時には内視鏡検査も

時には内視鏡検査も 費用かかるが高い精度

がんによる日本人の死亡で肺がんに次いで多いのが胃がんと大腸がん。
X線検査や内視鏡検査、便の検査など、検診の方法は色々ある。どんな特徴があり、どの検診を受けたらいいのだろうか。

●胃 X線推奨だが 死亡率下がる報告・ピロリ菌ある人に
胃の内視鏡検査は、先端にカメラがついた直径1センチ弱の細長い管を胃まで入れ、食道や胃の内部を観察する検査だ。
のどを通す時に、はき出そうとする反応が起きて苦しいことがあるので、最近は直径がより細く、鼻から入れる経鼻内視鏡も出ている。

日本橋大三クリニック(東京都)で口から入れる内視鏡検査を受けた。
入れる際、のどの部分麻酔だけか、意識がもうろうとするけれど、より痛みを抑える効果の強い鎮静剤を打つか選ぶことができる。

内視鏡をのみこむ時に苦労するかどうかは個人差が大きい」と看護師さん。
痛みに弱いので鎮静剤を注射してもらった。

すぐにボーッとし、内視鏡が入ったのも気付かなかった。
検査が終わって内視鏡を抜く際、のどに少し違和感を覚えただけだった。
検査後、鎮静剤が覚めるまで30分間横になって休む。
寝不足だったので爆睡し、目覚めたら爽快だった。

「あ、『たこいぼ胃炎』ですね~。慢性胃炎です」。
内視鏡で撮影した画像を見ながら斉藤大三院長に説明を受けた。
胃の下部にわずかな隆起があり、周囲が少し充血している。
とくに治療は必要ないという。
不規則な生活がたたったのだろう。

がん検診には、国全体でがん死亡率を下げることを目的に自治体や職場で実施する「対策型検診」と、個人が自分のがんを早く発見して自分の死亡リスクを下げるための「任意型検診」がある。

現在、厚生労働省が推奨する対策型胃がん検診は造影剤(バリウム)と胃を膨らませる薬を飲んで実施するX線検査だ。
国立がん研究センターは、X線検査は死亡率を下げる根拠が相応にあると評価。
内視鏡検査はまだ根拠不十分とする。

しかし最近、内視鏡検査で死亡率が下がるとの報告が出ている。
検診を受けない場合との比較だけでなく、X線検査と比べても死亡率が下がるという。

横浜栄共済病院の細川治院長らが今年5月、学会誌で報告した厚労省研究班の調査では、福井県で胃のX線検査を受けた約4万人と内視鏡検査を受けた約2万人を分析。
内視鏡検査の方が胃がんの発見率が2・3倍と高かった。
検査後5年以内の胃がんによる死亡リスクが8割近く減り、早期の胃がんを見つけやすいことをうかがわせた。

内視鏡検査はX線検査で胃がんが疑われた後の精密検査でも実施されており、精度が高い。
検査中に組織の一部を切り取り、病理検査に回すこともできる。

福井県の調査をまとめた細川さんは「内視鏡検査を早く対策型検診に導入すべきです。導入されるまでは自己負担ですが、一度はピロリ菌の感染と胃の粘膜の萎縮の有無を調べる血液検査『ABC検査』を受診し、感染や萎縮があったら胃がんのリスクが高いので内視鏡検査を受けることをお勧めします」と話す。

内視鏡を対策型検診に導入するには課題がある。
内視鏡を対策型検診で実施するには、費用や人手がかかりすぎ、現実的ではありません」と国立国際医療研究センターの後藤田卓志・内視鏡科長は指摘する。

X線検査は半日で40~50人できるが内視鏡は20人が限度。
内視鏡の消毒には約15分かかるため、大勢に実施するには高価な内視鏡が何本もいる。

このため、血液検査などでまず胃がんのリスクが高いかどうかを判断し、リスクに応じて受ける検診の種類や間隔を変えることができないかを調べる厚労省の研究が昨年から始まった。

