(新型コロナ)症状、肺炎だけではない? (2)
(新型コロナ)症状、肺炎だけではない? (2)
免疫暴走し血管炎症 血栓でき悪化リスク
臓器の炎症にかかわっているのが、「サイトカインストーム」と呼ばれる免疫の暴走だ。
サイトカインは細胞から分泌され、免疫や炎症を調節するたんぱく質で、他の細胞に命令を伝える。
ウイルスの侵入によって分泌されたサイトカインが増えすぎて嵐(ストーム)のように暴走すると、正常な細胞も攻撃してしまう。
これが、新型コロナ重症化の原因と指摘されている。
サイトカインストームが起こる状況では、血管が炎症を起こすなど傷ついて、血栓ができやすい。
また血栓は、ウイルスが直接、血管の細胞にあるACE2にくっついて侵入し、作用することでもできると見られている。
最近注目されているのが、こうした現象により血栓ができ、血管が詰まり容体が悪化するリスクだ。
ドイツの研究チームが5月に米内科学会誌に発表した論文によると、新型コロナにより亡くなった12人の病理解剖を行ったところ、7人に深部静脈血栓塞栓症があった。
4人は肺塞栓症が直接の死因だった。
オランダの研究チームが4月に欧州専門誌に発表した論文では、ICU(集中治療室)に入院中の患者184人中、31%に血栓症が確認されたという。
研究チームは「31%というのはとても高い割合で、ICU患者への血栓症予防策の必要性を強く示唆する結果だ」と指摘している。
こうした報告を受け、厚生労働省は5月18日、医療従事者向けの「診療の手引き」を2ヵ月ぶりに改め、血栓症リスクに注意するよう盛り込んだ。
また、血液中に血栓ができているかどうかを判定する「Dダイマー」の数値が正常値を超えている場合、血液が固まるのを防ぐヘパリンなどを使った治療を勧めた。
海外では新型コロナ重症患者の2、3割に血栓症が見られるという報告もある。
新型コロナ感染者でDタイマーの値が急に高くなるような症例があり、ヘパリンを積極的に使用する病院もある。
国内での血栓症の発症状況については、いまだ不明な点が多い。
それほど重症ではなかったのに、突然死したような場合は、血栓症が原因となっ
ている可能性は否定できない。
実際、脳卒中や循環器病を専門とする医師らは、危機感を強めている。
コロナによって脳梗塞を起こしたという事例はまだ国内で確認していない。
ただ、コロナ治療中に発症した脳梗塞に対しカテーテル治療をした患者で、治療中に別の血管に新たな血栓が生じたという報告もあり、警戒が必要だ。
心筋梗塞の多くは、突然症状が表れ、突然死の原因になる。
日本ではコロナによる死亡者が少ないこともあり、コロナとの関係の解明はこれからの課題だが、心臓病の人は感染に気を付けたい。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.6.5