バセドー病

昨年の4月のことです。
シンガーソングライターの○○さん(21)が結婚会見で、バセドー病であることを公表しました。
そのニュースで、初めてバセドー病という病名を知った方もみえるのではないでしょうか。
きちんと治療すれば普通の生活は可能ですが、病気と気づかずに放置していると、妊娠した女性であれば流産しやすかったり、胎児の成長に影響が出たりする恐れもあるので注意が必要です。

#圧倒的に多い女性
バセドー病甲状腺ホルモンが過剰に作られる病気です。
男女比は1対4で圧倒的に女性が多く、20、30代で発症するケースが多いといわれます。
 
甲状腺ホルモンは成長と代謝に関係し、過剰に分泌されると、疲れやすい、いらいらして落ち着きがない、甲状腺のある首の部分がはれる、集中力が低下する、眠れない、動悸(どうき)がする、手足が震えるなどの症状が表れます。
○○さんも会見で「1曲歌うと息切れや動悸がした」と話していたとのことです。

また、顔や目つきがきつくなることもあり、目が出てくる眼球突出は代表的な症状で3割程度にみられます。
受診のきっかけで多いのは首のはれや激しい動悸です。
ただ、高齢者は甲状腺がはれにくく、発症に気づかないケースも多いようです。


甲状腺機能を正常に
発症は甲状腺を刺激する抗体(TSH受容体抗体)が原因と考えられていますが、抗体ができる理由はよく分かっていません。
 
治療には、甲状腺ホルモンの合成を抑える薬の服用や、甲状腺の大部分を摘出する手術、放射線治療があります。
治療で甲状腺機能を正常にすることで、普通の生活は可能です。
○○さんは服薬で治療していたことを公表。
服薬治療は外来でできることや、妊娠、授乳が可能なことが長所である半面、1年以上と治療期間が長いのが短所です。

3年間、薬を服用した場合、10人に3、4人が薬がいらない「寛解(かんかい)」の状態となります。
一方、3年服用しても寛解しない場合は、手術や放射線治療を考えます。
 
仕事を休まなければいけないほど大変な病気なのかと思った人も多いでしょうが、服薬で甲状腺機能をコントロールできれば、普通は仕事は可能で、病気が原因で会社を辞める人はほとんどいません。
ただ、仕事がストレスになっている場合、仕事を辞めることで寛解するケースもあるようです。


#珍しくない高齢者
治療をきちんとすれば妊娠、出産は可能です。
しかし、甲状腺機能のコントロールがうまくできていないと流産しやすいほか、胎児の成長にも影響する可能性があるので、妊娠中の女性は特に注意したい病気です。

薬のなかった戦前は死亡することもある怖い病気でしたが、今は治療法が確立しています。
ただ、治療せず放置していた人が糖尿病になったり、別の病気で手術をしたりしたときに起きる「甲状腺クリーゼ」では死亡することもあり油断は禁物です。

若い時期の発症が多いとはいえ、高齢者の発症も珍しくありません。
気になる症状がある人は是非とも検査を受けて下さい。

<解説>
バセドーはドイツ人医師の名前。
日本の医学はドイツ医学の流れをくむことから、この病名で呼びますが、英語圏ではバセドーより早く報告したアイルランドの医師にちなんでグレーブス病と呼ばれています。
男性の発症も珍しくなく、田中角栄元首相やジョージ・ブッシュ米大統領も患者として知られています。

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<参考および引用サイト>
バセドー病 治療法確立、放置は危険
http://sankei.jp.msn.com/life/body/090408/bdy0904080809000-n1.htm



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(画像をクリックすると拡大します)

出典 朝日新聞・夕刊 2010.1.4
版権 朝日新聞社




バセドウ病
http://ja.wikipedia.org/wiki/バセドウ病
(この病気の有名人も紹介されています)




<きょうの一曲>
Johann Strauss II. - Geschichten aus dem Wienerwald (Walzer, op.325)
http://www.youtube.com/watch?v=poAb0MhEvmk

Vienna Boyschoir : Geschichten aus dem Wienerwald
http://www.youtube.com/watch?v=g1DOIkv4fwQ



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佐伯祐三 《ロシアの少女》  1928年(昭和3年)  
油彩,カンヴァス 大阪市立近代美術館建設準備室蔵



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