身近な危険生物

身近な危険生物  ハチ・マダニ…身近な危険生物 傷口つまみ 水で毒洗い流す

マダニ、ヒアリなど、私たちの身近には危険生物がたくさんいる。
どんな危ない生物がいて、どうすれば防げるのか。

――刺す虫で思い浮かぶのがスズメバチです。
「巣が一番大きくなるのは秋。新女王バチとオスバチが生まれ、巣が最大になります。市街地で特に注意すべきはキイロスズメバチです。家の軒下や雨戸の中、屋根裏などに巣を作り、50センチ以上の大きさになることもあります」
 
「以前、岐阜県でのマラソン大会で100人以上がスズメバチに刺される事件がありました。コース内の橋の下に巣があり、ランナーが通過した振動などが刺激したようです。普段気付かないところに巣ができている可能性もあります。ベランダや庭に干した洗濯物に、冬眠場所を探すスズメバチが潜り込んでいることもあるので、洗濯物を取り込むときは注意です」
 
――もしスズメバチが近づいてきたら、どうすればいいのでしょうか。
「巣の10メートル以内に人が近づくと、まず偵察にやって来るのが習性です。顔の周りを飛んでいるのは、こんなときだと思います。ハチを手で追い払ったり大きな声を出したりせず、静かに立ち去りましょう」
 
「さらに巣に近づくなどしてしまって刺激すると、スズメバチは顎をかみ合わせて『カチカチ』という音を出し、威嚇します。刺さずとも、針から毒液を飛ばすこともあるので要注意です。威嚇を無視してさらに巣に近づくと集団で攻撃を始めます。危険を感じたら姿勢を低くして、ゆっくりと10~20メートル離れましょう」

――スズメバチは2度目に刺されると危険、と言われています。
「1度刺されたときは平気でも、2度目で発熱や吐き気、じんましんなどのアレルギー反応を起こすことがあります。気を失ったり、息ができなくなったりするアナフィラキシーショックには注意です」
 
「刺されたところを水でよく洗ったり、傷口をつまんで毒をしぼり出したりしましょう。昔は口で毒を吸い出す人がいましたが、毒が口から体内に入ると大変なのでやめたほうがいい。スポイトのように毒を吸い出す専用の道具をアウトドア店などで買えます」
 
――マダニで死者というニュースも耳にします。
「ダニはクモの仲間で世界に約5万種います。ほとんどは無害ですが、マダニなど一部は人を刺します。マダニに刺された後で熱が出たり、だるさを感じたりした場合、マダニが運ぶ病気にかかった恐れがあります。近年、農村部の人口が減り、シカやイノシシが増えています。こうした動物にくっついて、マダニが人里に広がったのだと考えられています」
 
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は2011年に初めて特定されたウイルス(SFTSウイルス)による病気です。マダニに刺されてから1~2週間後に発熱、体のだるさ、吐き気や下痢、腹痛などがあり、死ぬこともあります。日本では16年までに53人が亡くなりました」
 
――寝床で刺されたらダニの可能性が高い?
「シラミの可能性もあるかもしれません。保育園や小学校でよく被害報告される髪の毛につくアタマジラミではなく、トコジラミというカメムシの仲間です。夜行性で、刺されると激しいかゆみや、赤い斑点が出ます。またネコノミというノミも人を刺します。激しいかゆみがあり、水膨れになることも多いです」
 
――最近、日本の港などで発見されるヒアリについて教えてください。
「熱帯・亜熱帯地域のアリで、小型ですが攻撃的です。毒針に刺されると火がついたように痛いと言われています。アルカロイド系の毒をもち、アレルギー反応を起こすことがあります。アナフィラキシーショックには注意が必要です」
 
「1990年代にセアカゴケグモという豪州原産の毒グモが日本で発見され、大騒ぎとなりました。今では本州、四国、九州の各地に広がってしまいました。ヒアリも各地に広がってしまうかもしれません」
 
――都市部で気を付けるべき生き物はありますか。
「ガの仲間であるチャドクガです。幼虫は春と秋の年2回現れ、市街地のツバキやサザンカの葉などに大量発生することがあります。怖いのは『毒針毛』という針のような毒毛を一生持ち続けること。くっついている葉を触って揺らしてしまったり、風が吹いたりしただけでも、この毒針毛は簡単に抜け落ちて、皮膚や衣服につきます」
 
「毛の中に毒液があり、かゆみや痛み、腫れなどの皮膚炎を引き起こします。かきむしると毒針毛が細かくくだけて広がるので、粘着テープで取り除くか水で洗い流す。ツバキの木などが通学路にあるので、お子さんには普段の生活にも、危険が潜んでいることを教えるといい。そして、生き物の生態を知ることで、きちんと予防できることも、伝えてほしいです」

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参考・引用
日経新聞・夕刊 2017.11.22