低迷続くがん検診率

低迷続くがん検診率 目標「50%」壁高く

がん検診率の低迷が続いている。
2010年の国民生活基礎調査によると、胃がん、肺がん、大腸がんの検診受診率はおおむね3割を下回る。
今月は厚生労働省が掲げる「12年3月末までに受診率50%」という目標達成に向けた対策集中月間。
民間団体の啓発活動や企業を巻き込んだPRなど受診率向上のための動きを加速するが、決定打といえる方法はないのが実情。
地道な活動が成果に結びつくまでにはまだ時間がかかりそうだ。

「大腸」30年で6倍
食生活の欧米化などに伴い大腸がんの罹患(りかん)数は、この30年で約6倍に増加。
女性の死亡原因では第1位だ。
ただ、大腸がんは早期発見・早期治療で90%は完治する病気でもある。
早期では自覚症状がほとんどなく、われわれも理解を深め検診の重要性を広く知る必要がある。

イメージ 1



「関心あるが…」
内閣府が09年に実施した世論調査で「がん対策に関する政府への要望」を尋ねたところ、「がんの早期発見(がん検診)」が6割を超えて最も多かった。
未受診の理由は「たまたま受けていない」が「健康に自信がある」「面倒」などに比べ特に多く、「関心はあるけれど受診していない」のがうかがえる。


日本は極端に低く 女性の受診、環境に課題
日本のがん検診の受診率は国際的に突出して低い。
経済協力開発機構OECD)の調査によると、乳がん検診は50~69歳で2006~09年までのデータ比較で、オランダが88.3%で最も高く、英国の74.1%が続くが、日本は23.8%(07年)。
子宮頸がん検診は20~69歳で英国が78.4%、ニュージーランドが75.5%で、日本は24.5%(同)だ。

イメージ 2



こうした女性特有のがんを含め女性の受診率は男性に比べて低い。
男性は職場で受診できる人が多いが、女性は職場でも乳がんや子宮頸がん検診は受けられないことが大半で、専業主婦同様、自ら医療機関に出向く必要があるのも一因だ。
<私的コメント>
今でも「子宮がん検診」と呼ぶ自治体があります。
この名称で検診を受けた住民は、「異常なし」という結果を貰った時に、「これで私の子宮は大丈夫」と勘違いしてしまいます。
何故なら、あくまでも「子宮頸がん検診」であって「子宮体がん」のチェックではありません。
したがって「子宮体がん」があるかどうかはわからないのです。
最近の「子宮頸がんワクチン」の啓蒙活動によって、この記事のように正確に「子宮頸がん検診」と書かれるようになって来ました。
喜ばしいことです。

自治体によっては検査費用の一部が自己負担となるため、厚生労働省は09年度から子宮頸がんは20歳から40歳まで、乳がんは40歳から60歳まで無料券を配布したが、10年の受診率が1割程度増えたにすぎない。

女性の受診率が高い英国では子宮頸がんの場合、未受診者に3回まで受診を呼びかけ、近くの診療所で訓練を受けた女性スタッフが細胞を採取するなど受診しやすい環境を整えている。
英国は子宮頸がんの発生率と死亡率が減っており、大阪大学大学院の小林忠男招聘教授(細胞診断学)は「日本の受診率の低さは国際的に恥ずかしい状況。
英国のような対策が必要」と指摘している。

出典 日経新聞・夕刊 2011.10.6
版権 日経新聞


<参考サイト>
徳光&木佐の知りたいニッポン!~がん検診受診率の向上
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg3880.html


他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)
「葦の髄」メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版です)
があります。