装着するだけで簡単に出来ます。

紙袋も密閉状態でなく、一定の切り込みを入れておくことは、いわば常識です。

両手で鼻と口を覆って呼吸するのも紙袋が要らない簡便な方法です。

 

過換気症候群の多くは精神的なストレスが背景にある。

ただ身体の病気が原因で過呼吸になることもある。

初めて発症したときや持病がある場合は内科を受診する。

息苦しさの原因となる病気には呼吸器疾患のほか、心不全などの心疾患や糖尿病、脳腫瘍などがあるという。

 

精神的なものが原因の場合、緊張から単発で生じる急性型のほか、慢性的に繰り返す例もある。

急性型では発熱や入浴、激しい運動といった体にストレスのかかる体験がきっかけになりうる。

慢性型はパニック障害などが関係する場合がある。

パニック障害患者のおよそ半数は、過呼吸を経験したことがある、という専門医もいる。

 

パニック障害の症状のひとつに、電車やバス、人混みなど逃れられない場所に対する恐怖心がある。

「また苦しくなったらどうしよう」という不安が再び過換気症候群を起こすこともある。

症状を繰り返す場合は心理的な背景に目を向ける必要がありそうだ。

 

  ◇  ◇

 

マスクでの口呼吸 原因の場合も

コロナ禍でマスクをしての生活が日常となっている。

マスクをしても通常、同じように呼吸はできる。

ただ、息が吸えていないような感覚によって呼吸が浅くなり、結果的に過換気症候群を引き起こすことがある。

 

過換気症候群を起こしやすいパニック障害の患者にとって、マスクの着用は閉塞感を強めてしまう場合と、顔が隠れるために安心感を与える場合とがある。

ただコロナ禍によるこれまでと違う生活様式が知らず知らずストレスを強く感じさせる可能性は否めない。

 

マスクをすると、楽に感じる口呼吸になりやすい。

口呼吸では浅くて速い呼吸になりがちで、過呼吸や脳貧血を引き起こすこともある。

特に息苦しさを感じるときは注意したい。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・夕刊 2020.10.28