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●大腸 検便推奨だが 50歳過ぎで1度は・ポリープは連続で
大腸がん検診で厚労省から推奨されているのは、便に血液が混じっていないかどうか調べる便潜血検査だ。
専用キットを使って自宅で採便し、それを検査会社に送ることもできる。

便潜血検査では2割前後、がんの見落としがあったり、がんではないのにがんの疑いという結果が出たりすることがあるという。

「大腸がんは、胃がんと比べてゆっくり進行するので、1年以内に急激に悪化することはほとんどありません。便潜血検査を毎年受ければ、前年、見落としがあっても翌年、見つけられる可能性が高い」と北里大の渡辺昌彦教授(消化器外科)は説明する。

大腸の内視鏡検査は便潜血検査よりも精度が高い。
国立がん研究センターは、死亡率を下げるという科学的根拠も相応にある、と評価している。

ただし、地域や職場の検診には推奨されていない。
まれではあるが、検査中に大腸に穴があくことなどがあるからだ。
胃の内視鏡同様、費用や人手がかかりすぎるという課題もある。

渡辺さんは「50歳を過ぎたら内視鏡検査を個人的に1度は受けることをお勧めします。もし大腸内にポリープがあったら、3年連続で内視鏡を受けて下さい」と言う。

ポリープのある人の方が、大腸がんになりやすい傾向があるからだ。
ただし、ポリープがあってもがん化しない人が半数はいるし、ポリープが無くてもがんができる人は大勢いる。
<私的コメント>
「ポリープがあってもがん化しない人が半数はいるし、ポリープが無くてもがんができる人は大勢いる」・・・これじゃポリープがあってもなくても関係ないことになります。
「半数」と「大勢い」。
言葉通り解釈すると「大勢い」の方が「半数」より多いはずで、そうすると「ポリープが無くてがんができる人」の方が多いことになってしまいます。
ここのところはとても重要なところです。
是非具体的な数字を出して欲しかったところです。


大腸内視鏡検査の場合、平均的には3年ごとの検査で、ポリープやがんの発生の見逃しをほぼ避けられるという。 (大岩ゆり)


日本対がん協会から
予防できるがんの一つに子宮頸(けい)がんがあります。
わが国でも昨年から公費助成でワクチン接種が始まりました(対象年齢は限定)。
中学生の頃に接種する習慣は徐々に根づいていくでしょう。
ただそれで完全とは言えず、20歳になってからの定期的ながん検診が重要です。
ところが受診率は極めて低くて、20%台です。若い層に限れば数%に過ぎません。
子宮頸がん対策で先進地といわれるオーストラリアを、今野良教授(自治医科大学)、シャロン・ハンリー准教授(日本赤十字北海道看護大学)らと訪ねました。
ワクチンは国の接種プログラムに基づいて2007年から12~13歳の女性を対象に学校単位で実施されていました。
接種率は80%。
また検診は20歳以上を対象に実施され受診率は60%台です。
特筆すべきは、これらの登録制度では、接種歴、受診歴など個人別の経緯は完全に把握され、その後のフォローアップや、受診の勧奨などに活用されていることです。
後進的なわが国の現状を聞いた現地の担当者は「私たちが始めたのは1990年ごろ。長い時間が必要だった。大切なのはチャレンジだ」と話してくれました。(協会事務局長・塩見知司)
<私的コメント>
こういった記事を読むと、日本が「ワクチン後進国」といわれる理由がわかります。
日本の医療レベルが低いわけではないのですから、その理由は明らかです。

出典 朝日新聞・朝刊 2010.7.28
版権 朝日新聞社


<関連サイト>
検診;便潜血検査の驚くべき実態・・・結局は大腸内視鏡検査が必要!?
http://blogs.yahoo.co.jp/ichoukoumon/21380074.html

大腸がん検診、精密検査時は内視鏡検査を提言
http://blogs.yahoo.co.jp/xxxnasaxxx1982/28029636.html




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