肺がんとCT検診

ヘビースモーカーが肺がん検診を受ける場合は、X線撮影ではなく、CTスキャンを用いる方が死亡率を20%下げられるとする研究結果が発表されました。
きょうは、この記事の紹介です。

ここで注意しなければならないのは、ヘビースモーカーというハイリスクの人が対象となっていることです。
喫煙歴のない人ではどうかということはわかりません。
さらに、最近ではX線放射線による発がん性が指摘されています。
したがって、X線撮影よりCTによる被曝の方が大きいことを考えると、今回の結果は慎重に解釈する必要がありそうです。


肺がん死亡率、CT検診で2割低下 X線より有効 米国

低線量の胸部CT(コンピューター断層撮影)による定期検診で、肺がんによる喫煙者や元喫煙者の死亡率が20%下がることが米国の臨床試験でわかった。
胸部X線撮影による検診より、がん発見の有効性が高いことを示す結果で、米国立がん研究所(NCI)が4日、発表した。

精度が高いCT検査は小さな肺がんも見つけられ、早期治療につながると考えられているが、実際に死亡率が下がるかどうかはよくわかっていなかった。

NCIなどは、喫煙本数や過去の喫煙歴などから肺がんの危険が高いと考えられるものの、症状が出ていない55~74歳の男女約5万3千人に対し、約10秒かけて胸部全体の3次元映像を作成するヘリカルCT検査を受けるグループと、胸部X線撮影による写真1枚による検査を受けるグループに分けて、肺がんによる死亡を5年後まで追跡した。
その結果、胸部X線検査では442人が肺がんで死亡していたが、CT検査では2割少ない354人だった。

また肺がん以外の死亡率も、CT検査のグループでは7%下がっていた。

一方で、CT検査は低線量でも、X線検査より、費用が高いほか、X線の被曝量が多い。
疑陽性が出やすいため、余分な検査や治療で合併症を起こす危険も指摘されている。

日本では、肺がんによる死者は胃がんより多く、がんの死亡原因別ではトップ。
厚生労働省の研究班は2007年の指針でCT検査について「死亡率が減る効果を判断する証拠は不十分」としている。
現在、市町村が行う住民検診などでは、喫煙者に対して胸部X線検査とたんに含まれる細胞の検査を組み合わせた検診が主に行われている。
CT検査は一部の人間ドックなどで実施されている。
【オーランド(米フロリダ州)=勝田敏彦】

http://www.asahi.com/health/news/TKY201011050192.html

出典 asahi.com 2010.11.6
版権 朝日新聞社



<番外編> インフルエンザ関連記事
集団インフル6人死亡…秋田・北秋田市の病院
季節性」の院内感染か
秋田県は6日、○○○市の病院でインフルエンザの集団感染があり、10月31日から今月5日にかけ、60~90歳代の入院患者6人が死亡した、と発表した。

簡易検査で6人からA型の陽性反応があり、別の1人の検体から「A香港型」ウイルスが検出された。
6日にも80歳代の男性患者が死亡したが、簡易検査は陰性だった。
県は季節性インフルエンザの院内感染と見ている。

発表によると、死亡したのは男性4人、女性2人。
10月27日に最初の発症者が確認され、計49人が発熱などの症状を訴えた。病院は2日、○○○保健所に報告した。
同病院では10月29日、死亡者も含め入院患者全員に「A香港型」「B型」「新型」の混合ワクチンを接種していたといい、発症者には全員に「タミフル」を投与した。
5日現在、入院患者25人、職員8人が症状を訴えている。

県は「ワクチン接種から免疫ができるまで約2週間かかる。免疫ができる以前に感染してしまった可能性が高い」としている。
県は、感染防止の徹底を指導する一方、発症者の隔離などの対応が十分だったか調べている。

出典 読売新聞 2010.11.7
版権 読売新聞社



A香港型 今季「新型」の2倍
秋田県で集団感染が判明したA香港型インフルエンザウイルスは、1968年に大流行した香港かぜ(H2N1)の子孫。
毎年のように流行する季節性だ。
多い年には高齢者を中心に推計1万人以上の死者を出す。

昨年6月以降、新型インフルエンザ(H1N1)が流行すると姿を消したが今年は復活。
9月以降、沖縄、北海道を中心に感染が広がりつつある。
国立感染症研究所によると、今シーズン全国で検出されたウイルスは、3分の2がA香港型で、新型の約2倍。
5日のまとめでも、A香港型が138例で最多の報告数だ。
A香港型は過去2シーズン大きな流行がなく、免疫を持たない幼児も多いため、大流行の可能性もあるという。

出典 読売新聞 2010.11.7
版権 読売新聞社





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