嗅覚検査でアルツハイマー診断

臭覚検査でアルツハイマー診断

#鳥取大、治療にも好影響
物忘れなどの症状が極めて少ない早期のアルツハイマー病を、においの検査で見分ける手法を鳥取大の研究グループが23日までに開発した。
アルツハイマー病に根本的な治療法はないが、投薬や非薬物療法を早く始めることで、病気の進行を食い止める効果が高くなるとしている。

アルツハイマー病では、症状が目立たないごく早期から嗅覚異常が現れることが知られており、これを応用した検査の実用化が急がれている。

鳥取大グループは、日本人になじみのあるにおいを選ぶなどの工夫で、ごく早期での病気の判別を可能にしたという。

鳥取リサーチアシスタントの神保太樹さん(生体制御学)や浦上克哉同大教授(同)らのグループが採用したのはヒノキやメントールなど12種類。

認知症の簡易テストや診察で早期アルツハイマー病とされた平均約80歳の早期患者33人と年齢の近い非患者40人で、におい検査を実施。
早期患者には脳の画像診断などから病気の有無を確認した。

出典 共同通信 2010.8.23
版権 共同通信社



以下は

熊本日日新聞・朝刊 2010.8.24 に掲載された記事です。
http://qq.kumanichi.com/medical/2010/08/post-1531.php

12種類のうち5種類以下しかかぎ分けられなかった人を「異常あり」として判定。
認知症簡易テストでは、30点満点中24点以上とテストでは病気と判定できない、ごく早期の患者でも85%で嗅覚異常が見つかった。

神保さんは「従来の検査では判定できないごく早期でも見分けられた。さらに精度を上げるほか、自費でも気軽に受けられるよう安価な検査として実用化を目指している」としている。


<私的コメント>
認知症のリスクのある高齢者を診断するほか、日常生活で補助の必要な人を洗い出すことも可能な質問表がすでに開発されています。
その中の一つに、日常的機能を7つの区分(記憶、言語、意味的知識ないし事実についての知識、視覚能力および空間能力、計画、体制化、注意分割)に分類した質問表があります。
正常と認知症の間の状態を軽度認知障害(MCI)と言います。
こういった質問表で、認知症となる前に軽度認知障害(MCI)を拾い出そうというわけです。
今後は嗅覚検査も質問項目の中に入って来るのでしょう。

さて、この記事を読んでいて自分なりに気になったことがあります。
それは、認知症の人は「これは何の臭いである」という理解力や表現力があるかということです。
例えていえば、乳児に視力や聴力の検査をどうやってすればいいのか、ということです。

「早期患者には脳の画像診断などから病気の有無を確認」とありますが、早期患者は理解力や表現力が備わっています。
理解力や表現力が低下した、認知症の進んだ患者さんにこそ「脳の画像診断」を行うべきではと思いました。



<関連記事>
#嗅覚の衰えはアルツハイマー病の予兆!?
米国・シカゴのラッシュ大学医療センターのR.ウィルソン博士らの研究で、慣れ親しんだ香りや臭いを正しく識別できなくなることは、アルツハイマー病の初期症状の可能性があるということが分かりました。
博士らは老化と記憶の研究中に、被験者として参加しながら亡くなった129人の高齢者(死亡時の平均年齢87.5歳)の脳を解剖しました。
亡くなった被験者らは実験参加中、12種類の嗅覚識別検査を受けており、検査の得点は正誤によって0~12点で評価されました。
この検査結果と解剖所見、性別や年齢の要因を考慮に入れた分析結果から、嗅覚テストの得点が低下するにつれ、脳の器質的な衰えも増すということが明らかになりました。
博士は、慣れ親しんだ香りや臭いが分からなくなることは、アルツハイマー病の早期に見られるサインであると指摘しています。
つまり、痴ほうや記憶障害がまだ始まっていなくても、その可能性のある人たちに対して、嗅覚テストはアルツハイマー病の早期発見に役立つはずだということです。
  (Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry 2007年1月号)


#嗅覚の低下はアルツハイマー病の早期徴候
マウスを用いた研究で、嗅覚低下がアルツハイマー病の早期指標となる可能性が示され、医学誌「Journal of Neuroscience(神経科学)」1月13日号で報告された。
アルツハイマー病患者の嗅覚が低下することはすでに知られているが、今回の研究ではアミロイド斑(アルツハイマー病の原因となる脳内の蓄積物)の発生と嗅覚低下との直接的な関連が明らかにされた。

研究グループは、マウスの脳の嗅覚をつかさどる部位に最初にアミロイド斑が発生することを突き止めた。
また、試験の結果、アミロイド斑のあるマウスはにおいを嗅いで覚えるのに要する時間が長く、異なるにおいの嗅ぎ分けにも困難を伴うことが判明した。

研究共著者の一人である米ニューヨーク大学医学部のDaniel W. Wesson氏は、「特筆すべき点は、マウスの嗅覚行動試験の成績により、3カ月齢の若いマウス(ヒトでは若年成人に相当)における脳内のごく微量のアミロイドの存在まで検知できたことである」と述べている。
「脳スキャンとは異なり、嗅覚検査は安価であり、アルツハイマー病早期診断の代替法となる可能性をもつ点で、この知見は意義がある」と同氏は付け加えている。
    (HealthDay News 2010年1月12日)
http://health.nikkei.co.jp/hsn/hl.cfm?i=20100121hk001hk


<自遊時間>
昨日は長野県蓼科山周辺でのんびりしました。
蓼科御泉水自然園に行ってきました。
実はお盆にも蓼科牧場からゴンドラリフトを利用して行ったのですが、更に奥の散策に再度訪れたというわけです。
散策といっても「蓼仙(りょうせん)の滝」という所まで降りて登るコースなので結構いい運動になりました。
帰りは足を少し伸ばして(もちろん車)蓼科山7合目登り口まで行きました。
たまたま、登山から帰って来た若い登山客がいたので聞いてみたのですが、登り2時間、下り1.5時間ということでした。
彼は登山口に止めてあったマイカーで、休む間もなく一人で帰って行きました。
奈良県ナンバーでした。

若い人のバイタリティーには感心します。





蓼科・御泉水自然園へ行ってきました
http://www.tateshina-tokyuresort.jp/blog/2006/10/post_139.html







イメージ 2

2010.5.3 撮影   蓼科山にはまだ一部残雪があります。
(昨日はうっかりしてカメラを持って行くのを忘れました)


<きょうの一曲> It Could Happen To You
ヨーロピアン・ジャズ・トリオ/It Could Happen To You
http://www.youtube.com/watch?v=5PcRDSztNJg

IT COULD HAPPEN TO YOU - W&R : Jazzと読書の日々
http://d.hatena.ne.jp/wineroses/20080326
Chet Baker ―It Could Happen To You
http://lampnoakari.jugem.cc/?eid=679




読んでいただいて有難うございます。
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