発熱外来

確実に新型インフルエンザの流行は拡大しています。
昨日の夕方、街中のホテルで開催された医学関係の講演会に出席しました。
タクシーで行ったのですが、何だか心配で乗っている間、マスクをしました。

講演会場に入ってしばらくマスクをしていたのですが、周囲を見回してみるとマスクをしている先生など誰一人いません。

何だか恥ずかしくてついマスクをとってしまいました。

私自身、新型インフルエンザに関する認識が毎週変わっています。
外来の発熱患者さんの隔離、A型インフルエンザが陽性で出た場合どうすればいいのか、その際の家族へや職場、学校への感染対策の指導をどうすればいいのか、マスクや消毒薬、タミフルリレンザや簡易試験キットの確保などなど。

通常の診察と並行しながら行わなければならず、悩みはつきません。

今や発熱の患者さんが来院されると院内には緊張が走ります。

本来の最前線は新型インフルエンザウイルスとヒトの間です。
しかし、診療側からみれば最前線は診察室の医師の椅子と患者さんの椅子の間にあります。
患者さんが敵のように見えてしまう自分が情けなくなってしまいます。

さて、意外に思われるかもしれませんが、最前線のわれわれ医師には新型インフルエンザウイルスの患者さんへの対応について何の情報も入って来ません。
厚労省都道府県や市町村、保健所や医師会から何の「正式な」通達もないのです。

患者さん方はそんな実情はご存知ないでしょう。

積極的にアンテナをはって新聞、TV、ネットの情報にしがみついているのです。
誠にお粗末な日本の医療状況、そして全くもって情けない危機管理。
太平洋戦争の最前線の兵士と同じです。
マスクや消毒薬、抗ウイルス剤、検査キット、ワクチンなどの武器や何より重要な正確な戦況の情報や戦略の指示がないのです。

数日前には厚労省から全国の病院の人工呼吸器の数を把握中というニュースが流れました。
これには愕然としました。

これを「泥縄」といわずに何というのでしょうか。


今一番困っているのは「発熱外来」の情報です。

##ベッド数、体制不安の声…新型インフル
厚労省が試算、各自治体対策に課題
ピーク時の新型インフルエンザ入院患者は全国で約4万6400人――。
厚生労働省が28日公表した「流行シナリオ」を受け、各地の自治体は医療体制の整備を進めることになるが、病院のベッド数の不足や、重症患者の受け入れ体制に不安が残るなど課題は山積。

すでに死者が出た自治体などは「早期退院を促すしかない」と悲鳴に近い声をあげている。

医療機関あたりの患者数が全国平均の約19倍で、最初の死者も出た沖縄県では、入院診療が可能な救急病院のベッド(199床)が、すでに100%近く埋まっている。
厚労省のシナリオ通りなら、ピーク時の入院患者は2・5倍の約500人になるため、宮里達也・県保健衛生統括監は「これ以上のベッドの確保は難しい。他の病気の入院患者に早期の退院を促すなど、医療機関に努力してもらうしかない」と困惑の表情。
県は休日や夜間の診療が可能な一般病院があるかどうかの調査も始めた。

ピーク時に約800人の入院が見込まれる名古屋市
市内の病院の空きベッドは約3000あるが、「感染防止措置を取るなら、4人部屋を個室にするなどの対応が必要」(市健康増進課)で、使えるベッド数は下回る可能性が高い。
来月8日、市内の病院関係者を集めた会議を開き、患者受け入れの協力を呼びかける。

発熱外来を持つ病院で計54床の入院病床を用意していた神戸市。
現在は、すべての医療機関で対応しているが、発熱外来以外の病院がどれだけ受け入れ可能か不透明だ。
ピーク時約540人の入院が見込まれ、市地域保健課は「比較的症状が軽い人は自宅療養に切り替えるなどの対応を検討しなければならない」と語る。

東京都は、ピーク時約4600人の入院患者が想定され、受け入れ可能なベッド数は約2万床と十分。問題は医師の数で、妊婦が重症化して人工呼吸器を使う場合、産婦人科医と呼吸器内科医が必要になり、子供であれば小児科医も必要になる。都は「子供や妊婦の患者が集中した場合、医師が対応できるかどうか」としている。

