C型肝炎 3剤で治療 新薬と従来薬併用 ウイルス排除比率高く 副作用には注意 貧血や他薬飲み合わせ

国内に約200万人の感染者がいるとみられるC型肝炎
慢性化すると肝硬変や肝臓がんに進むこともある恐ろしい病気だ。
2011年11月に新しい薬が発売され、従来の薬では効きにくかった患者でも治療効果が期待できるようになった。
治療期間が短縮できるなどの利点もあるが、副作用に注意する必要があると専門家は指摘している。

肝臓がん原因8割
この病気は「C型肝炎ウイルス」が感染して発症する。
感染すると約7割で体内でウイルスが生息し続け、このうちの6~8割が慢性肝炎に進む。
さらに10~30年かけて肝硬変や肝臓がんへと病気が進行することも少なくない。
毎年約3万人が亡くなる肝臓がんの約8割がC型肝炎が原因とされている。

ウイルスは血液を介して感染する。
感染者の多くはウイルスが発見される以前の輸血や血液製剤、注射針の使い回しなどが原因とみられる。
今では新たな感染はほとんどないが、ピアスの穴開けなどでうつる危険性も指摘されている。

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C型肝炎が恐ろしいのは自覚症状がほとんどないこと。
気づかないまま何年も過ごし、治療が難しくなる例も多い。現在の治療は「ペグインターフェロン」という注射薬と飲み薬の「リバビリン」の2剤を併用するのが一般的。
ただこの治療がよく効くのは、ウイルスが「2型」というタイプで、体内のウイルス量も少ない患者。
日本人に多い「1型」のウイルスで体内の量も多いケースは効果が得られにくく、ウイルスを排除できるのは患者の約半数にとどまっている。

田辺三菱製薬が11月に発売した「テラプレビル」(商品名テラビック)は、こうした治りにくい患者にも高い効果が見込める。
従来の2剤と一緒に用いる薬で、ウイルスが自分のコピーを作って増殖するのを妨げる働きがある。

国内で実施した臨床試験(治験)で、1型でウイルス量も多い患者が初めて治療を受ける際にこの3剤を併用したところ、73%でウイルスを排除できた。
従来の治療でいったんウイルスが検出されなくなったものの再び増えてしまった患者では、88%で効果が認められた。
今まで薬が効かなかった患者では有効例は34%だった。

治療期間の短縮も利点だ。
従来は1~1年半、投薬する必要があったが、半年にできる。
新薬を使うのは最初の3カ月間だけで、あとは2剤でよいという。

注意点もある。
副作用の強さだ。
もともと従来の2剤併用療法でも副作用の懸念はあった。
東京大学医科学研究所付属病院の加藤直也特任准教授は、「これまでも副作用が原因で治療が続けられないケースがあった。新薬が加わると、その割合が高まるだろう」と指摘する。

代表的な副作用は貧血だ。新たな治療法では、血液中のヘモグロビンが減って貧血が深刻化することがある。
このため治療中に貧血が重症化した場合は、リバビリンの量を減らすなどの対応をとる。
「新薬を中途半端な量で使うと、逆に薬に耐性を持つウイルスが生じる恐れがある」(加藤特任准教授)ためだ。

治療の手控え禁物
皮膚に発疹が現れることもある。
臨床試験の結果をみると、患者に中程度の発疹が出る確率は34%、やや重い発疹は11%。
いずれも従来の治療法を上回った。
出始めるのも早く、治療開始から1カ月以内に発疹が現れる確率は約8割に達する。

コレステロール血症などの持病がある人も注意が必要だ。
服用している治療薬の種類によっては、新薬と併用するとどちらかの薬の血中濃度が上がりすぎ、副作用が強くなる恐れがある。
睡眠導入剤の一部なども飲み合わせがよくないという。

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北里大学北里研究所病院の常松令肝臓病センター長は「C型肝炎の治療を始める前に、服用中の薬を医師に伝え、指導を受けてほしい」と訴える。
持病の薬でも、飲み合わせが悪くない別の薬に切り替えれば、肝炎治療に悪影響を与えずにすむケースも少なくない。

ただし、副作用を心配し過ぎて治療に取り組まないのは本末転倒だ。
東大の加藤特任准教授は「実際に副作用がどの程度になるかは治療してみないと分からない」と話す。
慢性肝炎になってからの期間が長い高齢者はがんになるリスクも高いので、治療が不可欠だ。

現在、新しい治療が受けられるのは肝臓の専門医がいる医療機関に限られている。
皮膚科医などとも連携していれば安心度も高まる。
「医師と相談して治療内容をよく理解し、二人三脚で治療に取り組んでほしい」と専門家は口をそろえる。    (草塩拓郎)

出典 日経新聞・夕刊 2012.1.6
版権 日経新聞

<関連記事>
厚労省】C型慢性肝炎治療‐3剤併用療法を医療費助成へ
http://www.yakuji.co.jp/entry24885.html
厚生労働省は、C型慢性肝炎治療費の助成対象に、ペグインターフェロンリバビリンの併用へ「テラプレビル」を上乗せする3剤併用療法を追加する。
肝炎治療戦略会議の方針を受けたもの。

■テラプレビルは25日に薬価収載されたプロテアーゼ阻害剤。
助成の対象となるのは、HCVRNA陽性のC型慢性肝炎で、肝癌の合併のない者。
また、助成回数は1回で、助成期間は24週間とする。
過去に3剤併用療法以外のインターフェロン治療歴がある者も助成の対象とする。

■また、臨床試験で副作用による重篤な皮膚障害の発現が報告されているため、3剤併用療法の実施は、日本皮膚科学会が認定する皮膚科専門医と連携し、日本肝臓学会の肝臓専門医が常勤する医療機関に限定することとする。

■3剤併用療法の治療効果については、ウイルス量の多いセログループ1のC型慢性肝炎患者において、初回治療例、再治療例ともに既存治療と比べて高いことが報告されている。

■一方で、3剤併用療法の副作用としては、皮疹や高度の貧血が認められており、副作用による治療中止例や重篤な副作用が既存治療に比べて多いことも報告されている。

<関連サイト>
C型肝炎の新薬… 難治性の7割に効果
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/39342762.html


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