がんを抑制すると、寿命が縮む!?

発がんの抑制が、寿命を縮めるメカニズムは

がんはマウスにおいても主要な死因です。
がんの発生を抑制すれば、寿命が延びてもよさそうなのに、がんが抑制されると
早老症状を示し短命となりました。
この皮肉ともいえる結果をもたらした原因はまだ明らかになっていません。
ある学者は、p53が働くと、体のいろいろな組織で幹細胞(分裂能と分化能を持ち、
組織や臓器を維持・再生する能力をもった細胞)の機能が低下するために、その
組織が維持できなくなり萎縮するのではないか考えています。

p53の活性化によりDNAの変異がより効率的に修復され、DNA傷害に起因する腫瘍
発生が抑制される一方で、p53が過剰に活性化すると、DNA傷害を受けた幹細胞の
増殖を過度に抑制するか、あるいは過剰なアポトーシス(細胞死)を起こし、全身
組織をバランスのとれた状態にする機能が早期に失われ、早老症状をもたらした
可能性があります。
 

がんを選ぶか、早老を選ぶかですか

長寿を達成するために重要な要素と考えられるがん抑制と老化現象抑制に関して、
p53が"両刃の剣"となる可能性があります。
確かに健康長寿を達成することの難しさを示すものですが、悲観することではない
と考えます。
がんと老化に共通する根本原因であるDNAの傷害を起こさせない(p53を発動させない)
ことで健康長寿を達成できる可能性があります。
また、がん治療の戦略として既に認識されていることですが、がん細胞を特異的に
殺しながら、幹細胞は保存する方法を確立することの重要性がいわれています。

<参考および引用サイト>
がんを抑制すると、寿命が縮む!?
http://www.tmig.or.jp/J_TMIG/j_topics/topics_1891_1.html

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出典 日経新聞・朝刊 2009.3.1
版権 日経新聞

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