出典 読売新聞 2009.8.29
版権 読売新聞社



##新型インフル死7人に←38歳と60代女性
厚生労働省などは29日、新型インフルエンザに感染した兵庫県と鹿児島県の女性計2人が同日未明に死亡したと発表した。

新型インフルエンザに感染した死亡者は疑い例も含め、国内で7人となった。

兵庫県○○市によると、死亡したのは同県○○市の女性(38)。
てんかんの既往歴があったといい、死因を調べている。

女性は今月27日から39度台の発熱などの症状が出た。
治療薬タミフルを処方され、自宅で静養していたが、29日未明に容体が急変。
搬送先の姫路市内の病院で死亡が確認され、その後の検査で、新型インフルエンザの感染が分かったという。

一方、鹿児島県によると、急性呼吸器不全で死亡した同県○○市の60歳代の女性は、数年前に消化器がんの摘出手術を受けたが、今年に入って肺への転移が見つかっていた。
27日に発熱などの症状を訴え、28日に呼吸困難の症状が出たため、同市内の病院に入院。
その後、感染が確認された。

出典 読売新聞 2009.8.29
版権 読売新聞社

<コメント>
兵庫県の症例ではタミフルを投与していても死亡したということです。
今までの死亡例も抗ウイルス剤は投与されています。
発症後、どの時点で投与されたかという検証は重要です。
しかし、タミフルが有効である(重症化を回避できる)ということは幻想である可能性が高くなりました。
人工呼吸器も限界があります。
鹿児島県の症例は抗ウイルス剤が投与されていたかどうか不明です。
是非、公表していただきたいものです。

厚労省は、死亡例を合併症があったからということで片付けるのではなく、各症例を早急に分析し、医療機関にフィードバックして下さい。

<2009.8.31 追加>
他の新聞にもう少し掲載されていました。

兵庫県○○市の女性(38)の症例
てんかんの既往歴があり、けいれん止めの薬を処方されていた。
障害者福祉施設にもかかっていた。
29日未明に容体が急変→29日午前1時半ごろ、容体が急変し、呼吸が停止。同4時3分に搬送先の病院で死亡が確認された。女性は発熱前日の26日、てんかんの発作をおこしていたという。


鹿児島県○○市の60歳代の女性の症例
タミフル使用。

2例とも遺伝子検査で新型インフルエンザと最終診断されています。
タミフルを服用しても死亡さいたという点は教訓的です。


<自遊時間 アルコール>
クルマ・旅行だけでなく、若年層の「酒離れ」が進行
イメージ 1

http://www.excite.co.jp/News/it/20090805/Markezine_8000.html
<コメント>
おそらく、若者の喫煙も減っているのではないかと思います。
いいことのはずですが、業界はつらいでしょうね。

お酒に関してはこんなニュースもありました。

イメージ 2


出典 日経新聞・夕刊 2009.8.28
版権 日経新聞
<コメント>
アルコールは、害だけではない筈ですが、世の中が「酒は敵」という風潮になってきたということでしょうか。

こんな記事もありました。
#マレーシアで飲酒女性にむち打ち刑 国内からも反発相次ぐ
http://sankei.jp.msn.com/world/asia/090825/asi0908251850003-n1.htm
■マレーシアのホテルでビールを飲み、イスラム法に背いたとして、むち打ち刑を言い渡されたイスラム教徒の女性をめぐる問題が、同国内外で大きな論議を呼んでいる。
■有罪判決を受けたのは、モデルで元看護婦のカルティカ・サリ・デウィ・シュカルノ(32)さん。
2007年12月、東部チェラティンのホテルで夫とビールを飲み、宗教警察に逮捕された。今年7月、イスラム法廷で罪を認め、罰金5000リンギット(約13万円)とむち打ち6回の刑を言い渡された。
■地元メディアによると、むちは男性用より細く、皮膚を傷つけないよう衣服の上からたたく。
本人も父親もイスラム教徒に飲酒は違法であることを知らしめるため、刑の早期執行を望んでいるという。
<コメント>
これだけ戒律が厳しければ、アルコールにまつわる犯罪や病気はない筈です。

<きょうの一曲>
Rosa Elvira Sierra -Pie Jesu- Requiem- Fauré
http://www.youtube.com/watch?v=ZThARSv69Rg&feature=related