慶大、iPS細胞で神経難病の治療に成功、マウスで確認

慶応大の岡野栄之教授らの研究グループは新型万能細胞(iPS細胞)を使って、神経
の難病になったマウスの治療に成功した。
マウスの体細胞からつくったiPS細胞を培養して移植したところ、欠けていた神経細胞
の一部が再生して歩けるようになったという。
同様の病気は日本人の女性にも増えつつあり、将来は人間の病気治療にもつなげたい考
えだ。

今回治療に成功したのは「ミエリン形成不全症」という難病。脳から脊髄(せきずい)へ
つながる細長い神経の周りを鞘(さや)のように包んでいる細胞ができない病気で、脳から
の情報が手足などにうまく伝わらず運動機能が衰え、歩けなくなるなどの障害が出る。
効果的な治療法はまだ見つかっていない。

研究グループはiPS細胞に細胞を増やす物質などを加え鞘の部分をつくる神経幹細胞の作製
に成功、これをマウスの脊髄に移植した。
その結果、後ろ足が麻痺していたマウスが歩けるようになり、鞘の部分も再生していること
が確認できた。

同じ方法によって脊髄が損傷したマウスも治療できたという。
また研究グループは、神経難病の一つである多発性硬化症の治療にも応用できるとみている。
この病気は鞘の部分がはがれ落ちる病気で、最近日本でも20~40代の女性を中心に患者
が増えつつあるという。
慶大は10月から東京大などと共同で神経の難病疾患患者からのiPS細胞作製を始めて
おり、動物実験と平行ぢて人への応用研究も進める考え。
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出典 日経新聞・夕刊  2008.10.27
版権 日経新聞
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竹内敏彦 コペンハーゲンの街並み
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<番外編>
国立機関 「頭良くなる」タンパク質確認 食事・運動で認知症予防も
脳内で分泌され、神経細胞同士のつながり(シナプス)の形成などを推進するとされる
タンパク質が、学習能力や記憶力の向上にも関与していることを、国立循環器病センター
研究所の柳本広二・脳血管障害研究室長らのグループがマウスを使った実験で突き止め、
オランダの医学誌「ブレインリサーチ」で発表した。

柳本室長らは、胎児期に神経細胞の分化や成長を促し、脳の成長後にはシナプス形成を推進
するタンパク質「BDNF」に着目。

遺伝子操作で作ったBDNFの多いマウスと正常なマウスを使い、学習や記憶の能力を
比較した。

縦60センチ、横90センチ、深さ20センチの実験用プールを使い、マウスが泳ぎながら
プール対岸の水中に置いた10センチ四方の足場を見つける所要時間を5日間で比較した。

その結果、最も差が大きかったのは、正常なマウスが2日目で平均111秒だったのに対し、
操作マウスは43秒だった。
取り除いた足場の元の場所を記憶だけで探すテストでも、操作マウスの方が多い回数たどり
着き、「頭の良さ」を発揮した。

柳本室長は「BDNFはアルツハイマー症や血管性認知症の予防にも効果がある。
適正な食事や運動でBDNFが増加するとの報告もあるので、今後、安全で効果的な予防法
の発見ができるかもしれない」と話している。