手足口病

手足口病は子どもの夏かぜの中では、どちらかという軽い部類に入ります。
熱もヘルパンギーナみたいには高くなりません。
しかし中には油断できない場合もあります。
夏休みになって、これらの夏かぜは下火になっていますが、今年は大人でかかられた症例
が目立ちました。
ちょっとタイミング的には遅いかも知れませんが、夏休みのない保育園ではまだまだ流行
しています。

夏、子どもに流行する「手足口病」 合併症に油断禁物

毎年夏になると、子どもを中心に、手のひらや足の裏、□の中に発疹(ほっしん)ができる
手足口病」が流行する。
ほとんどが1週間から10日程度で自然に治るが、まれに危険な合併症を起こすこともある。
今年の発症数は例年よりもやや多めに推移している。

手足口病はウイルスによる急性の感染症で、3~6日の潜伏期間を経て発症する。
4歳くらいまでの幼児を中心とした病気だが、10歳前後の学童でも流行することがある。
毎年5月上旬から徐々に増え始め、幼稚園や小学校が夏休みに入るころにピークを迎える。

過去2倍の1.5倍 高熱やひどい頭痛に注意

今年の7月第3週までの累積症例数でみると、過去2年に比べて約1.5倍。
国立感染症研究所感染症情報センターの安井良則主任研究官は「盆明けから夏休みの終わり
ごろまでは、発症可能性の高い時期が続くとみたほうがいい」と説明する。

主な症状は、ロの粘膜や手足にできる水痘(すいほう)性の発疹。
大きさ2~3ミリで、ひじやひざ、尻などに広がることがある。
痛みやかゆみはあまりない。
発症初期には38度前後の熱が出ることもあるが、数日で自然に治まる場合がほとんど。
多くは熱冷ましなどの対症療法で十分にしのげる。
 
ただ、まれに深刻な合併症を起こして重症化することがあるので油断は禁物。
国内では1997年、手足口病から重い神経症状や死亡にまで発展したケースが複数あった。
マレーシアや台湾でも急性脳炎による死亡例があるほか、中国では今年五月、乳幼児に手足口病
が流行し、30人以上の死者が出たと報告された。

手洗いで予防を 髄膜・脳炎の危険

なおやこどもクリニック(東京・江東)の坂口直哉医師は「高熱が3~4日以上続く場合は慎重
な対応が必要だ」と指摘する。
ひどい頭痛や嘔吐(おうと)にも気をつけたい。

原因ウイルスは、主に「エンテロウイルス71(EV71)」と「コクサッキーA16
(CA16)」の2種類に分類される。
どちらも腸管の中で増える性質のある「エンテロウイルス の仲間で、発疹などの症状はよく
似ているため、詳しい検査をしないと区別は難しい。
 
これまでの症例から、EV71に感染した場合に中枢神経系での合併症の発生率が高く、髄膜炎
や急性脳炎につながる危険があることが分かっている。
安井主任研究官によると「EV71は3年おきに多くなる傾向がある」。
前回の流行は2006年だった。
一方、CA16の感染では心筋炎の発症例がある。

ウイルスは感染者の鼻やのどの分泌物や、便の中に多く含まれる。
口からうつるほか、接触によっても感染する。
発疹などの症状が治まった後も、ウイルスが3~4週間にわたって便中に排せつされ続け、患者
が長期間にわたって感染源になることがある。

有効なワクチンはまだ実用化されていない。
予防が第一の対策となる。
乳幼児のおむつを交換した後には念入りに手を洗い、感染を広げないよう心がけよう。
汚れた服をこまめに洗濯することも有効だ。
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出典 日経新聞・夕刊 2008.8.5
版権 日経新聞

<参考サイト>
手足口病
http://www2.starcat.ne.jp/~kanocl/child/teashi.htm
国立感染症研究所 感染症情報センター
http://idsc.nih.go.jp/disease/hfmd/index.html
(合併症の部分のみ紹介します)
合併症:
下痢を伴うことがある。整腸剤程度の投与を行うことはあるが、食事指導を行えば十分で
自然回復する。
まれではあるが髄膜炎の合併があり、経過中の頭痛と嘔吐には注意が必要である。
EV71感染の方が、中枢神経合併症の発生率が高い。CA 16 感染では心筋炎合併例の報告
がある。
  
手足口病の流行中に、急性脳炎などにより急死した小児例が、マレーシア(1997年)・
台湾(1998年)などで見られている。
わが国でも1997年に、手足口病の経過中に死亡あるいは重篤神経症状を合併した症例が
複数の医療機関で経験され、日本感染症学会、日本小児科学会、日本小児神経学会などで
報告され、国立感染症研究所ではそれらのウイルスの分析を海外例と併せて行っているが
(Jpn J Inf Dis 52:12-15, 1999)、詳細な解明についてはさらに検討を続ける必要がある。
 
HFMは基本的にはポピュラーな軽症の疾患である。目下のところこれらの重症合併症の発生
は稀なことであり、HFMになったすべての患者に厳重な警戒を呼びかける必要はないと
思われる。
しかし、あまり軽く考えすぎることなく、発疹の初期2-3日の症状の変化には注意すべき
である。
ことに、元気がない、頭痛・嘔吐を伴う、高熱を伴う、発熱が2日以上続く、などが見
られた場合は慎重に対処する必要があろう。


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