C型、副作用少ない新薬

C型、副作用少ない新薬 耐性ウイルス出現には注意

肝臓は沈黙の臓器といわれ、病気になっても気づきにくい。
慢性肝炎の大半を占めるウイルス感染によって起こるC型やB型の肝炎も同様で、肝硬変や肝臓がんと進行する危険がある。
今年、肝炎の新薬が登場した。
副作用の抑制や高い薬効などが期待されており、治療法も変わりつつある。

C型肝炎の新治療薬が9月に発売された。
「ダクラタスビル塩酸塩(一般名)」と「アスナプレビル(同)」という2つの飲み薬で、一緒に服用する。
通常使われる「インターフェロン」は効果が期待できる半面、副作用の懸念も強い。
新薬は体力のない高齢者やインターフェロンが効かない患者でも投与できる。

C型肝炎はウイルス(HCV)が引き起こす肝炎だ。
感染した人の血液を介してうつるが、感染力が弱く日常生活ではほとんどうつらない。
昔は輸血や注射器の使い回しなどが感染の原因だったが、今は薬物乱用などで起こる注射器の使い回しや、ピアス、入れ墨などで感染するといわれている。

■感染の症状は軽く
感染すると、発熱や体のだるさ、食欲不振など急性肝炎の症状が現れるが、程度は軽く肝炎に気づかないケースが大半だ。
感染者の約7割が慢性肝炎に移行する。
その後、感染が持続すると高い確率で肝硬変になり、さらに肝臓がんを発症する。
C型肝炎の国内患者数は推定150万人程度だが、治療しているのは約40万人にとどまる。
治療では通常、インターフェロンを使う。
ウイルスの増殖を抑えるために体内で分泌されるたんぱく質で、これを人工的に作り投与する。
他の薬との併用が基本だ。
かつて週3回だった注射は、持続型のペグインターフェロンにより週1回で済むようになった。
治療期間も最短で半年になるなど治療法は進化している。
ウイルス排除の成功率も9割近くに達している。
 
インターフェロンは治療の中心だが、副作用の懸念も強い。
だるさや発熱、筋肉痛などが起き、長く続けると髪の毛が抜けることもある。
治療でだるさを覚え、仕事を休まざるを得なくなる人もいる。
インターフェロンの治療を経験した人の中には「二度とインターフェロン治療はしたくない」と思う人も多い。

数は少ないが、うつや間質性肺炎になり、治療を中断せざるを得ない患者もいる。
特に体力のない高齢者やうつ症状が現れた患者は、C型肝炎治療を中止する例もあるという。
また、いったん治ったと判断された場合でも、ウイルスが再び増えて肝炎をぶり返してしまう患者がいる。

■学会も指針を改訂
今回の新薬はこうしたインターフェロン治療が難しい患者にとって朗報だ。
2剤を半年間飲み続ける。
それぞれ細胞内でHCVが増える際に利用するたんぱく質の働きを妨げる。
標的とするたんぱく質は別なので、一緒に使えば相乗効果が期待できる。
臨床試験(治験)では8~9割の患者でウイルスを排除できたという。
 
飲み薬で副作用が少ないと良いことずくめのようだが、注意点もある。
それは薬が効きにくいように変化してしまう耐性ウイルスの問題だ。
インターフェロンは体の免疫機能を利用するため耐性が出にくい。
一方、ウイルスを直接に攻撃する薬はウイルスが変異して耐性を持ちやすいという。
これまでの治療法はインターフェロンが中心にあることで耐性ウイルスの出現が抑えられていた。
 
2種類の新薬はこうしたインターフェロンの作用は期待できず、耐性ウイルスが出現しやすい状況にあるという。
インターフェロン治療が可能な人はできる限り従来の治療法を受けてほしい、と専門家は強調する。
 
肝臓の専門医らで構成する日本肝臓学会も注意喚起や医師への周知に乗り出した。
新薬の発売に合わせてC型肝炎の治療ガイドラインを改訂し、9月に発表した。
 
この中で、新薬による治療はインターフェロンの治療ができない患者に限ることにした。今まで治療をあきらめていた人にも広がる意味で、新薬は非常に価値がある。
しかし、その使い方については問題点も多い。
 
治療でウイルスを排除できれば、肝炎の進行を抑えて肝硬変や肝臓がんの発症リスクも大幅に下がる。
厚生労働省C型肝炎の治療費を補助しており、新薬も対象になっている。

イメージ 1


出典
日経新聞・夕刊 2014.10.24



         
イメージ 2

長野・諏訪湖畔の紅葉