ハウスダスト 秋の対策肝心

家屋の室内を浮遊するホコリやちりであるハウスダスト
気管支ぜんそくなどのアレルギー疾患を引き起こす一因になりますが、とりわけ秋が被害を受けやすい季節ということは意外に知られていません。
ハウスダストが原因になって発生する病気に対して利用できる公的な助成制度や家庭でできる対策などをまとめた記事を紹介します。


以下、新聞記事。

一部が悪影響
「毎年、秋になるとぜんそくの症状がひどくなる」。
東京都在住の女性会社員(36)は不安げに話す。
気管支ぜんそくが持病である彼女は、秋に花粉症を引き起こすことで知られる「ブタクサ」などのほか、ハウスダストでもぜんそく症状が現れる体質だ。
これまでも数回、秋にぜんそくで1週間程度入院した経験があるという。

ハウスダストは、室内にたまる主にホコリやちり。
衣類や布団の繊維くずや食べ物のかす、髪の毛やふけ、ダニの死がいやフンなどが主だ。
このうち人体に悪影響を及ぼすのが、ダニの死がいやフン。
吸い込んでしまったり触れたりすると、気管支ぜんそくアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、結膜炎などを引き起こすとされている。

ダニは気温と湿度が高い夏場に活発に繁殖するといわれる。
増えたダニが一斉に死に、秋になると死がいが大量に発生する。秋にハウスダストの悪影響が出やすいのは、このためだ。

総合情報サイト「オールアバウト」でアレルギーガイドを務める大和高田市立病院(奈良県)の清益功浩小児科部長は、「気密性の高い住宅が増えたことなどで、最近では夏以降もダニが繁殖しやすい環境が整っている」と指摘する。1年中ハウスダスト対策が必要という専門家もいる。

ハウスダストが一因となる病気の代表格が気管支ぜんそくだ。
厚生労働省によると、気管支ぜんそくの推計患者数は2008年に全国で約88万8000人だった(グラフA)。
アレルギー疾患に詳しい佐野虎ノ門クリニック(東京・港)の佐野靖之院長は「気管支ぜんそく患者のうち3分の2は、ハウスダストと何らかの関係がある」と説明する。
公的な医療費の助成も気管支ぜんそくの関連は多い(表B)。


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例えば、国の小児慢性特定疾患治療研究事業。
原則として18歳未満が対象で、最寄りの保健所に申請すれば、所得に応じて気管支ぜんそくの医療費(自己負担分)の一部または全額を負担してもらえる。
ただし「3カ月に3回以上の大きな発作がある」
「1年以内に意識障害を伴う発作があった」など条件は厳しく、重症者が優先される。

小児慢性特定疾患治療研究事業よりも利用しやすいのが、地方自治体が実施する気管支ぜんそくの医療費に対する助成制度だ。
医師の診断書など必要書類を提出して認定されれば、医療機関の窓口などで提示するだけで医療費の保険適用後の自己負担分の一部または全額を払わずに済む受給証を発行してもらえたり、支払った医療費が払い戻されたりする。

これらの助成制度の多くは気管支ぜんそくの原因は問わないので、ハウスダストによる気管支ぜんそくでも申請できる。
ただし、助成制度を利用できる対象はその自治体の住民のみ。
一定期間以上の在住を条件とする自治体もある。
助成制度を設けている自治体は今のところ、東京都や川崎市大阪市など一部に限られているのが実情だ。

市区町村が実施する乳幼児医療費助成制度を利用する方法もある。
子供の医療費の一部または全額を自治体が補助してくれる制度で、気管支ぜんそく以外のハウスダストを原因とする疾患でも利用できる。

乳幼児医療費助成制度では就学前までの子供を対象にしている自治体が多い。
一定以上の所得があると利用が制限されるなど、自治体ごとに内容は異なる。
利用したい場合は自分が住む自治体の窓口に確認する必要がある。

こうした公的な助成制度を利用すれば、医療費の自己負担分を節約できる利点がある半面、助成を受けた医療費分は自己負担ではないので確定申告の医療費控除には含められない。
また申請そのものの手数料は無料が一般的だが、医師が作成する診断書の費用は自己負担となるのも注意が必要だ。


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自宅を無料で調査
金銭的支援以外でも、ハウスダストに苦しんでいる人が利用できる公的なサービスはある。
例えば、市区町村が手掛ける住居診断だ。
東京都新宿区では担当者が依頼者の自宅を訪問し、家屋内の5カ所からハウスダストを採取し、アレルギー疾患を引き起こす物質の量が多い場所はどこかなどを無料で調査してもらえる。
原因物質がどの場所に集中しているかが分かるため、掃除を重点的にするなどの対策をとりやすくなるという。

このほかに、簡易キットなどで自宅のハウスダストを送るだけでハウスダストの量などを無料で測定、対策を助言してくれる自治体もある。
こうした調査を自分でしようとすれば、簡易キットの購入に数千円程度はかかる。
住環境が気になる人は、同様のサービスが受けられないか地元自治体の担当者に相談してみるといいだろう。

自宅でできるハウスダスト対策は、まずは小まめに掃除することだ。
特定非営利活動法人NPO法人)、アレルギー支援ネットワーク(名古屋市)の栗木成治理事は、最低でも1週間に1回は「1平方メートル当たり20秒を目安に丁寧に掃除機をかければ効果的」という。

床などと並んでハウスダストの温床になりやすいのが、布団や枕といった寝具類だ。
室内と同じように、週に1回程度は掃除機をかけるのが有効だ。
洗濯機で丸洗いできる素材の物を選ぶ方法もある。枕カバーなども毎日洗った方がよいが、無理なら「タオルを巻いて使い、そのタオルを洗濯するだけでもよい」(NPO法人、日本アトピー協会)そうだ。
このほかに家庭でできるハウスダスト対策を図Cにまとめた。


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ダニの死がいやフンなどのハウスダストで特に気をつけたいのが、床上30センチまで浮遊している分だ。
普通に日常生活を送る分にはあまり問題にならないが、はいはいする乳児がいる場合や、床に布団を敷いて寝ている家庭は吸い込みやすいので、用心しておいた方がいいだろう。
(藤井良憲)

出典 日経新聞・朝刊 2010.11.7
版権 日経新聞