新型インフルエンザ にかかってしまったら

高熱で来院された患者さんを外来で診察していて、簡易試験でインフルエンザA型が陽性に出ることは昨今珍しくありません。
どの臨床現場でも、現時点では季節型インフルエンザは流行していないので「新型インフルエンザ」と推定しています。
しかし、季節型インフルエンザではないという根拠も逆にいえば、ないのです。
これからの季節では、両者の区別はまったくつかなくなります。
厚労省は、これから起こりうるこれらの現場での混乱に対してどのような対策をとるつもりでしょうか。

予想される混乱の原因は新型インフルエンザの診断の道具としての、PCR法が一部の公的機関に独占されていることにあります。

PCR法が行える病院にウイルスの断片を提供しないため、検査が出来ないという構図があります。
つまり、臨床現場では検査が行えず保健所に依頼して集団感染(これ自体も定義があいまい)と判断された場合に、PCR法が依頼できるというのが現状です。
多くの一般医療機関のように、散発的に簡易試験でインフルエンザA型陽性な患者さんが出ても一般医療機関から依頼が出ません。
そして依頼しても検査は断れるのが現状です。

さて、季節型インフルエンザが流行する時期になるとどうなるでしょうか。
誰でもわかることですが、両者の区別が全くつかないためA型インフルエンザとして対処したり新型インフルエンザとして対処したりと現場は大いに混乱します。

現に教育委員会によっては、季節型インフルエンザに対して従来からとられて来た「熱が下がってから2日間は自宅で療養すること」というマニュアルで対処しています。
つまり抗ウイルス剤で1日で解熱してしまえば、4日目から登校してもいいということになってしまいます。
しかし、厚労省は2009年7月9日付のQ&Aで、「発症した日の翌日から7日を経過するまでは」自宅安静を指示しており、一般企業もそのような指示を社員に出しています。


<参考>
新型インフルエンザに感染していると診断されている場合や、周囲で新型インフルエンザが流行している場合には、解熱後2日間が経過していたとしても、発症した日の翌日から7日を経過するまでは、周囲への感染拡大を抑止するため、できるだけ外出を自粛していただきたい。

<質問>
6月25日付け事務連絡(「医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業
の要請等に関する運用指針」の改定について)では、「自宅療養の期間は、発症
した日の翌日から7日を経過するまで又は解熱した日の翌々日までとする。」と
あるが、新型インフルエンザと診断されている患者であっても解熱後2日を経過
すれば、発症した翌日から7日以内であっても外出することが認められるのか。
<回答>
通常、インフルエンザの軽症患者であれば、解熱後2日を経過すれば、その多くは
咳などの症状についても消失していると考えられ、自宅療養を終了することが可能で
あると考えられる。
ただし、新型インフルエンザについては、発熱等の症状がなくなってからも、しば
らく感染力がつづく可能性があることが明らかになっている。
よって、新型インフル
エンザに感染していると診断されている場合や、周囲で新型インフルエンザが流行し
ている場合には、解熱後2日間が経過していたとしても、発症した日の翌日から7日
を経過するまでは、周囲への感染拡大を抑止するため、できるだけ外出を自粛してい
ただきたい。
なお、重症化する兆候を認めた際には、躊躇せず医療機関又は発熱相談センターに
電話で相談することが重要である。





厚労省はこういったことを指示するのなら、まず一番重要な一般医療機関での「新型インフルエンザ」の迅速かつ的確な診断ができるように現在の方法を改善すべきです。
診断がつかなければ、その後の話が進まないことは子どもにだってわかります。

先述の教育委員会は論外ですが、厚労省のやり方も現場を知らない「お役所仕事」の謗りは免れません。

話は変わりますが、校医をしていた時の校長の口癖は「教育委員会に相談します」、6月に「新型インフルエンザ」の疑われる患者が当院で発生した時の保健所の電話口の返事は「本庁に連絡をとって対応を検討します」でした。
ボトムアップはいいことかも知れませんが、「教育委員会」も「本庁」も現場を知らないのです。
もちろん「厚労省」も。


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出典 日経新聞・夕刊 2009.9.7
版権 日経新聞


<番外編>
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ミズーリ」の艦上で降伏文書に調印する重光外相。左はマッカーサー元帥
(1945年9月2日、AP)
http://otona.yomiuri.co.jp/history/090902.htm?from=yoltop
■ハワイ真珠湾で歴史博物館となっている米戦艦「ミズーリ」。
米太平洋艦隊の旗艦として硫黄島沖縄戦にも参加したこのアイオワ級戦艦は輝かしい戦歴よりも、歴史的なセレモニーの舞台となったことで有名である。
64年前の1945年9月2日、東京湾に投錨していたこの軍艦上で太平洋戦争の降伏文書の調印式が行われたのだ。
■日本側がミズーリに到着したのは午前9時前。政府代表の全権として、当時の重光葵外相と梅津美治郎参謀総長が出席。
重光全権はモーニングにシルクハットの正装でタラップを上った。
右手にステッキをついて不自由な足を運び、甲板上のテーブルに進む。
梅津参謀総長は、陸軍大将の軍服に参謀肩章を右胸につっていた。
敗戦国の代表ながら、卑屈さを感じさせない堂々たる姿である。
一方、連合国代表のマッカーサー元帥は、日本代表が到着するまでに、緊張のあまりトイレで何度も嘔吐したという。
■署名の際、カナダ代表が信じがたいミスを犯した。本来署名すべき欄の一つ下にサインしたのだった。このため、後の国の署名が一つずつ下にずれた。ミスに気づいた日本側は抗議し、訂正を要求。最初は無視されたが、粘り強く要求した結果、印字された各国の署名欄を、手書きで訂正することで歩み寄った。
ミズーリ硫黄島の戦闘や沖縄戦(や朝鮮戦争)などに参加し、91年の湾岸戦争を最後に退役。
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http://www.47news.jp/CN/200909/CN2009090301000279.html
<コメント>
湾岸戦争の時まで現役だったのは驚きです。
太平洋戦争(お年寄りは大東亜戦争といいます)がそんない昔ではなかったこと、現実にあったことを思い起こさしめたニュースです。


米戦艦ミズーリが全面改修 降伏文書調印式の舞台
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http://www.asahi.com/international/update/0907/TKY200909070090.html
■太平洋戦争の降伏文書調印式の舞台となり、現在は米ハワイ州パールハーバーで記念館として一般公開されている米戦艦ミズーリが来月、約17年ぶりに全面改修されることになった。
外装を中心に若返りを進め、来年1月に再公開する予定だ。
■調印式会場や神風特攻機の衝突跡などは現状通り保存されるという。



<きょうの一曲>  ドビュッシー/月の光
Debussy, Clair de lune (Twilight soundtrack? piano music)
http://www.youtube.com/watch?v=LlvUepMa31o&feature=fvw




ドビュッシー/月の光 ジャズmix Debussy/Clair de Lune jazz mix (record)
http://www.youtube.com/watch?v=BbgatlKO1IU&feature=related








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