ES細胞とiPS細胞

ES細胞への助成解禁へ  オバマ氏、大統領令署名

オバマ米大統領は9日、人体のどんな細胞にも成長できる万能細胞の1種、胚性
幹細胞(ES細胞)の研究を推進するため、連邦政府の助成を解禁する大統領令
に署名した。
 
■ES細胞は受精卵を壊してつくられるため、ブッシュ前大統領は「倫理に反する」
として2001年8月以降、研究を厳しく抑制、議会が2度にわたって通過させた
助成拡大法案にも拒否権を発動した。
オバマ大統領の署名は大きな政策転換で、科学技術重視の姿勢をアピールする狙い
もある。
 
■患者団体などは「停滞してきた米国の再生医療研究を活気づける」と歓迎するが、
前大統領の支持基盤だったキリスト教保守派などからの反発は依然強い。
 
オバマ大統領は演説で「この研究が将来生み出す発見で、米国は世界をリードする」
と強い決意を述べた。
出典 47NEWS
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009030901000836.html


「万能細胞」実用化に弾み=山中教授、日本の態勢強化訴え

■新万能細胞「人工多能性幹(iPS)細胞」の開発者で、オバマ米大統領によるヒト
胚(はい)性幹(ES)細胞研究助成解禁の大統領令署名式に出席した山中伸弥京都
大教授は9日、ワシントン市内で記者会見し、「2つの細胞には同じ能力があり、
実用化に向けてどんどん進むと思う」と語り、医療現場での実用化へ大きな弾みになる
との期待を示した。
 
ホワイトハウスは同日の署名式に細胞関係の研究者を多数招待しており、山中教授は
日本からの唯一の参加者。

■同教授は「科学と科学者を勇気付ける大統領の熱意がひしひしと伝わってきた。金融
危機の中でよく決断してくれた」と述べる一方、「日本も危機感を持って取り組ま
なければ、取り残され、貢献の場が減ることになる」と日本国内の態勢強化を訴えた。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200903/2009031000125
出典 時事ドットコム 2009.3.10


山中教授グループが国内でES細胞研究

■新型万能細胞(iPS細胞)を開発した山中伸弥・京都大教授のグループが、同じ
万能細胞のヒト胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を用いた研究を国内でも始めることが
分かった。
 
■グループの高橋和利助教が13日、川崎市で開かれたシンポジウムで明らかにした。
ヒトES細胞をめぐっては、オバマ米大統領が9日、難病治療に役立つとして、前政権
が制限していた研究助成を解禁する大統領令に署名、米国での研究が一気に進むと予想
されている。山中教授も本格的に参入することで、万能細胞を用いた再生医療の実現に
大きく弾みがつきそうだ。
 iPS細胞の作製や培養は、ES細胞の研究成果を利用しており、研究推進には、
ES細胞との比較が欠かせない。しかし、ヒトの受精卵から作るヒトES細胞の研究は、
国が指針で規制している。山中教授らは毎月、渡米してヒトES細胞の研究を行っており、
「日本でも研究を迅速に行える体制が必要」と訴えている。
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090314-OYT8T00366.htm
出典 読売新聞2009.3.14

ES細胞+化合物=膵臓細胞…糖尿病治療へ期待

■様々な細胞に変化できる、人の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)に、化合物を加える
ことで膵臓(すいぞう)の元となる前駆細胞を大量に作製することに米ハーバード大
成功した。

■この細胞からインスリンを分泌する細胞を作ることにも成功、糖尿病治療への応用が
期待される。
16日の科学誌ネイチャー・ケミカルバイオロジーに掲載される。
 
■同大のD・メルトン教授や長船(おさふね)健二元研究員(現京都大講師)らは、ES
細胞を培養して、将来消化器系の臓器になりうる細胞の塊を作製。

■これに生物活性を持つ5000種類の化合物を一つずつ加えた。
その結果、酵素活性が知られる1種類を加えた時に、膵臓前駆細胞ができることを
確認した。
この前駆細胞を、免疫不全マウスに移植すると、インスリン分泌細胞が生成される
こともわかった。
 
