夏のアウトドア、マダニ注意 肌の露出避け虫よけ剤も
マダニにかまれることで感染する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の関東地方で初めての感染例が千葉県で確認された。
致死率は10~30%程度と高く、死亡例の報告もある。
感染地域は西日本を中心に徐々に拡大しており、専門家は夏休み中にアウトドアで過ごす際などには肌を露出しないよう、注意を呼びかけている。
マダニは山や草むらに生息しており、かまれるとSFTSに感染する場合がある。
SFTSはマダニが持つウイルスが原因で、2011年に中国で発見された。
潜伏期間は6~14日で、初期には発熱や倦怠感などの風邪の症状が現れる。
重症化すると意識障害や紫斑などの出血症状が起こる。
高齢者では重症化しやすい。
有効な治療薬やワクチンはなく、治療は対症療法が中心となる。
死に至ることもある。
国立感染症研究所によると、千葉県の当時70代の男性は、17年に発熱や発疹の症状が出て、病院を受診した。
受診時はマダニが媒介するほかの感染症を疑われたが、陰性だった。
保管されていた検体を後から調べたところ、SFTSと確認された。
男性は発症前にほかの県への移動歴がないことから千葉県内で感染したとみられる。
国内では、13年1月に海外渡航歴のない人が感染したことが初めて報告された。
20年12月30日時点で573人の患者が国内で報告され、75人が亡くなった。
SFTSウイルスは主にシカやイノシシ、アライグマなどの野生動物からマダニが媒介して人に感染する。
国内には約50種類のマダニがいるが、全てのマダニからウイルスが見つかっているわけではない。
またウイルスの保有率はマダニの種類によって異なり、5~15%程度という報告もある。
農村の過疎化が進むなか、野生動物が人の住環境に近づきやすくなっていることも、マダニにかまれるリスクを高めているとの指摘もある。
発症した猫にかまれて発症した事例も報告されている。
人での発症率やSFTSがどこまで広がっているかなど、わかっていないことが多い。
マダニの生息域は広く、アウトドアレジャーで発症するリスクもある。
マダニから身を守るには、肌を露出しないことが重要だ。
キャンプなど屋外で遊ぶときには、長袖と長ズボンの着用が有効だ。
虫よけ剤も効果がある。
またマダニは皮膚に長時間ついて血を吸う。
慌てて引き抜こうとすると、マダニの口の部分が体内に残るため、ウイルスに感染しなくても化膿してしまう恐れがある。
もしかまれても、自分で処置せず、医療機関を受診することが大切だ。
参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2021.7.6