ワクチン政策の充実を

日本は予防接種後進国と呼ばれています。
諸外国、特に米国に移住された方なら誰でもが経験することですが、日本での予防接種の履歴が厳しく問われ、接種していない場合には接種をしなければいけない場合もあります。

予防接種後進国と揶揄されるのは行政の問題だけではありません。
国民のワクチンに対する認識にも問題があります。
一例をあげるとMR(麻疹風疹ワクチン)が2度打ちになりましたが、接種率はまだまだ低いのが現状です。
米国では既定のワクチン接種を終了していないと幼稚園にも小学校にも入れないそうです。
こういった厳しいチェックのない日本は、すべてのワクチンが“任意”接種といってもいい状態です。
“麻疹輸出国”と諸外国でいわれるのも無理がありません。

ワクチン政策の充実を 小児科学会などが協議会設立へ

ワクチン政策に対して専門家の意見を反映させる仕組みをつくろうと、日本小児科学会や日本ワクチン学会など関連8団体が「予防接種推進専門協議会」を4月にも発足させる。
欧米より遅れているワクチン政策の現状を改善するのがねらいだ。

従来は、個別の関係学会が厚生労働省などにワクチンの推進策を要望してきた。
しかし、小児の髄膜炎などを防ぐヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンは「要望してから承認まで10年かかった」(小児科学会会長の横田俊平横浜市立大教授)という。

「一番、被害を受けているのはワクチンが承認されていたら亡くならなかっただろう子どもたち。
何とかしよう」という小児科学会の呼びかけで、専門家が力を合わせて意見を政策に反映させるための協議会を作ることになった。

ほかに加盟が決まっているのは日本ウイルス学会や日本感染症学会など。
日本細菌学会と日本産科婦人科学会も加わる予定。

出典 朝日新聞・朝刊 2010.3.9
版権 朝日新聞社



水痘・ヒブワクチン・肺炎球菌の定期接種化を検討

厚生労働省は、水痘(水ぼうそう)など3種類のワクチンを全額公費負担の「定期接種」にする検討を始めた。
接種費用が無料のワクチンが少なく、「ワクチン後進国」と呼ばれる現状を打開するのがねらい。
新型の豚インフルエンザの流行で、ワクチンの重要性が浮き彫りになったことが背景にある。

厚労省が新たに定期接種化を検討するのは、
▽水痘ワクチン
▽乳幼児の重い細菌性髄膜炎を防ぐHib(ヒブ)ワクチン
▽細菌性髄膜炎や肺炎などを防ぐ乳幼児向け肺炎球菌ワクチン。

定期接種のワクチンになれば、国の副作用被害救済制度の対象にもなる。

水痘ワクチンはすでに接種が実施されているが自己負担分がある任意接種で、接種率は約3割にとどまっている。
ヒブワクチンも昨年末に使用が始まったが、乳幼児向けの肺炎球菌ワクチンは9月末に承認されたばかり。

厚労省は今後、各ワクチンの接種状況を踏まえ、効果を見極めたうえで定期接種化に必要な予防接種法の改正を目指すとみられる。
ただし、ワクチンについては、副作用を懸念する意見も根強く、議論は曲折も予想される。

ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンは世界保健機関(WHO)が「定期接種にすべきだ」と勧告している。しかし、WHOが全地域に勧告しているワクチン8種類のうち、日本は4種類がまだ定期接種化していない。
水痘も含め国内でも定期接種化を求める声が強く、昨秋の臨時国会でも新型ワクチンとともに議論された。

出典 朝日新聞・朝刊 2010.1.3
版権 朝日新聞社



新ワクチン「助成して」…医師、患者団体が要望

乳幼児の細菌性髄膜炎や、子宮がんを予防するワクチンが相次いで発売された。
しかし、接種費用が高額で、所得の格差が健康格差につながりかねないという声が医師や患者団体から上がっている。

細菌性髄膜炎は、年間推計で1000人近くが発症し、約5%が死亡、15~25%に脳機能障害などの後遺症が残る。
2月、乳幼児用に発売された肺炎球菌ワクチンと、2008年12月に発売されたインフルエンザ菌b型(ヒブ)のワクチンを接種すれば、8~9割の細菌性髄膜炎を防げるとされる。
いずれも有料の任意接種だ。
肺炎球菌ワクチンは1回9000円~1万円、ヒブワクチンは1回7000円~9000円程度。
生後7か月未満の乳児では、それぞれ4回接種が必要なため、両方合わせて6~8万円になる。

ある医師は、「値段を聞いてあきらめるお母さんもいる。国で定期接種に位置づけて、公費補助で誰もが打てるようにしてほしい。このままでは健康格差が生まれる」と話す。
「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」では、定期接種化を求める署名活動を続けている。

一方、子宮がんの一種、子宮頸(けい)がんは年間約2500人が死亡し、20歳代の若い女性で増えている。子宮頸がんワクチンは、初めてのがん予防ワクチンで昨年12月に発売された。
1回1万5000円~2万円程度で、3回の接種が必要。
4万5000円以上になる。
子宮頸がん検診の普及を訴えてきた「子宮頸がんを考える市民の会」事務局長は「ごく一部、助成を決めた自治体もあるが、国が一律に助成して、希望すれば接種できるようにしてほしい」と訴えている。

海外では、細菌性髄膜炎について、ヒブは130以上の国、肺炎球菌は45か国、子宮頸がんワクチンは、アメリカ、イギリスなどで定期接種になっている。

厚生労働省は、今国会に予防接種法の改正案を提出する予定だが、新型インフルエンザワクチンの接種に関する規定の変更のみにとどまり、これらのワクチンをどう位置づけるかは今後の検討課題としている。

定期接種 予防接種法で規定される。
はしか、ポリオなど集団感染の予防に重点を置き、接種努力義務がある一類と、個人の発病や重症化の防止を主な目的にする二類に分かれる。
自治体の補助が出るため、無料または安価で接種を受けることができる。副作用が認定された場合、補償される。

出典 毎日新聞・朝刊 2010.3.6(一部改変)
版権 毎日新聞社



<関連サイト>
子宮頚がんは「予防できる」がん
http://www.allwomen.jp/about/index.html
(このサイトでくわしく紹介されています)
■子宮頸がん予防ワクチンは、発がん性HPVの中でも特に子宮頸がんの原因として最も多く報告されているHPV16型と18型の感染を防ぐワクチンで、海外ではすでに100カ国以上で使用されています。
日本では2009年10月に承認され、近く、一般の医療機関で接種することができるようになります。
感染を防ぐために3回のワクチン接種で、発がん性HPVの感染から長期にわたってからだを守ることが可能です。
しかし、このワクチンは、すでに今感染しているHPVを排除したり、子宮頸部の前がん病変やがん細胞を治す効果はなく、あくまで接種後のHPV感染を防ぐものです。
子宮頸がん予防ワクチンは、子宮頸がんの原因となりやすいHPV 16型とHPV 18型のウイルスに対する抗体をつくらせるワクチンです。
なお、このワクチンに含まれるウイルスには中身(遺伝子)がないので、接種しても感染することはありません。

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