コロナ解明、高い壁 ①

コロナ解明、高い壁 ①

コウモリ由来?科学者注目 「他の動物の可能性」見方も

世界を揺さぶる新型コロナウイルスのルーツや特性を、科学者たちはどう解き明かそうとしているのか。

手探りが続く。

 

太陽の光冠(コロナ)のような突起を持つコロナウイルス

その起源をたどる上で科学者が注目するのがコウモリだ。

世界各地に生息する哺乳類で、様々なウイルスを宿していることが多い上、行動範囲が広いために拡散させやすいと言われる。

 

SARS重症急性呼吸器症候群)ウイルスを研究する武漢ウイルス研究所のチームも、コウモリに注目。

RaTG13の銅山から約170キロ離れた夕陽郷という地域で調査を続けた。

 

少数民族イ族が暮らす村にある「燕子洞(ツバメの穴)」。

直径10メートルほどの縦穴に、多くのコウモリが生息する。

チームは2015年、燕子洞と、約6キロ先にある別の洞窟の間にある村々の住民の血液を調べた。

12~80歳の218人の血液を分析した結果、40~50代の男女6人からSARSウイルスに近いウイルスヘの感染歴があることを示す抗体が見つかった。

この地域にSARSの流行は及んでおらず、6人も症状が出た覚えはないと答えた。

 

血液採取に協力したKさん(80)は「若い頃は洞窟でコウモリを捕まえた。人をかむこともあるが、怖くはない」と話す。

 

研究チームは18年に発表した論文で、住民がコウモリと日常的に接触する村の状況などから、ウイルスがコウモリから直接ヒトに感染した可能性を指摘した。

 

チームの中心にいたのはS氏だ。

夕陽郷やRaTG13が見つかった銅山などコウモリを求めて各地を訪ね歩く姿勢から学界

で「バットウーマン」と呼ばれた。

膨大な検体の分析などに基づき「SARSの起源はコウモリ」とした研究成果は学会の定説となり、19年には米国の微生物学アカデミー会員に選ばれた。

 

新型コロナウイルスもコウモリ由来なのか。

S氏は今年9月、北京で聞かれた研究会で「可能性はあるが、他の動物の可能性も排除できない」と慎重な姿勢を崩さなかった。

そしてSARSの起源の解明に8年を要したとし、「永遠に探し当てられないことだってある」と、挑む壁の厚さを強調した。

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2020.12.7