夏風邪ウイルス、油断しないで

夏風邪ウイルス、油断しないで 大人も手足口病で痛み

夏風邪のシーズンが続いている。
「夏風邪ウイルス」とも呼ばれるウイルスの感染が原因で、子どもだけでなく大人でもかかることがある。特に「手足口病」は全国で猛威をふるっており、専門家は「発熱などあれば早期の受診を」と注意を呼びかけている。

6月下旬、大阪市に住む会社員Bさん(38歳、女性)の生後10カ月になる男児の口に、性の発疹が出来た。
手足口病だった。
手や足にはあまり症状はなく軽めだった。
ところが、看病するうちに自分もかかってしまった。
 
39度の熱が出て、口の中や手足に水疱性の発疹ができた。
食器を洗う際、手にお湯があたり、針に刺されるような激痛が走った。お茶を飲もうとすると、口の中の発疹で「皮膚がめくれたひどいやけど」のように感じた。
病院にも行ったが、痛み止めの薬などの対症療法しかなく、あまり効かなかった。
 
Bさんは以前、看護師として働いていた。
それでも最初は、かぜだと思っており、手足口病だとは考えていなかった。
「まさか自分がと油断していた。痛くて痛くてポロポロと涙が出た。つばをのみ込んでも痛いので、いつもぺっぺっとはき出していました」と振り返る。
そんな状態が、数日続いた。
 
手足口病は2~7日の潜伏期を経て、発熱のほか、口の中や手のひら、足の裏などに、2~3ミリの水疱性の発疹ができる。
約3分の1が発熱し、38度以下がほとんど。
たいてい数日以内で治る。
 
国内では5月中旬から右肩上がりで増え始め、7月8~14日の1週間に全国約3千の小児科から報告のあった患者数でみると、1医療機関あたりの数が12.64で、過去10年間で最も高い数値を示した。
 
4歳以下の子どもが感染しやすく、患者の半数は2歳以下。
大人は過去に感染して免疫がある場合が多く、患者は少ないが、感染・発症する可能性がある。
手足口病を引き起こすエンテロウイルスは種類が複数あり、再びかかることは珍しくない。
 
ではなぜ、今年は患者が多いのか。
今年はエンテロウイルスに属する「コクサッキーウイルスA6型」が多く検出されている。
このタイプが流行する年は、手足口病の規模が大きくなる傾向が2011年から見られているというが、はっきりはしていない。
 
大人は子どもより症状として強く出やすいという見方もある。
ただ、大人が重症化するという明確な裏付けはないという。
大人の方が苦痛について表現しやすい面があり、「一概に子どもとの比較はしにくい」と指摘する専門家もいる。

手洗いを徹底、脱水症に注意
夏風邪は手足口病だけではない。例年、手足口病と同じエンテロウイルスによるヘルパンギーナや、アデノウイルスによる咽頭結膜熱(プール熱)が夏になると増えている。
 
実際、感染研の集計でも、ヘルパンギーナの患者は夏以降、右肩上がりだ。
2~4日の潜伏期の後に突然、発熱。
のどの奥が赤くなり、口の中に小さなぷつぷつができ、舌などでやぶれて、痛くなることもある。
だいたい2~4日程度で熱はおさまるという。
プール熱も発熱やのどのはれ、目の充血などの症状が見られる。
こちらもおおむね自然に治る病気だという。
 
では、こうした夏風邪をどう防げばいいのか。
 
ウイルスを含んだ患者のくしゃみやせきを吸い込むことで感染する。
タオルを個人別にしたり、使い捨てのペーパータオルを使ったりする対策が有効だ。
また、手足口病ヘルパンギーナは、症状がおさまった後も、数週間、便の中などにウイルスが含まれるので、トイレの後やおむつの交換の際、手洗いが不十分だと他人にうつすおそれもあり、注意が必要になる。
 
子どもの夏風邪は接触感染が多いので、感染を防ぐためにはまず手洗いが大切だ。
仮に発症した場合は、合併症として可能性がある髄膜炎や脱水症などに気をつけたい。
顔色や意識の状態、おしっこの出具合など、子どもの様子を注意して見る必要がある。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2019.7.31

<関連サイト>
主に夏に流行する感染症
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/481