「新型コロナのmRNAワクチン」②

「新型コロナのmRNAワクチン」②

デルタ株に効く? 安全性は? 「新型コロナのmRNAワクチン」

「mRNAワクチン」に入っているのは、ヒトのmRNAではなく、新型コロナウイルスのタンパク質の情報の一部に基づいて人工的に合成したmRNAだ。

 

ウイルスのどの部分の情報かというと、ヒトの細胞に侵入するときに必要なウイルスの表面の「突起」。

この情報をもったmRNAを脂の膜で包んだものが新型コロナウイルスのmRNAワクチンなのだ。

 

ワクチンが体の中に入ると、タンパク質の設計図であるmRNAが細胞の中のリボソームにくっつくことで、ウイルスの突起がたくさん作られる。

そうして出来たウイルスの突起を細胞の外で待ち受けているのが、異物をやっつけるために働くさまざまな「免疫細胞」だ。

 

免疫細胞の一種である「B細胞」は、突起にくっつく「抗体」を作り出す。「樹状細胞」はウイルスの突起を取り込み、突起の情報を「キラーT細胞」や「ヘルパーT細胞」に渡す。

情報を受け取った「キラーT細胞」はこの突起が入り込んだ細胞を攻撃して殺すようになる。

一方の「ヘルパーT細胞」は指令を出して、B細胞やキラーT細胞を活性化させるのだ。

 

免疫細胞の準備ができたところに本物のウイルスがやってくると、B細胞が作っておいた抗体がウイルスの突起にくっつく。

すると、ウイルスは細胞の中に入れなくなる。

万が一、ウイルスが細胞に侵入しても、キラーT細胞が感染した細胞を素早く排除する。

 

mRNAワクチン研究の第一人者で、ワクチン開発にも携わっている東京大学医科学研究所の石井健教授は、ワクチンの効果の高さの理由をこう説明する。

 

「mRNAを体に入れて設計図通りにウイルスのタンパク質を作らせることで、ウイルスに対する免疫と同じものが全部作れるのです。抗体だけではなく、ヘルパーT細胞やキラーT細胞という、ウイルスをやっつける細胞を強く誘導できることが大きいと考えています」

 

例えばインフルエンザで使われる「不活化ワクチン」の場合、ウイルスの抗原を体に入れるだけで、この2つのT細胞の働きは強く誘導できない。

そのため、ワクチンの有効率も30~60%とされている。

mRNAワクチンの効果の高さはこのT細胞の働きにあると考えられるのだ。

 

参考・引用一部改変

サイエンスZERO NHK」2021.8.23

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/86304