胸焼け

Uさん(58,女性)は胸やけに苦しんでいる。
特に、夜半に、胸の裏側が焼けつくような感覚で、目が覚めることもある。
横になっても強い刺激で、なかなか再び眠りにつくことができない。
せきもでる。
それがまた、いやな刺激だ。
なぜ、そんなひどい胸やけが起こるようになったの
か、不思議でしかたがない。
 
医師に相談してみて、この胸やけが実は生活の変化に関係していることに気がついた。
子供が独立して、暇になった。
それを契機にパートの仕事に出るようになった。
帰りがいつも遅い。
遅くまで食事を我慢しているので、とても空腹になる。帰りには、スーパーマーケット
で、たくさんの食材を買ってしまう。
値引き商品も多いので、これもあれもと買い物をする。
これらを調理して食べるので、いつも食べすぎだ。
満腹で横になるという生活である。

よくよく考えてみると、いつも、もりもり食べてくれた子供がいない。
にもかかわらず、以前と同じような量の食事を作っている。
このことが問題だ。

Uさんのような病気は、胃食道逆流症と呼ぶ。
健康な人でも、胃から食道に向かってある程度の逆流は起こっているが、症状が出る
ほどではない。
逆流がひどくなる原因は様々だが、生活の習慣によるものが最も多い。

Uさんは夜半に食べる量を減らして、早めに夕食をとるようにした。
胸やけの症状は、きれいに消えた。
不思議なことに、慢性のせきも消えていた。
胃食道逆流症は慢性のせきの原因の一つでもある。
京都大学医学教育推進センンー教授  平出 敦)