肺がんを早期発見するには

がん死亡率1位・肺がんを早期発見するには 人間ドック、追加検査の選び方

そろそろ健康診断の季節だ。
人間ドックを受診する人も多いだろう。
基本メニュー以外に、自由に選べるオプションの検査が豊富な施設も増えている。
だが、どれを選んだらいいのか、利用者としては迷うところ。
有益なオプション検査にはどんなものがあるのだろうか。

千葉県に住む50代の会社員は、人間ドックで腹部コンピューター断層撮影装置(CT)など3つの検査を追加した。
「パンフレットを見ていたら、不安になって」。
オプション分は2万5000円近く。
ところが、福島第1原子力発電所の事故で放射線被曝の話題が増え、X線を使うCT検査についても気がかりになった。
「腹部CTは必要がなかったかもしれない」と考えている。

■がんと動脈硬化の早期対策を
日本人の死因のトップはがんで、死亡総数の30%。
次いで心筋梗塞などの心疾患が16%、脳梗塞脳出血などの脳血管疾患が10%、この2つは動脈硬化性疾患だ。
トップ3で全死亡数の過半を占めるだけに「がんと動脈硬化への早期対策こそが人間ドックの目的」と、日本人間ドック学会理事で東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センターの和田高士教授は言う。

同学会では、自覚症状が出にくく罹患数の多い疾患の発見のために人間ドックの基本項目を定め、各施設はそれらをベースにメニューを構成している。
特殊な装置が必要だったり、対象者が限られたりする検査はオプションとして提供されることが多い。

オプション検査の有益性は年齢によって違ってくる。
そこで、様々な検査について推奨年齢をまとめてみた。

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■肺がん、40代後半か罹患率高まる
がんの部位別死亡率1位の肺がん。
その早期発見につながるのが胸部CTだ。
肺がんは罹患率、死亡率とも40代後半から上がり始め、高齢ほど高くなる。
50歳になったら、特に喫煙者は胸部CTを受けた方がいい。

東京都品川区のNTT東日本関東病院予防医学センターは、胸部CTを基本メニューに入れている。
一方、腹部CTは被曝量も多いので、人間ドックでは必要ないという考えもある。
肝臓、胆のう、腎臓などの様子は、基本メニューの腹部超音波検査でかなり分かるからだ。
膵臓だけは超音波では限界があるが、基本は「超音波で怪しい部分があれば腹部CT」という対応でいい。

■子宮頸がんは20代から検査を
一般にがんは中年以降、罹患率が高まる一方だが、女性の乳がんや子宮頸がん・体がんは異なる。
特にHPVというウイルス感染が原因の子宮頸がんは20歳後半から高まり40代でピークを迎えるので20代から検査するのが望ましい。

オプション検査で受診者が多いのは腫瘍マーカー
血液検査でがんが調べられるので人気だ。
大腸や膵臓・胆道、卵巣など臓器ごとにマーカーがあるが早期発見に有効といえるのは、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAぐらい、というのが専門家の見方だ。

心臓など循環器系を詳しく調べるなら、心臓超音波や24時間心電図、運動負荷心電図、全身の動脈硬化度合いを測定する血圧脈波検査がある。
受診の目安は男性なら50歳以降、女性は60歳以降。
心臓の筋肉に血液を送る冠動脈の硬化を調べるCT検査がある施設もある。
高血圧や脂質異常症、糖尿病、肥満、親・兄弟姉妹に心臓病の人や突然死した人がいる場合は、年齢を問わず心臓ドックを受けることを勧める医師もいる。

脳血管疾患なら、磁気共鳴画像装置(MRI)で頭部断層と脳血管を撮影すれば、脳梗塞脳出血などが分かる。脳に血液を送る頸動脈の硬化を調べる頸動脈超音波の検査もある。

主なオプション検査の料金の目安をまとめた。

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自分の懐具合と相談して、よく検討するといい。
人間ドックの基本メニューは、30代半ば~50歳なら2年に1度、51歳以降は毎年が望ましいが、オプション検査はがん関係以外は、受けて異常がなければ数年おきで構わない。
40代で早めに1度受け、自分にどういうリスクがあるのかを自覚するのもいい。
必要な検査を選別して、結果を有効に活用したい。             (福沢淳子)

出典 日経プラスワン 2012.4.14(一部改変)
版権 日経新聞

<私的コメント>
「頸動脈超音波」は、この記事の表には出ていますが、後半の文中には書かれていません。
情報量が多く、何よりも定量化の出来る簡単な検査ですので是非おすすめします。


<自遊時間>
大飯原発 再稼働判断基準、委員長が否定的 国会事故調
東京電力福島第1原発事故に関する国会の事故調査委員会(委員長、黒川清・元日本学術会議会長)は18日、東京都内で第9回委員会を開いた。
会合には経済産業省原子力安全・保安院の深野弘行院長が出席。
定期検査で停止中の関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働に際し、政府が新しく定めた安全性の判断基準が守られなければ、原子炉を止めるよう行政指導する考えを明らかにした。
■黒川委員長は委員会終了後の記者会見で、政府の判断基準について、「暫定的な原因究明に基づいている。必要な対策が先送りされ、想定を超える災害に対応できていないことも明らか。住民の健康を守れるのか」と再稼働に否定的な考えを示した。
毎日新聞 4月18日(水)22時42分配信
<私的コメント>
これで政府の原発に対する姿勢が鮮明となりました。
週刊朝日2012.4.27の表紙に「原発再稼動めざす『稚拙5人組』」のタイトルが踊ります。
真偽のほどは私にはわかりませんが、この記事によると、野田首相、枝野経産相、藤村官房長官、細野原発担当相、仙谷政調会長代行がその5人組だそうです。
サポート役として今井資源エネルギー庁次長、深野原子力安全・保安院長、古川国家戦略担当相の名前が書かれていました。


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