脂肪肝 がん化リスク

肥満じゃないのに…まさか私が脂肪肝!?  がん化リスク・休肝日設けて

肝臓に中性脂肪がたまる脂肪肝を患う人が増えている。
アルコールの飲み過ぎや食べ過ぎによる肥満が原因とされる病気で、症状が進むと肝硬変から肝臓がんになる恐れもある。
効果的な治療薬はまだなく、節酒や食べ過ぎを防ぐといった生活習慣の改善が大切だ。

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肥満でもないのに脂肪肝になる人が少なくない。
特に日本人を含めたアジア人は、遺伝的な背景から脂肪を体内にためやすく肥満でもないのに脂肪肝の割合が高いとする調査もある。
 
脂肪肝中性脂肪が肝臓にたまった症状だ。
おなかなどの皮膚の下にたまる皮下脂肪、臓器の周囲にたまる内臓脂肪に次ぐ「第3の脂肪」と呼ばれる。
 
肝臓になぜ中性脂肪がたまるのか。
食事から直接たまるのは15%程度で、約6割は皮下脂肪などにある中性脂肪から運ばれた脂肪酸がたまってできる。
食べ過ぎや運動不足で皮下脂肪などにためきれなくなった中性脂肪が肝臓にも蓄積したといえる。
 
脂肪肝と診断されるのは、肝臓の細胞のうち中性脂肪が30%以上たまった状態。
国内の正確な患者数は明らかになっていないが、病院による大規模な調査などから成人の3割に相当する3600万人という推定もある。
脂肪肝は肥満との相関が強い。
日本では肥満者数は増加傾向にあるため、脂肪肝を患う人も増えていると専門家はみる。
 
脂肪肝が見つかるのは、人間ドックなどで超音波の検査を受けたり、健康診断で肝機能の異常が見つかった後に肝炎ウイルスが無かったりして分かる場合が多い。
 
脂肪肝が怖いのは、そのまま症状が進むと肝炎から肝硬変、肝臓がんと悪化するケースがあるからだ。
 
脂肪肝の症状は大きく分けて2つに分かれる。
お酒の飲み過ぎが原因となる「アルコール性脂肪肝」と、食べ過ぎによる「非アルコール性脂肪肝(NAFL)」だ。
いずれも症状が進むと肝細胞に炎症が起きる「アルコール性脂肪性肝炎」や「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」になり、本格的な治療が必要になっていく。

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ただ、肝硬変や肝臓がんまで症状が進むのは、脂肪肝と診断された患者のうち1~2割程度とされる。
それでも進行しているかどうかを見分けるには、肝臓の細胞を直接取って調べる生検などに限られ、入院が必要になるなど患者の負担は大きい。
このため患者の負担が軽くても診断できる方法の開発が進んでいる。
 
超音波から肝臓の硬さや脂肪の量を測定する方法で、症状の進行を把握できる。
人間ドックの際に追加の負担で受けられる施設もある。
 
血液検査による技術の開発も進む。
大阪大学の研究グループは非アルコール性脂肪性肝炎かどうかを簡単に見分ける診断法の開発に取り組む。
血液中に含まれる、あるたんぱく質を手がかりに調べる方法で、患者で試したところ診断ができたという。「早期の診断に利用できる」と実用化を目指す。
 
非アルコール性脂肪性肝炎では国内の製薬企業が治療薬の開発を進めるが、まだ効果的な薬はない。
早期の診断方法が広まっていけば、病気が進行して症状が重くなる前に適切な対策がとれるようになる。
 
最近の研究では、脂肪肝が心臓病や脳血管疾患など様々な病気の原因にも関係しているという報告もある。脂肪肝と診断されたら放置せず、医師のアドバイスを受けながら、食事や運動などの生活習慣を見直すことが大切だ。


「沈黙の臓器」治療遅れ 新たな診断法や薬に期待
肝臓は沈黙の臓器といわれる。
体内にある臓器のうち質量が最も重く食事に含まれる成分の分解や疲労の回復など体調を整える重要な役割がありながら、肝炎などの症状が進んでも痛みなどが出にくく治療が遅れることもあるからだ。
 
こうした肝臓の治療戦略が変わろうとしている。
これまで肝臓がんの原因の大半を占めていたウイルス性肝炎の治療薬が登場したためだ。
C型肝炎ウイルスを体内からほぼ取り除ける米製薬企業による治療薬の販売が2015年から始まった。
まだウイルスをほぼ取り除いた後に病気の進行が止まるかどうかは分かっていないとの指摘もあるが、今後はウイルス性肝炎が原因となる肝臓がんの患者が抑えられると期待されている。
 
このためウイルス性に代わって患者の増加が心配されるのが脂肪肝による肝臓がんだ。
肥満や高齢化で脂肪肝になる患者が増えれば、脂肪肝から肝臓がんになるケースが増加する恐れがある。
脂肪肝は自覚症状が乏しく進行性かどうかを見分けにくいため治療が遅れることも多い。
脂肪肝に向けた新しい診断や治療薬の開発が期待されている。

 
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参考
日経新聞・朝刊 2016.10.9


脂肪肝発症、酵素も一因 岡山大、治療薬開発に道
肝臓の特定の酵素が働かないと、脂肪肝の発症や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)への進展につながることを、岡山大ののチームが8日までにマウスで突き止めた。
 
脂肪肝は過剰な飲食などが原因とされ、NASHはお酒を飲まない人でも脂肪分の取り過ぎなどで起き、肝硬変や肝がんになる恐れがある。
 
現在の治療の主流は食生活改善や運動、減量などだが、今回の発見により、治療薬が開発できる可能性があるという。
成果は英科学誌電子版に掲載された。
 
この酵素はPEMTと呼ばれる。
チームが、PEMTが働かないようにしたマウスと通常のマウスに、高脂肪・高糖分の餌を与えて飼育したところ、PEMTが働かないマウスは重症のNASHを早期に発症した。
 
岡山大病院の消化器内科を受診した患者の肝臓組織を調べると、PEMTが少ない人に、脂肪肝脂肪肝炎が発症しやすい傾向があったという。
 
脂肪肝やNASHは生活習慣病で、近年増加傾向にある。
発症の詳しい仕組みの解明や画期的な治療薬開発につながる可能性がある。

参考
日経新聞・朝刊 2016.5.8