C型肝炎の治療、副作用少ないのみ薬が中心に

C型肝炎の治療、副作用少ないのみ薬が中心に

推計感染者が国内に100万~150万人いるC型肝炎の治療が大きく変わった。
つらい副作用を伴うこともあった注射薬「インターフェロン」がほとんど使われなくなり、ウイルスを直接攻撃するのみ薬が中心に。
治療期間は短く患者の負担は軽くなったが、ウイルスに変異が起きるという新たな問題もでてきた。

お酒と肝臓のフクザツな関係 インターフェロンからの飲み薬へ
東京都の女性(63)は35年ほど前、子宮筋腫の手術の際の輸血が原因でC型肝炎ウイルスに感染した。
 
肝臓の炎症を抑える漢方薬成分の点滴を長く受けた後、2002年にインターフェロン治療を始めた。
注射に加えて「リバビリン」という錠剤をのむ治療を約1年続けることを4回繰り返したが、ウイルスは消えなかった。
重い貧血や食欲不振などの副作用に悩まされた。
4回目は耐えられず、治療を中断してもらった。
 
15年、新しいタイプの薬の登場を知り、主治医に相談。
「ハーボニー」を紹介された。
ウイルスを直接攻撃する、直接作動型抗ウイルス薬と呼ばれる経口薬の一つだ。
1日1回、12週間のみ続けると、ウイルスが体内から消えた。
「副作用もなく楽でした」と女性は振り返る。
 
C型肝炎の感染が続くと慢性肝炎や肝硬変、肝臓がんになりやすく、肝臓がん患者の約6割はC型肝炎が原因とされている。
治療でウイルスを体内から排除すればがんのリスクは減る。
 
日本人が感染するウイルスの遺伝子型は1型が約7割で、約3割が2型。
インターフェロンは1型に効きにくく、ウイルスが消える患者は6~8割だった。
 
14年に販売が始まった直接作動型抗ウイルス薬には、1型に効くハーボニーや「エレルサ/グラジナ」などがある。
重い肝硬変の患者は使えないが初めて治療を受ける患者なら9割以上でウイルスが消える。
インターフェロンで1回半年から1年だった治療期間は12週間で済む。
今月27日に発売された新薬は、肝硬変の無い患者は8週間でよいという。
 
大阪大のT教授(消化器内科)は直接作動型抗ウイルス薬について、「インターフェロンより副作用が少なく、ウイルスの排除効果は高い。重い肝硬変などの事情がない限り初めて治療を受ける人にはこちらを選ぶ」と説明する。
 
日本肝臓学会C型肝炎治療ガイドラインの作成委員の帝京大T教授(消化器内科)によると、12月に公表予定の改定版ガイドラインでは、初めて治療を受ける患者には、インターフェロン治療ではなく直接作動型抗ウイルス薬をまず推奨する。
直接作動型薬の「ヴィキラックス」は、他と比べて効果が若干低く、副作用が出やすいため推奨から外れる。
27日に販売が始まった「マヴィレット」は推奨に加わる見込みだ。

耐性ウイルス、未治療の患者が課題
続々と効果的なのみ薬が出る中、薬剤耐性ウイルス出現の防止や、未治療の人を減らすことが課題だ。
 
最初に出た「ダクルインザ/スンベプラ」が効かなかった人が特に問題」となる。
厚生労働省研究班が両剤でウイルスが消えなかった患者846人を調べると、8割近くで薬が効きにくくなるウイルスの変異が起きていた複数の変異があった患者もいた。

遺伝子の変異の種類により効く薬が変わる。
2回目の治療に失敗すると使える薬がなくなる恐れがある。
ウイルス遺伝子を調べて慎重に薬を選部必要がある。
ウイルス遺伝子の検査は、全都道府県にある70肝疾患診療連携拠点病院(http://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/060/hosp.html)で受けられる。
 
感染者のうち未治療の人は推計約50万人。
感染に気づいていない、または知っていても治療していない人が減っていない。
感染の有無は各地の保健所で無料で検査できる。
治療費には公費補助もあるので是非治療を受けたい。

 
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参考・引用
朝日新聞・朝刊 2017.11.29