危険性高い大腸ポリープ

危険性高い大腸ポリープ

大腸がんは肉食、肥満、糖尿病、運動不足などが原因となる「欧米型」のがんの代表だ。
多くは、大腸粘膜の細胞からポリープ(腺腫)と呼ばれる良性の腫瘍が発生し、その一部ががん化して増大したものだ。

ただ、一部の大腸がんでは、発がん刺激を受けた正常粘膜から、腺腫を経由せずに直接がんが発生する場合もまれにある。
とくに、腺腫が大きくなると発がんリスクが高くなる。
直径1センチ以上では3割弱が、がん化するというデータもある。

日本では、40歳以上に対して毎年2回の便潜血検査が住民検診として行われている。
痛くもかゆくもないこんな簡単な検査で、進行大腸がんの90%以上、早期大腸がんの約50%、腺腫などのポリープの約30%を見つけることができるとされている。

しかし、アメリカは別の方法で大腸がんを劇的に減らしている。
大腸全体を内視鏡でチェックする「全大腸内視鏡検査」だ。

内視鏡による検診は、がんを早期発見するとともに、腺腫を見つけ出して除去することが可能で、がんの発症も減らす。
受診者にとって受け入れやすい10年に1度という検査間隔であったこともあり、2016年には全米で50歳と75歳で過去10年に内視鏡検査を受けた国民は60%以上に上っている。

この結果、もともと日本人よりずっと高かった米国の大腸がん死亡率は過去40年間で半減し、男女とも日本人を下回っている。
米国の予防医学の一つの勝利と言える。

18年のわが国での大腸がんによる死亡数(予測値)は5万3500人だが、同年の米国の予測値は5万630人だ。人口が米国の4割以下のわが国の方が大腸がんによる死亡総数が多いという信じられない事態だ。

前がん病変と言える大腸の腺腫とちがって、胃のポリープの多くを占める「胃底腺ポリープ」は、ピロリ菌感染のない健康な胃にできるもので、胃がんにならないサインとさえ言える。
同じポリープといっても、胃と大腸では、危険性が大きく違うのだ。

執筆 東京大学病院・中川恵一准教授

参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2019.7.31