新型インフルエンザ感染の検査法

新型インフルエンザの流行により各地の小中学校を中心に学級閉鎖や学年閉鎖が相次いでいます。
当院にも高熱の患者さんが数多く来院されます。
そろそろ季節型インフルエンザが流行する季節です。
簡易検査でのB型インフルエンザの検出も報告されており、これからの季節は簡易検査でA型が陽性と出ても季節型か新型かの判別ができません。
このことは医療関係者の誰もが疑問に思うことです。
しかし、現時点ではどういうわけかPCR法という確定診断のための検査は、都道府県のごく一部の公的機関に「独占」されていました。

そんな中、うれしいニュースです。

新型インフル感染、40分で判定 栄研化学が検査薬
栄研化学は27日、新型インフルエンザに感染しているかどうか40分程度で判定できる検査薬を開発したと発表した。
新型インフルの診断に使う遺伝子検査の所要時間は現在2~4時間かかるとされ、大幅な時間短縮につながる。
まず11月4日に医師の基礎研究用として発売し、医療機関で使う診断用は今年度中にも発売したいとしている。
 
インフル検査薬は、のどや鼻の粘膜から取った検体に含まれる遺伝子を反応させ、ウイルスがあるかどうかを調べる。
現在主流である「PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法」は反応させた遺伝子を増殖させる際に検体の温度を変える必要があるが、新たな検査薬は温度変化が不要なため短時間で済む。
 
厚生労働省への承認申請に向けて臨床試験を進めてきたが、申請による発売の遅れを避けるためまず研究用として発売する。
短時間で新型インフルエンザを判定する遺伝子検査薬は理化学研究所系のベンチャー企業、ダナフォーム(横浜市)も開発を進めている。

出典 日経新聞・朝刊 2009.10.28
版権 日経新聞

<コメント>
栄研化学独自の遺伝子増幅技術「LAMP法」という方法とのことです。
現在、確定診断のために行われている遺伝子増幅法「PCR法」では4時間近くかかり、新しいこの方法は約1時間と大幅な時間短縮になります。
しかし現在の季節型インフルエンザの簡易試験は約10分であり一般外来ではまだ実用化は無理だと思います。


<診察椅子>
これは昨日診察した新型インフルエンザの9歳の方のリレンザ服用後の経過です。

イメージ 1


高熱が出てすぐに来院される場合には診察する側でも、簡易試験のタイミングに悩みます。
ご存知のように、あまり早く検査しても陰性に出てしまう(専門的には「偽陰性」といいます)ことがあるからです。
こういった場合、当院では症状や経過からインフルエンザと診断されたら抗ウイルス剤を服用して貰います。
検査は翌日まわしとして再受診していただきます。

この方法で早期治療、確実な診断が結構うまく出来て来たつもりでした。
ところがこの症例のようにリレンザがあまりにも効いた場合には翌日には簡易検査でも陰性になってしまうことがわかりました。
インフルエンザでなかった可能性は熱型からも考えにくい症例でいかにもリレンザが効いている印象です。

さて私の考えですが、簡易検査で陽性になる以前、つまりウイルス量が一定以上に増加する前に抗ウイルス剤を使いたいのです。
こういった使用法は特にリレンザで有効なようです。

報道では、不幸な転帰をとったケースでの発熱から抗インフルエンザ剤の使用までの時間が詳しく書かれていません。
そのあたりは是非専門家も検討していただきたいものです。
日本はどの国よりも医療機関へのアクセスのよい国なのですから。


イメージ 3

11歳の症例です。
来院時に簡易検査を行ってくっきりと陽性でした。
同じくリレンザの著効例です。


<きょうの一曲>
chega de saudade - Gal Costa
http://www.youtube.com/watch?v=3or_wthpOkE&feature=related





読んでいただいて有難うございます。
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