日本癌学会市民公開講座2010  その3

2010年9月25日に大阪市堂島リバーフォーラムで開かれた日本癌学会市民公開講座の記事の紹介です。
きょうはパネルディスカッションの記事です。


●出席者
◆講演
 ・田村研治さん 国立がん研究センター中央病院乳腺科・腫瘍内科通院治療センター医長
 ・土岐(どき)祐一郎さん 大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学教授
 ・長谷川正俊さん 奈良県立医科大学放射線腫瘍医学教授
 ・間野博行さん 東京大学ゲノム医学講座特任教授・自治医科大ゲノム機能研究部教授
 ・珠玖(しく)洋さん 三重大学大学院医学系研究科がんワクチン治療学遺伝子・免疫細胞治療学教授
◆司会
 ・門田(もんでん)守人さん 大阪大学理事・副学長
 ・中釜斉さん 国立がん研究センター研究所副所長



◇パネルディスカッション◇
ためらわず医師に質問を・有効な免疫療法、まだない
中釜 
分子標的治療薬はかなり高価なのでしょうか。

田村 
年々高くなっています。
ただ高額療養費制度を利用すれば、払った医療費が返ってくることがあります。

中釜 
大きさが5ミリ以下のがんは見落としが多いですか。

土岐 
55リは難しく、1センチくらいが基準です。
自覚症状があるケースなどは最初から精密検査をするので、見つかる場合もあります。

中釜 
ポリープが悪性に進行する可能性は。

土岐 
のどや子宮は炎症のポリープができることがあるが、大腸のポリープは腫瘍のことが多いです。

中釜 
粒子線治療を含む放射線治療の費用は。

長谷川 
通常の放射線治療は、ほとんど公的医療保険の適用です。
しかし、粒子線治療は先進医療のため300万円ぐらいかかり、高額療養費制度でも戻ってきません。

中釜 
放射線治療は一度使用すると、同じ場所で使えないのでしょうか。

長谷川 
その通りです。
一回しかできないというのが大原則です。

中釜 
がんは遺伝するかという質問がきています。

間野 
がん自体が直接遺伝することは普通ありません。
ただし、起きやすいような家系は存在します。
がん細胞の増殖を抑えるブレーキの遺伝子の利きが悪い家系があります。
家族にそういう方がいれば、まめにチェックをするなどの対策ができます。

門田 
セカンドオピニオンの利用法と、主治医の気を悪くさせずに別の医師に治療法を聞く方法はありますか。

田村 
セカンドオピニオンをちゅうちょしないでください。
自分の病状や治療法を聞くのは、患者さんの権利です。それに怒る医師というのはおかしいです。
むしろ質問した方が医師との関係は良くなると思います。

門田 
医師から家族にがんと伝えられたとき、患者本人に事実を教えるべきですか。

田村 
基本的にはがんの告知はすべきです。
後でがんだとわかると、患者さんは後悔することが多いです。
治療の段階ごとに、どの治療を選ぶか患者本人が決めるべきです。
ですから、初めからうそをついてはいけません。

門田 
世の中では食事療法などでがんが消えたとの書籍が多く出ていますが、どのように考えますか。

珠玖 
免疫力がどれくらい働いているのか、私どもが研究しなければならない課題です。
残念ながら現時点では日本で、有効性が確立された免疫療法はありません。
がんの免疫療法は研究途上と言わざるを得ないんです。
免疫という言葉が過剰に使われすぎている感じがします。






<番外編> インフルエンザ関連記事
インフルエンザワクチン:接種後、80代女性が死亡
厚生労働省は8日、山形県内の80代女性がインフルエンザワクチンの接種後に急性アレルギー反応のアナフィラキシーショックで死亡したと発表した。
主治医は「接種との因果関係あり」と報告している。
10月から始まった季節性と新型の混合ワクチンの接種後の死亡報告は初めて。

厚労省によると、女性は5日に山形県内の医療機関でワクチンを接種した。
約1時間半後、処方された腕の外傷治療用の抗生物質を服用後に全身のかゆみが現れ、血圧が測定不能になるなどし、救急病院に搬送されたが間もなく死亡した。
女性にはうっ血性心不全や気管支ぜんそくなどの既往症があった。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20101109ddm012040049000c.html
出典 毎日新聞・朝刊 2010.11.9
版権 毎日新聞社


インフルエンザ:道内で早くも流行 1医療機関当たりの患者数 全国最多の1.06人
道内で早くもインフルエンザの感染が広まっている。
国立感染症研究所がまとめた全国の定点医療機関の調査(10月25~31日)では、道内の1医療機関当たりの患者数は1.06人と全国最多で、流行の目安となる1人を超えた。
ワクチン接種の予約が殺到する診療所や、学級閉鎖する学校も出てきており、道などは予防の徹底を呼びかけている。

道健康安全局によると、道内の流行が始まるのは例年で11月下旬以降。
今のところ、最も多く検出されたウイルスは季節性のA香港型で、昨季に新型が流行したため、A香港型の抗体を持つ人が少なくなっていることが原因として考えられるという。
http://mainichi.jp/hokkaido/shakai/news/20101110hog00m040005000c.html
出典 毎日新聞・朝刊 2010.11.10(一部改変)
版権 毎日新聞社


シャープ、東大との臨床試験でインフルエンザ感染予防効果を立証
シャープは11月9日、臨床試験において、高濃度プラズマクラスターイオンがインフルエンザウイルスのヒトへの感染率を低減させる傾向が認められたと発表した。

臨床試験は、東京大学大学院医学系研究科・大橋靖雄教授の監修のもと、昨年の12月から今年の6月にかけて国内の44の病院施設の透析室で行われた。
イオン発生装置745台を設置し、透析室を「イオンあり」と「イオンなし」のエリアに区分けしたうえで、通院患者3,407名を対象に、インフルエンザ発症件数を約6か月間にわたって調査したという。

その結果インフルエンザ発症件数は、イオンなしエリアで14件、イオンありで9件となり、イオン発生装置により感染率が約30%したという。

同社によれば、今回の臨床試験文部科学省橋渡し研究支援推進プログラム」を通じ実現したもので、インフルエンザウイルスの感染予防に関して、機器の効果を客観的かつ統計的に立証した例は、他に類を見ないという。

イメージ 1

臨床でのインフルエンザ感染抑制効果検証方法と結果



イメージ 2

プラズマクラスター技術について








<番外編>
ゴキブリに火、逃げて作業場全焼 香川のしいたけ栽培農家
10日午前11時35分ごろ、香川県○市のしいたけ栽培農家で、ゴキブリを駆除しようとアルコールをまいて火を付けたところ、ゴキブリが燃えたまま逃げ回り、鉄骨平屋のしいたけ栽培作業場約500平方mを全焼した。
作業用の機械についたゴキブリ数匹を駆除するため、ゴキブリや周辺にアルコールをかけて火を付けたところ、建物の断熱材の裏側などに逃げ込んだという。
<私的コメント>
ゴキブリに火をつけてはいけないことが分かりました。
ニュースからいろんな教訓が得られて勉強になります。
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20101110/Kyodo_OT_CO2010111001000863.html
出典 excite.ニュース 2010.11.10





他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
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井蛙内科開業医/診療録(2)
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があります。