■これまで生体内のたんぱく質(増殖因子)を加え、ES細胞からインスリン分泌細胞
を作った例はあるが、血糖値を劇的に下げる効果は確認されていない。

■長船講師は「インスリン分泌細胞作製の選択肢が増えたことは大きい。化合物を使う
手法は、患者の細胞を使うiPS細胞(新型万能細胞)にも応用できる」と話す。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090316-OYT1T00061.htm
出典 読売新聞2009.3.16

社説:幹細胞研究 多様な戦略で国際競争力保て

■暗いニュースが多い中で、この言葉を聞くとなんだか元気になる。
京都大の山中伸弥教授が開発したiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、日本人にとって、
そんな「呪文」のひとつではないだろうか。
 
■ヤマナカの名前は世界に浸透し、iPSは日本発の技術として定着した。
だが、スタートダッシュの勝利は、多様な戦略なしには守れない。
 
■米国のオバマ大統領は今週、ブッシュ政権が制限していた連邦資金によるヒト胚
(はい)性幹細胞(ES細胞)研究への助成を解禁する大統領令に署名した。
これで米国の幹細胞研究には、さらにはずみがつくだろう。
署名式に招待された山中さんが述べたように、日本は頑張らないと取り残される
恐れがある。
 
■実際、iPS細胞の研究に欠かせないES細胞の論文で、日本は米英に大きく水を
あけられている。
iPS関連研究でも、日本は「1勝10敗」と、昨年の会議で山中さんが述べている。
 
■科学者の間では、日本のヒトES細胞の規制が厳し過ぎ、研究を阻害したとの声が
強い。
ES細胞で経験を積んでいない分、iPS研究のすそ野が広がりにくかったとの
指摘だ。
 
■確かに、ヒトES細胞は受精卵を壊して作るため、通常の細胞にはない厳しい規定
がある。
しかし、ES細胞の持つ倫理問題を回避しようとしたからこそ、受精卵を使わない
iPS細胞が生まれたともいえる。
 
■ただ、これまでの実績を踏まえ、できるところは審査手続きを簡略化する必要は
ある。
文部科学省は近く、簡略化の議論を始めるが、倫理と研究支援のバランスが取れた
ものにしたい。
 
■もちろん、論文の数だけが大事なわけではない。
患者にとって重要なのは、研究をいかに医療に結びつけられるかだ。
 
■患者のiPS細胞から神経などの細胞を作り、再び患者に移植する再生医療への期待
は高いが、安全性確保などハードルが多い。
iPS細胞を利用して病気の原因を解明したり、創薬につなげる研究の方が実用化は
早いと考えられ、両方をにらんだ戦略がいる。
 
■米国では、ヒトES細胞を用いた脊髄(せきずい)損傷治療の臨床研究を国の機関
が承認した。
日本では、幹細胞の基礎研究を臨床に結びつける道筋が整っていない。
これを整備するには、基礎研究は文科省、医療は厚生労働省、産業は経済産業省
いった縦割りを廃する必要もある。
 
■日本は知財戦略が弱く、この分野の人材が少ないとの指摘もある。
日本と海外の特許制度の違いをよく理解した上で、人材の効率的な活用や育成にも
力を入れたい。
 
■iPS細胞を育てる一方で、これに匹敵する日本発の成果を生み出すことも忘れ
ないようにしたい。
それには、基礎研究を大事に育成する体制が肝心だ。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20090311k0000m070138000c.html
出典 毎日jp 2009.3.11
版権 毎日新聞社
<コメント>
この社説の論旨もよくわかりません。
なんだか他人事です。
国会でも取り上げるべき重要な問題と思われるのですが、票に結びつかない内容
というわけでしょうか。
せっかくの山中教授の成果が霞ヶ関に潰されるとしたら、研究者が可哀想です。

想されるのは彼らの米国やシンガポールへの頭脳流出です。
むしろその方が人類にとってもいいのかも知れません。

医療現場でも、厚労省の愚策の結果、大学病院からの教授の流出(エスケープ)の
ニュースが流れています。


イメージ 1

出典 日経新聞・朝刊 2009.3.16
版権 日経新聞

<自遊時間>
最近若い人を診察していて、こちらの説明の際に「了解です」という返事が返って
くることがあります。
この言葉を聞くと何ともいえない居心地の悪さを感じてしまいます。
何故でしょうか。


読んでいただいて有難うございます。
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