がん検診を受けよう

がん検診を受けよう

新型コロナウイルス感染症が病院経営に与えた影響を調べた調査がある。

全国の約550の大病院が調査対象だった。

患者数は全体としては回復基調にあるものの、がん患者の入院件数の減少が目立った。

とくに、胃がん、肺がん、大腸がんでは、4月、5月、6月と入院患者の減少幅が拡大している。

 

なかでも、入院患者の減少は胃がんがもっとも顕著で、3月、4月、5月の前年同月比は、それぞれ、マイナス1.2%、マイナス7.2%、マイナス11.6%となった。

そして、6月はなんとマイナス19.6%と2割近くも減っている。

6月の減少は大腸がんでマイナス9.8%、乳がんでマイナス8.3%、肺がんでマイナス8.2%だから、胃がんの減少幅が突出しています。

 

国立がん研究センター中央病院や東大病院でも、4月~10月の胃がんの手術件数は昨年の同時期に比べて4割以上減っている。

大規模な調査はないが、東京の大病院ではどこでも同じような事態が進んでいると危惧される。

 

がんは、痛い病気、苦しい病気というイメージがあるようだが、これは亡くなる直前、せいぜい1カ月以内のことだ。

かなり進行しても、がんは症状を出さないことが普通だから、早期がんではまず体調に異変を感じることはない。

 

早期がんは症状を出さないので、体調が万全でも定期的に検査するしか発見することはできない。

国が推奨するがん検診では、胃がんの他、肺がん、大腸がん、女性の乳がん、子宮頸がんが検査の対象だ。

たとえば、大腸がん検診は「便潜血検査」、つまり検便だから、コロナの感染リスクはほとんどない。

一方、胃がん検診、とくに胃カメラでは検査する医師と検査を受ける人との「距離」が近くなるため、感染リスクを感じる人も多いと思われる。

 

このままでは来年以降、進行がんが増えてしまう。

ぜひ、がんの検査や検診を受けていただきたいと思う。

 

執筆 東京大学病院・中川恵一准教授

 

参考・引用一部改変

日経新聞・夕刊 2020.12.9