コロナ解明、高い壁 ②
ヒトに近い感染源 焦点
ウイルスがどこから来たのか探ることは、今回のパンデミックがどうやって起きたのかを解明するだけでなく、リスクのありかを知り、次のパンデミックを予防することにつながるとされる。
出発点がコウモリなか確かめるだけでなく、よりヒトの生活圏に近い、中間宿主と呼ばれる直接の感染源を特定することも求められている。
SARSやMERS(中東呼吸器症候群)のウイルの場合、中国の市場で売られていたハクビシンから99.8%、農場で飼われていたヒトコブラクダから100%、遺伝子配列が重なるウイルスがそれぞれ見つかるなどし、中間宿主だとされている。
新型コロナの場合、全身が硬いウロコに覆われた哺乳類のセンザンコウが中間宿主ではないか、という説がある。
香港大などのチームが中国の税関で押収されたセンザンコウの血液などから、新型コロナと似たウイルスを見つけた。
ただ、新型コロナとの一致率はRaTG13Rよりも低いという。
どのような経路を新型コロナがたどってきたのかは、まだよくわか
っていない。
ヒトに感染すると病気を引き起こすコロナウイルス
は6種類見つかっていた。
SARSとMERSのウイルスは重篤な症状を引き起こすが、ほかの4種類はいわゆる「かぜ」のコロナウイルスで、多くの場合、感染し発症しても軽症ですむ。
7番目が新型コロナだ。
ウイルスとして見れば性質はほとんど同じ。
ヒトに免疫があるかないかの違いが大きい。
別の動物から「種の壁」を超えて感染したウイルスには免疫がなく、時に重篤な症状が引き起こされる。
さらにヒトからヒトヘ感染するようになれば、パンデミックにつながる。
ただ一般にウイルスは、感染を繰り返すことで、どんどん弱い症状しか引き起こさないように変化していくと考えられている。
宿主とする生物が重篤な症状で死んでしまえば、次の宿主に感染して数を増やすことができなくなるからだ。
いわゆる「かぜ」を引き起こす4種類のコロナウイルスも、過去にヒトに感染するようになり、徐々に今の形になっていった可能性が
あるという。
新型コロナが5種類目の「かぜ」コロナになるかもしれないし、治療薬やワクチンで制圧できるのかもしれない。
ただ、それが5年先になるのか、50年先になるのか、まだ誰にもわからない。
ウイルス起源巡り国際対立
「ウイルスの起源に関する研究を政治化している人々がいる」
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は11月の会見でこう苦言を呈した。
念頭にあったのは米中の対立だ。
4月、トランプ政権が根拠を示さぬまま武漢ウイルス研からのウイルス流出説を流しだのに対し、中国側は「中国を推定有罪とする政治的な動き」(外務省報道官)と反発。
WHOの調査受け入れを表明しつつも、米欧主導で調査が道むことを警戒し「時期尚早」と留保をつけてきた。
逆に中国では、新型コロナの起源が欧州などにある可能性を示唆する一部の論文をメディアが取り上げるなど、「中国由来説」を押し返すような動きもある。
しかし、WHOの緊急対応責任者マイク・ライアン氏は11月の会見で「この病気の源が欧州の哺乳類
だった証拠はない」とし、「発生源が中国ではないというのはかなりの臆測だ」と釘を刺した。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.12.7
<関連サイト>
コロナウイルスの宿主